川原の風が気持ちいい。
東京では味わえない、自然豊かな異世界の空気だ。
異世界転移して3日目。
俺は新米冒険者として薬草採取のクエストをこなすために、パーティーメンバーと共にここにやってきた。
そのパーティーメンバーのうち1人、アレルが俺の方に駆け寄ってくる。
「ごしゅじんちゃまぁー、やくそー、みつけたぁー」
舌足らずに叫びながら駆け寄ってくる3頭身の男の子。
未来の勇者の片割れにて、俺が一昨日奴隷商人から買い取った5歳児である。
その右手には黄色いお花。
……うん、それは薬草じゃなくて普通の雑草の花だよ、アレル。
とはいえ。
嬉しそうに駆け寄ってくるアレルに俺はほのぼのしてしまう。
「うん、うん、偉いぞ、アレル」
俺は駆け寄ってきたアレルを抱き上げ、頬ずり。
「えらい? アレルえらい?」
ぷにぷにの笑顔でそう言うアレル。
「おう。でも、このお花は薬草じゃないけどね」
俺がそうつげると、アレルは俺の腕の中でシュンっとしてしまう。
「ちがうのー? これじゃだめ?」
泣きそうな顔もかわいいよ、アレル。
「うーん、でも、このお花はきれいだからね。持って帰って、宿の花瓶にでもさしておこうか」
「うん、もってかえるー、アレル、お花もってかえるー」
うーん、かわいい。
かわいすぎるぞ。
――いや、勘違いしないで欲しい。
俺は別にショタ属性とかはないからっ!
純粋に、お子様としてかわいいっていう話だからなっ!
そんな、俺とアレルを見て、もう一人のパーティーメンバーが口を挟む。
「もうっ、アレルってばご主人様にご迷惑をおかけしないのっ!」
アレルの双子の妹、フロルである。
双子なのだから、フロルも5歳児。
だが、アレルよりもずっとしっかりした口調で喋るおしゃまな女の子だ。
「ご主人様、私はちゃんと薬草を摘んできました」
そういって、フロルは右手に掴んだ草を俺に渡す。
うん、これは間違いなく薬草だ。
「おお、フロル、偉いぞっ!」
「当然ですわ」
言いながらも、フロルはちょっとうらやましげに俺を……いや、俺の胸元で抱きかかえられているアレルを見つめる。
……ひょっとして?
「フロルも抱っこして欲しい?」
「そ、そんなわけないじゃありませんかっ。私はアレルみたいなお子様じゃありません」
ぷいっと顔を背けるフロル。
うん、5歳にしていいツンデレっぷりだ。
こちらはこちらでとってもかわいい。
是非とも抱っこして頬ずりしたいけど、たぶん怒るだろうなぁ。
……いや、だから違うって。
俺はロリコンでもないからっ!!
本当、純粋にお子様はかわいいねって話だからっ!!
っていうか、この2人を見たら、誰だってメロメロになっちゃう可愛らしさなんだからっ!
本当に。
俺はアレルを地面に下ろす。
ちょっと寂しそうな顔をするアレル。
「よし、じゃあもうちょっと薬草を採取して、ギルドに帰ろうっ!」
『はーい』
俺の言葉に、双子は元気よく返事をしたのだった。
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さて、なんで日本人の俺が異世界でちびっ子2人と初心者冒険者をやっているのか。
それを説明するにはちょっとだけ時間を遡る必要がある。
そう。
あの日。
輪廻の間で幼女な神様に出会ったときまで――
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作中のイラストはchole様にご提供いただきました。
素敵なイラストをありがとうございます。
↓chole様のpixiv
https://www.pixiv.net/artworks/84723996
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