異世界で双子の勇者の保護者になりました

ちびっ子育成ファンタジー!未来の勇者兄妹はとってもかわいい!
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6.確認しよう

公開日時: 2021年9月6日(月) 17:47
文字数:3,602

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


(ソフィネ/3人称)


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 フロル達からもろもろの説明を聞き終えて。

 ソフィネの口からでてきたのはこんな一言だった。


「なにがどうしてそうなったのよ?」


 その問いに。

 宿ので待っていた仲間達3名+2名はキョトン顔。

 代表してアレルが言ってくる。


「えっと、今お話したとおりなんだけど……僕らの説明下手だった?」


 正直言えばアレルの説明は下手である。

 まあ、それは今に始まったことではない。

 普段なら、フロルがちゃんとフォローしてくれる。

 だが。

 しかし、さすがに今回は……


「えーっと、確認するわよ?」


 しかたないので、ソフィネは1つずつ確認することにした。


「1、そこにいる2人は実は魔王」


 部屋の中にいた幼児兄妹(あるいは姉弟)を指さす。

 うんうんうなずくアレル。


「ちなみに、名前はワイルスとタイレスだよ」


 無邪気に笑うアレルだが、言っている内容は尋常ではない。


「2.タイレスは戦士」


 今度はライトがうなずく。


「正直、俺でも勝てないレベルだぞ。レルスよりも上。あるいはアレルよりも強いかもしれない」


 アレルもそれを肯定する。


「すごいよねー。ライトより強いなんて」


 頭痛がしてくるが、次の確認だ。


「3.ワイルスはモンスターを操る能力者」


 そこについてはワイルス自身が補足説明をしてくる。


「モンスターを操るだけなら普通の魔族でもできるよ。タイレスはなぜかできないけど。オイラはモンスターにっていうのを、たくさんあたえられるんだって」


 ワイルスによれば、魔素とはモンスターにとって食べ物――あるいは栄養素のようなものだという。

 もっとも、固形物ではなく、目に見えない空気のような存在。

 魔素は南大陸のあらゆる場所にあるが、北大陸では限られた場所にしかない。

 すなわち、魔の森や魔の空だ。

 魔素さえ吸えば、モンスターは生きていける。

 コジャラックが地上に降りずにずっと空を飛んでいられるわけだ。


「でも、モンスターって人間や動物を食べるわよね? セルアレニなんて他のモンスターを食べるらしいし、植物を食べるモンスターもいる」

「うーん、オイラよくわかんない」


 わかんないって言われても……

 タイレスが補足する。


「モンスターはもちろん、人間も動物も植物も、体内に魔素をもっているの。だから、他の生物を食べることで魔素を吸収するモンスターもいるわ。

 魔族っていうのは、自分自身の魔素をほんの少しだけ自由にモンスターに与える力をもっているのよ。私以外の魔族はってことだけど。

 私とは逆に、ワイルスは普通の魔族の何千倍もの魔素を持っていて操れる」


 それが、魔族とモンスターがともに暮らせる理由か。


「だから、オイラといっしょならモンスターも北大陸にこれるんだ」


 ワイルスは自慢気だが、北大陸の人間からすれば冗談ではない。

 言い換えれば、彼の力があれば魔の森からモンスターを引き連れて街を襲えるということだ。


「オイラ達が変身しているのも、透明人間になれるのも、スラピーのおかげだよ」

「スラピー?」

「うん。いまもオイラの肩の上に乗ってる高位のスライム。透明化しているから見えないと思うけど」

「スライムって……この部屋にモンスターがいるの!?」


 思わず身構えるソフィネ。

 だが、ワイルスは心配ないという。


「オイラが一緒にいれば大丈夫。スラピーは良い子だし、変身能力や透明化能力はあっても、戦闘力はないから。

 あと、移動にはイダくんのちからを使ったよ」

「イダくん……」

「うん。正式名称はイダテホース。北大陸でいうところの馬みたいなモンスターかな。でもスピードは何十倍も出るんだ。乗るとスリル満点だよ! オイラ、なんども振り落とされそうになっちゃった」


 ワクワク顔で語るワイルス。

 アレルも目を輝かせる。


「すごいねー、僕ものってみたい!」

「いいよー、今は街の外の魔の森で待っててもらっているけど、後で乗せてあげる」

「やったー、ワイルスありがとう」


 頭が痛くなってきた。

 目の前にいる幼児2人は1つ間違えれば北大陸の人々にとって最大の脅威となる。

 まさに魔王だ。

 本人達にはその自覚がなさそうだけど。


「確認の続きだけど。

 4.アレルたちは魔王達とお友達になった」


 魔王と勇者がニコニコわらってうなずく。


「5.これから一緒に冒険して勇者の試練の1つ『勇気の試練』に行くことにした。

 あと、追加で補足すると、その話を聞いてそこのお坊ちゃんランディは気絶した」


 4人……いや、ライトも含めて5人がうなずいた。

 フロルが「ま、ランディは説明を聞く前にぶっ倒れたけど」と付け足す。

 ちなみにランディは未だにベッドの上でうなされている。

 正直ランディのことはどうでもいいので、そこは流しておく。


「……ってわけだから、ソフィネもダンジョン探索の準備しろよ」


 ライトがそう話をまとめようとするが。


「だから、何がどうしてそうなるのよぉぉぉ!!??」


 ソフィネは今日一番の大声でツッコミを入れたのだった。


 ---------------


 まず、ソフィネはライトとアレルとフロルに言う。


「そもそも、あなたたち3人は謹慎中でしょ! なに勝手に旅立とうとしているのよ!?」


 レルスからの謹慎処分は未だ解けていない。

 あれはレルスだけでなく、冒険者ギルドからのお達しだった。

 法的な強制力や逆らったときの罰則こそないが、だからといって無視できるものではない。


 が。アレルは「ぷー」とほっぺたを膨らませる。


「だって、もう飽きたんだもん」

「いや、飽きたって……」


 フロルがアレルを援護。


「リラレルンスと約束した1年間っていう期限もあるし」

「それはそうだけど、目の前に魔王が現れた以上、話が変わってくるでしょ!」


 さらにライト。


「ってか、10日も部屋の中にいるとストレスたまりまくるし、体はなまるし……」

「アンタまで幼児のワガママかっ!」


 もう、ツッコミが追いつかない。

 ソフィネはさらに魔王2人にも言う。


「あんた達も、大人に黙って北大陸まで来たんでしょう? そんなことしていいの!?」


 魔王がいきなりいなくなって、魔族達は大混乱しているだろう。

 が、ワイルスは無邪気に笑う。


「だいじょーぶ。ちゃーんと、『勇者とお友達になりに北大陸に行きます』ってお手紙のこしてきたもん」

「全然大丈夫じゃないわよ!!」


 今頃、リラレルンス達は大パニックだろう。

 ただでさえミノル――ラクラレンスと通信できなくなって混乱しているだろうに。


「おまけに、魔王と一緒に勇者の試練に行くって、もう意味不明すぎるでしょ!」


 フロルが反論する。


「私も最初はそう思ったんだけどね。勇者の試練では神様に会えるんでしょう。だったら、勇者と魔王の気持ちを神様に伝えたいなって。ショート様のことも、神様に聞きたいし」


 いやいやいや……

 神様って言うけど。


「神様――ゲームマスターはミノルが封印したわけで」


 が、フロルは言う。


「そのことについても、はっきりさせるべきだと思うわ。

 ミノルは言っていた。戦乱を望む神と、平和を望む神がいると。

 もしかすると勇者の試練で平和を望む神に会えるかもしれない。そうすれば、ショート様のことも、戦争の回避のことも、相談できるじゃない

 あるいはゲームマスターとであえるならぶっ倒すって手もある」

「いや、ゲームマスターを倒すとこの世界そのものがほろびるんだってばっ!」

「殺すだけが倒す方法じゃないわ」

「そりゃあそうだけど……」


 ライトが付け足す。


「ま、それは希望的観測が過ぎるとしてもだ。このままこの宿にいても何一つ先に進めないのは事実だろ。だったら、行動すべきだ」


 そして、魔王の2人もいう。


「オイラも神様に会ってみたい」

「ダンジョンっていうところにも興味があるわ」


 魔王側の言葉はともかくとして。

 ソフィネは最後にフロルに尋ねる。


「このこと、レルスさんは知っているの?」

「知らないわよ。教えたら今度は牢屋に謹慎させられちゃうかも」


 さもありなんである。

 さて、どうするか。


「ライト、あなたは本当にこれでいいと思っているの?」

「ああ。どのみち勇者の試練にいくのは必須だ。そして、勇者の試練は最難関のダンジョン。単純な戦力として考えれば、魔王の力を借りられるのはこの上ない」


 どうやら、ライトは戦士として魔王の――とくにタイレスの試練攻略に有用と判断した様子だ。


「そりゃそうかもしれないけどっ!」


 そして、フロル、アレル、ワイルス、タイレスがソフィネに言う。


「ソフィネ、お願い。勇者の試練にも罠があると思う」

「一緒に冒険すればワイルス達ともっと仲良くなれる」

「オイラ、アレル達と冒険したい」

「あなたは最高のレンジャーなんでしょう?」


 そして。


『お願い、ソフィネ、力を貸して』


 6歳のちびっこ勇者&魔王4人にキラキラした瞳でそう訴えられ。

 気がつくとソフィネは……


「あー、もうわかったわよ! どうなっても知らないからね!」


 やけっぱちのようにそう叫んでいた。


 こうして、勇者&魔王混合パーティによる勇者の試練攻略の冒険が始まったのだった。 

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