この星にはパラミツ大陸という大きな大陸がある。そこにある2つの国では"おまじない"が存在した。それはクミンの匂いをかぐと妊娠しやすくなるというおまじないが昔から伝統的な話となっている。その国の王族は初夜にそのクミンの匂いをベッドで嗅ぐという風習がある。
レーマンとべリスはケルメシナ王国につき、馬を引いて歩いていた。レーマンはある場所にへと向かっていた。先程の入口からケルメシナ王国に入るとすぐ目の前に広がるのはクワレズマという街だ。この街はそんなに大きくない。川に橋が掛かり、その橋でビクトリアという大きな都市に行くことが出来る。その都市は通称「青竜」と呼ばれる。その理由は青い街並みをしていること、そしてここらには水の青竜の伝説が存在した事、もう1つは青い街並みをする事で敵の眼を欺くことなどの理由があった。
国旗には緑と青と黄色、星に小さな竜が描かれている。
〈べリス〉すごい…… 青い家がたくさん……
〈レーマン〉ここは青い街、ビクトリアだ。この国の最大都市さ、だが目的地はここじゃない、もう少し歩くぞ
〈べリス〉綺麗ね。わかった
2人は青い街を歩いていた。すると1人の男性に声を掛けられる。
〈アエタス〉ようそこのくそおとこ、あいからずブサイクな顔してんな
〈レーマン〉ん? げっ! おまえは!?
〈アエタス〉久しぶりだな、レーマン
〈レーマン〉うーわ、ダメなやつに会ったな
と、2人は拳と拳をぶつけあう。挨拶の一環だ。
〈レーマン〉久しぶりだな、アエタス! いま団長してんだってな!
〈アエタス〉まあな! お前はどこ行ってたんだよ! あれから姿ないから死んだのかと思ってたぞ
〈レーマン〉まあ色々あってな
〈アエタス〉そうだ、あいつら心配してたぞ
〈レーマン〉わかってる
〈べリス〉あ、あの……
〈アエタス〉ん? なんだ? この幼女は?
〈べリス〉幼女じゃない!!
〈レーマン〉あ、忘れてたわ。アエタス、こいつは旅の途中に出会ったべリスだ、べリスこの男は俺の古い友達でゴアティサン騎士団16代目団長のアエタスだ
〈アエタス〉よろしく
〈べリス〉団長!? すごい!
〈アエタス〉まあね
〈レーマン〉アエタス、すまないがもう行くよあそこに顔出さないと
〈アエタス〉ああわかった。また飲もうぜ
〈レーマン〉ああまたな、べリスいくぞ
〈べリス〉うん
そういうとレーマンとべリスはまたある場所へと向かい歩く。
ビクトリアの東に進むとノシメという街がある。そこも青い街並みが広がっている。そこにはノシメフェスティバルが年に1度開催される。そして、熨斗目竜模様の刺繍が盛んだ。
この街にはギルドが存在する。今回レーマンが向かっていたのはそのギルドである。
〈レーマン〉ついた、ここだ
レーマンはおおきな青色の建物の前で止まる。
〈べリス〉ここは?
〈レーマン〉入ってのお楽しみ
と馬2頭の紐を繋ぎ建物の扉を開ける。
そこには飲み食いして騒いでいる者やダンスをしている者、喋っている者がいた。
〈レーマン〉ここはギルド、「ターンブルー」だ
〈べリス〉ターンブルー
〈レーマン〉おい! いまもどった
〈男〉ん? おお! おまえレーマン!? 死んでなかったのかよ! 久しぶりだな!
〈レーマン〉おお! ジミー! マスターとタソガレいるか?
〈ジミー〉奥だよ
〈レーマン〉わかった、べリス付いてこい
2人は奥に進む。すると1人の男が奥の扉の前に立ちはだかる。
〈レーマン〉ヘイグクラブ、ペアー・ヘイグクラブか
〈ペアー〉久々だな、レーマン
レーマンとペアー、どちらも睨み合う。ペアー・ヘイグクラブ。以前からレーマンとはライバル的存在。黒髪の男性。スリム体型。
〈レーマン〉そこどけよヘイグクラブ
〈ペアー〉ペアーって呼ばないのか? あれからは俺らは仲間じゃないのか?
〈レーマン〉うるせえなほんとよ、後で相手してやるからまずどけよ
〈ペアー〉やだね、てめえはここに入る資格はない
〈レーマン〉資格なんていらねえだろ今更
そこにある女性がやってくる。このギルドの受付をしてくれているセアノ・アマンだ。容姿端麗で冷静な性格をしている。怒らせると恐い。
〈セアノ〉ペアー、どきな。話はそれからよ
〈レーマン〉セアノ……
〈ペアー〉ちっ! いけよ
〈レーマン〉すまない
〈セアノ〉別に助けたわけではない、早く中に入れ
〈レーマン〉わかった、いこう
レーマンは扉を開けた。そこには2人と1匹の人物が椅子に座り、あたかもレーマンたちがここにくるのが分かっていたかのように待っていた。
〈タソガレ〉レーマンか、早く入れ
レーマンとべリスは中に入った。
〈タソガレ〉その女は?
〈レーマン〉今回の主役さ
〈タソガレ〉そうか
タソガレ・ドヴォルフ。このギルドでも古きメンバー。身長の低い白髪のハゲ髭オヤジでレーマンの師匠。
するとタソガレの前に座っている男性が口を開いた。
〈アリウム〉よう、小僧やはり生きてたのか
アリウム・オンディーナ。このギルド、ターンブルーの3代目ギルドマスター最強の魔法ギルドマスターで「青い噛虎」の異名を持つ。身長が高く紫色のような髪色に目付きが悪い。ただ悪い人ではない。
タソガレの横に座っているのはメガネザルのグアバ。グァバジュースが大好物なのでグアバと名付けた。しかもこいつは人間の言葉を理解し話すことができ、翼を持っていて飛ぶことが可能。
〈グアバ〉久しぶりだな、どこほっつき歩いてたんだ? レーマン
〈レーマン〉色々さ
〈アリウム〉それで? なにか理由があって戻ってきたのだろう?
〈レーマン〉用があるのは、そこの2人だ、タソガレのじいさんとグアバだ
〈タソガレ〉なんの用だ?
〈レーマン〉俺はもう一度あの伝説の島に向かう
〈タソガレ〉なに!?
〈グアバ〉なるほど、それで?
〈レーマン〉このお嬢さんと行く。それでキーがいる、あの船の。あれは最後にタソガレのじいさんに預けたから渡してほしい、それと今回の旅でグアバが必要になる
〈タソガレ〉なんだと? 今更あそこに戻るというのか? ふざけるなよ!
〈アリウム〉まて! タソガレ
〈タソガレ〉マスター!
〈アリウム〉まあまて、こいつもアホじゃない。だからあの時居なくなったんだ。レーマン、本気なんだな?
〈レーマン〉ああ本気だ
〈アリウム〉タソガレ、渡してやれ
〈タソガレ〉わかった
タソガレは首にぶら下げていたキーを外した。ネックレスのように持っていた。
〈タソガレ〉1つ聞かせろ、なぜまた行こうなどと思った?
〈レーマン〉それはこのお嬢さんの行動と想いを感じたからだ
〈タソガレ〉なるほどな、ほらキーだ
〈レーマン〉ありがとうございます
とにこやかな顔をする。そこにメガネザルのグアバが飛んできた。
〈グアバ〉レーマン! 懐かしいな! 寂しかったぞ
コノヤロウ!
抱きついてきた。
〈レーマン〉ああすまないな突然消えちまって、今回の件また一緒に冒険にでよう
〈グアバ〉当たり前だろ! 相棒!
グアバとレーマン、べリスは今の部屋から出て入口付近のカウンターに座っていた。ここは酒場もやってる。
そこには仲間たちがいた。迎えてくれたさっきまで怖い顔だったペアーも今は笑顔になっていた。
そこには笑顔と笑顔の空間だった。久しぶりに会えた仲間の嬉しさに。
この日レーマンたちは朝まで酒を飲み明かした。どんゃん騒ぎだった。楽しかった。
さて明日からは新たな冒険の始まりだ。
ー ♯5 青い竜 ー つづく。
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