異世界で双子の勇者の保護者になりました

ちびっ子育成ファンタジー!未来の勇者兄妹はとってもかわいい!
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第十二章 人族と魔族の未来

1.王都のギルドと意外な再会

公開日時: 2021年2月25日(木) 13:12
文字数:2,850

魔族やドラゴンの襲来から半日ほど。

 そろそろ日が暮れようとしている時間。

 冒険者ギルドを訪れるため、俺たちは王都の西地区にやってきていた。

 町並みを見回し、ソフィネが言う。


「こっちの方はあんまり被害ないみたいね」

「ああ、そうだな」


 俺もうなずく。

 少なくとも、南や東ほどじゃない。

 むろん、壊された建物もあるし、犠牲者が皆無だったわけでもないだろうが。


「えっと、ギルドは……」


 俺はマラランからもらった手書きの地図を見る。

 正直、あまり精密ではない。

『地域察知』とあわせればたどり着けるとは思うが。


「たぶんこっちだよー」


 アレルがトコトコ走って行く。


「おい、アレル、勝手に行くなよ」

「でも、こっちのほうに冒険者いっぱいいるよ」


『気配察知』で本能的にわかるのだろうか。

 地図や『地域察知』とあわせてみても、アレルの走って行く方向は間違っていなさそうだ。


 アレルの様子はいつも通りである。

 ララルブレッドを追い詰めたときのようなある種の凄みは感じられない。


 だが、それでも。


「アレル、お前大丈夫なのか?」


 俺はそう尋ねてしまう。


「うん? だいじょーぶって何が?」

「何がって……いや、大丈夫ならいいんだが」


 実際、今の彼はいつもと同じ無邪気なアレルくんだ。

 ならば、これ以上いろいろ言ってみてもマイナスだろう。


 そう考えたのは俺だけではないようで、フロルが俺に小声で言った。


「ショート様。今は、あまり触れない方がいいかと」

「ああ、そうだな」


 彼女もあのときのアレルの豹変には驚き、心を痛めているらしい。

 その上で、変にかまえずに自然体でアレルと接するべきだと言っているのだ。


 ダメだな。

 俺よりフロルの方がよっぽどアレルの保護者をしている。


 ともあれ。

 俺達は王都の冒険者ギルドにたどり着いた。

 ソフィネとフロルがギルドの建物を見て言う。


「ギルドの大きさはエンパレの方が上ね」

「エンパレのギルドって3階建てだったし」


 王都のギルドは二階建て。面積も若干狭い。


「その通りだけど、ギルドの中では言うなよ。王都の職員とかからすれば、あまり気持ちよくない言葉かもしれないから」


 自分たちの務めているギルドよりも、別のギルドの方が立派だなどと言われて気分が良いわけはないだろう。


「わかっているわ。私たちをなんだと思っているのよ。ねえ、フロル?」

「はい。私だってそのくらいの常識はあります」


 そうかなぁ。

 いきなり門番の兵士を挑発しまくったりしていなかったっけ?

 フロルもソフィネも本質的には良い子なんだが、毒舌が過ぎることが多々あるんだよなぁ。


 ともあれ、俺たちはギルドの扉を開ける。

 中にいた冒険者達が一斉に俺たちを見る。

 うわ、注目されている。

 ま、子連れでギルドに来るやつなんて普通はないなしな。

 エンパレのギルドでも最初は似たような反応だった。


「あら、新顔だね。坊や達」


 受付カウンターの反対側から聞こえてきた声。

 20代後半の女性。おそらく、このギルドの職員だろう。


「はい。俺たちは冒険者で、エンパレから来たんですが、ご挨拶とか、換金とか、諸々の手続きとかしたいんですけど」

「へぇー、冒険者ねぇ、あんた達が?」


 ジロリとなめ回すように俺たち5人を見る彼女。

 怪しんでいるのかな。

 そりゃそうだろうな。

 なにしろ、6歳児が2人も混じっているパーティだし。


 フロルが不快な顔をして言う。


「何よ、ジロジロ見て! 文句でもあるの?」


 だから、そういう毒舌をやめろっていうのに。

 一方、受付嬢はふっと笑う。


「なるほど。噂の最年少冒険者くんたちか」


 え、そんな噂が王都まで届いているの?

 むしろびっくりしてしまう俺。


「まーね。ギルドには独自の情報網や通信の魔道具もあるし。ミレヌからあんたらのことをよろしくとも伝え聞いているよ」


 おやまあ。


「とはいえ、一応冒険者カードを見せてもらおうかね」


 俺たちは彼女に冒険者カードを提示する。

 カードを見て――特にアレルとフロルのカードに、彼女は引きつった顔になる。


「ミレヌから聞いてはいたけどね。さすがに驚くね」


 だろうな。


「とすると、南でドラゴンと戦ってくれたのも、あんたらってことか?」

「ええ」

「なるほど。王都に住まう者として礼をいうべきだろうね。ありがとうよ」

「いいえ」


 そんな会話を交わしていると。

 突如フロルがギルドの隅を指さし叫んだ。


「あっ!」


 どうしたんだ?

 思って、俺もフロルが指さした方を見る。


 そこにいたのは……


 アレルやライトも気がついたらしい。

 ライトが彼に近づき親しげに言った。


「あ、ゴルじゃん。久しぶり!」


 そう。

 覚えているだろうか。

 最初にエンパレのギルドでフロルと口げんかし、その後の模擬戦でアレルの『風の太刀』を受けて気を失った男。

 ゴルがそこにいた。


「ああ、そういや、ゴルもエンパレから来たんだっけ」


 受付嬢が納得したように言う。

 一方、ゴルは舌打ち。


「ちっ、気づかれないようにしようと思っていたのに」


 そんなゴルの座る席の向かい側に、ライトが座る。


「おい、勝手に相席しているんじゃねーよ、ガキ!」

「えー、いいじゃん。一緒に修行した仲じゃん」


 どうやら、ライトの方は本心からそう思っているらしい。

 イヤミとかなんかじゃなくて、馴染みの仲間を見つけたといった様子だ。

 もっとも、相手がどう感じるかは別問題なわけで。


「さんざん俺をコケにしたガキどもがなにをいっているんだ!?」

「そんなつもりはないんだがなぁ」

「出会い頭に、そこのチビに気絶させられたんだぞ、俺は!」

「あれは模擬戦だろうが。出会い頭でもないし」


 うーん。

 ゴルは相変わらずなのだろうか。

 そんなゴルに、アレルも近づく。


「ゴルはいまなにやっているの? レベルあがった?」


 いや、アレル。

 無邪気に傷口広げに行くなよ。

 どうせまだレベル1くらいか、下手したらレベル0のままだろうし……


 などと思っていると、ゴルが俺たちに冒険者カードを見せた。


「ふんっ、聞いて驚くな。俺だってあの後1年以上あそんでいたわけじゃない。今では俺もレベル2だ」


 ドヤ顔をキメめるゴル。


『おおーすごーい』


 アレルとライトが両手をパチパチ拍手する。

 2人に他意はなく、ごく普通に賞賛しただけなんだろうけど……うん、俺たちのレベルは言わない方が良いなこりゃ。


 そんなことを思ったのだが。

 受付嬢が俺に言った。


「さて、ショート。生け贄の村の事件についても伝え聞いているし、今回のドラゴン退治の件も加味すると、あんた達のレベルを上げるべきだろうね」


 レベル2以上は実績を示すことでのぼっていく。

 実績を示せば、各街のギルドでレベルアップさせてくれるのだ。

 生け贄の村の話がどうして伝わっているのかはわからないが、大方人さらいどもを衛兵に引き渡した街のギルドからだろうか。


「実績を加味して……ショートは魔法使いレベル7、アレルは戦士レベル8、フロルは魔法使いレベル8、ライトは戦士レベル7、ソフィネはレンジャーレベル6ってところかね」


 その言葉に、顔を引きつられせて震える男が1人。

 言うまでもなく、先ほどどや顔をキメたゴルである。


「くそぉぉぉぉぉ」


 叫んでゴルはテーブルに突っ伏したのだった。

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