【完結】スケルトンでも愛してほしい!

女冒険者に一目惚をしたスケルトンのすれ違いコメディー!
コル
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コレットの書~強奪・7~

公開日時: 2020年11月2日(月) 22:00
文字数:2,505

「ドラゴ……ニュートだと?」


 何で、ドラゴニュートがグレイさんと一緒にいるの?


「あの、コレットさん……?」


 何で、ドラゴニュートがリリクスの街にいるの?


「……」


 何で、ドラゴニュートが何でマリーの名を語っているの?


「……何で? ……何で! ……何で!?」


 なにがどうなっているの!?

 わけがわからない!


「ちょっコレットさん!? 落ち着いてください!」


 こんな状況で落ち着けるわけがない!

 ああ、足が震えて来た。


「落ち着けって、こんな街中にドラゴニュートなんているわけがないだろう」


 それがいるんです!

 しかも、私の目の前に!


「その娘です! その娘はマリーじゃなくて、ドラゴニュートなんです!」


「「はあ……?」」


 グレイさんとキャシーさんが怪訝な顔つきをして私を見ている。

 私の言う事を信じられないって感じだわ。

 確かに私も、こんな場所でそんな事を言われても信じられなかったかもだけど……う~どうしたら伝わ――。


「なっ何を言っておるのじゃ? わしはマリーじゃ。どうやら姉は疲れている様じゃから、わしは一度出直すとするのじゃ」


「なっ!?」


 ちょっと! なにマリーになりすましたまま、逃げよううとしているのよ!

 というか姿が違う、そのしゃべり方もおかしい、全然マリーに成り済ます気がないじゃない!

 ああもう! こんな奴がマリーと偽っている事に段々と腹が立って来た!


「待った! どうして私の可愛い妹と偽っているかは知らないけど、マリーは【わし】とか【のじゃ】とか言いません! 髪だってカサカサの白髪じゃなくサラサラの金髪! 身長はもっと高いの、貴女みたいなちんちくりんじゃありません!」


「なっ!? この、大人しくしておれば好き放題言いよってからに……よおおし、いいじゃろ!! その喧嘩、買ってやる――」


 ――ビリッ!!


「――の……じゃ」


「「「あっ……」」」


 背中から、翼と尻尾がマントを突き破って飛び出してきた。

 マントが破れてあらわになった姿は、白髪の長い髪、紅い眼、ビキニ様な緑色の鱗、背中に翼、お尻から尻尾が生えた小さな女の子……間違いなく、遺跡で出会ったドラゴニュートだ。


「しまったのじゃ……興奮してつい羽と尻尾を出してしまったのじゃ」


 ふっこんな安い挑発に乗るなんて、所詮はモンスターね。

 あの姿を晒しちゃったら、もう言い逃れは不可能……って、よくよく考えたらこんな場所でドラゴニュートの正体を現したら――。


「マジかよ……おい、キャシー! 今すぐギルドに報告して援軍を!!」

「っはい! わかりました!!」

「ドラゴニュートだって……!?」

「……うわああああ! 助けてくれえええええ!!」

「逃げろ! 逃げろ!!」

「きゃあああああああああ!!」


 デスヨネー、やっぱりパニックが起きちゃった。

 これは……やらかしちゃったかな? 後で問題にならなきゃいいけど。


「はあ~バレてしまっては仕方がないのじゃ……じゃったら、さっさと目的を果たすの――じゃ!」


 っ! ドラゴニュートが私に向かって――。


「きゃっ! ……あいたたた」


 いきなり低空飛行で突っ込んでこないでよ!

 かすっただけで済んだけど、その拍子で転んじゃってお尻を打っちゃった。

 しかも、昨日と同じところをだし……。


「――おい! 大丈夫か?」


「……あ、はい。大丈夫で……あれ? あれ?」


 うそ、無い!


「どうした?」


「……無いんです! 皮の鎧が!」


「皮の鎧? ああ、拾った奴か……」


 辺りを見渡しても落ちていない!

 一体何処に……。


「探し物はなら、ここなのじゃ」


「へ? ……あっ!」


 宙を飛んでいるドラゴニュートが皮の鎧を持っている!

 さっきの突っ込んで来たのは、皮の鎧を取る為だったのね。

 でも、どうして皮の鎧なんかを。


《――!》


 ん? ドラゴニュートの傍に誰か駆け寄って来た、あの鎧姿は……えっ!? 泥棒じゃない!

 どうして、泥棒は取り押さえられているはずじゃ……ちょっと! 取り押さえてた人達が逃げちゃってるじゃない!


「ああ、後こいつも返してもらうのじゃ」


 返してもらうって、あの泥棒はドラゴニュートの仲間だったの?

 そうか、だからドラゴニュートが皮の鎧を取って行ったのか。


「ん~いちいち降りるのも面倒じゃし……よし、ポチ! こいつを回収して撤収するのじゃ!」


 ポチ?

 犬の名前のような……まさか、あの時のダイアウルフを呼んだんじゃ――。


「は~い!」


 って、現れたのはボロマント羽織った黒髪の女性だわ。

 なんで人がポチと呼ばれて、モンスターの言う事を聞いているのよ。


「よいしょ。こら、あばれるな! ポチだっていやなんだから。――よっ! ほっ! っと!」


「――っ!?」


 違う、あの人もモンスターだ!

 泥棒を肩に担ぎながら、壁を蹴って建物の屋根に登るなんて人間業じゃない。


「じゃあね~」


 ポチと呼ばれたモンスターが、屋根伝いに走って逃げて行っちゃった。


「おい、お前らの目的はなんだ! どうしてリリクスの街に来た!?」


「ん、目的じゃと? この皮の鎧を返してもらう為じゃ」


 返してもらうって……え、あの皮の鎧ってドラゴニュートの物だったの?

 ……だとしたら私、とんでもない物を持ち帰ってしまっているし!


「そうかい、だったら目標は達成したんだ。とっととこの街から出て行ってくれないか」


 この騒動、全部私のせいじゃない……。


「……嫌われたもんじゃな。言われなくても出て行くのじゃ、さらばなのじゃ!」


 ポチの逃げた方向にドラゴニュートも飛んで行った。

 私達、助かった……の?


「ああ……よかった……」


 安堵したからか、腰が抜けちゃった。

 これはしばらく立てそうにない。


「ぷはーさすがに今回ばかりは駄目かと思ったぜ……」


「……すみません……私……とんでもない事を……」


「いや、あんな皮の鎧をドラゴニュートが取り返しに来るなんて誰も考えねぇよ。ただ……」


「ただ?」


 何だろう。


「もっと早くマリーちゃんじゃなく、ドラゴニュートだと知っていれば串焼きを奢らずに済んだのに! ……ハッ! じゃあ果物屋で3万ゴールドもする最高級の果物セットも、マリーちゃんじゃなくドラゴニュートに食われたって事かよ! ちくしょうがああああああああああああ!」


「……」


 ドラゴニュートに騙されて食べ物を奢らされる四つ星級冒険者。

 というか、人の妹になに餌づけみたいな事をしているのよ。

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