「いやいや! 出て来たのはスケルトンじゃないですか!」
ケビンさんに会えると思ったらこれだよ!
何でいっつも邪魔ばかりするのかな!?
もう怒った、今日という今日は許さないんだから!
『カタ! カタカタカタ!』
このメイスに、私の怒りを乗せ――。
「武器を下げろ」
――てっ!?
なんで止めるのよ!
「どうやら、そのスケルトンがケビン……って、何で前歯が1本無くなってんだ、お前……」
……え? 目の前にいるスケルトンがケビンさんですって?
いやいや、グレイさんってば何を言っているのよ……そんな冗談……。
「……」
グレイさんが今まで見た事もない真剣な顔をして、スケルトンを見ている。
とても、冗談を言っている様には見えない。
『カタ? ……カタカタカタ! カタカタカタカタ!!』
あのスケルトンも、グレイさんの言葉に反応して前歯を触っているし。
嘘……まさか……本当にそうなの? あのスケルトンが……ケビンさん?
これって夢じゃないわよね?
「……いふぁい」
ほっぺを引っ張ったら普通に痛いという事は夢じゃない。
え? これはどういう事なの? これはどう状況なの? 全然頭が纏まらない。
てか、こんな時にスケル……もといケビンさん? の歯を気にしているグレイさんも何を考え……ん?
「……歯? ……あっ!」
あの時、体にくっ付いていた歯って……まさか。
「どうした、コレット」
「イッイイエ、ナニモ! アハ、アハハハハ!」
いやいや、あの1本の歯くらいでそうと決まったわけじゃない。
それにあの歯はジャイアントスネークに食べられた後に付いた物のはずだし、そんな事が――。
『カタカタ! カタカタカタカタカタカタカタ!?』
「ん? ヘビに食われた後じゃな。ポチはちゃんと全部拾ったらしいのじゃが……」
『カタカタカタカタ、カタカタカタカタカタカタ!?』
「お前は物を食べないし、前歯1本無くても問題はないじゃろが」
「……ヘビに食われた後?」
――あった。
「……ああ、やっぱり……」
ケビンさん? もジャイアントスネークに食べられていたのと、何故か嫌な予感だけはよく当たる私の感で考えると、あの埋めた歯はケビンさん? の可能性が非常に高い。
「やっぱりって……どういう事だ?」
「うっ!」
どっどうしよう! ケビンさん? にとって歯はとても大事にしていたみたい……あのドラゴニュートに向かって文句を言っていたみたいだし、だとしたら「歯は私が地面に埋めちゃいました」なんて言えるわけがない。
かと言って、このまま追及されるのも辛いし……ええい、こうなったら。
「そっそれよりも! あのスケルトンがケビンさんってどういう事なんですか?」
話題を変えてしまおう! どっちにしろこれは重要な事だしね、うん!
……で事が終わり次第、街に戻って、こそっと歯を掘り出して、こそっとどこかに置いておこう。
「ああ。この手紙によるとだな……」
ふむふむ。
「ケビンはここ数日前に目覚めたそうだ……」
なるほど。
「で、どういう訳かスケルトンになっていたんだとよ」
そういう事……って。
「えっ!?」
それで終わり?
何の解決にもなってないし!
「その話――」
「――その話は本当の事ですかな!?」
ジゴロ所長さん、お願いだから最後まで言わせて下さいよ。
しかも、そのままケビンさん? の方へ走って行っちゃったし。
「ほうほう! ふむふむ! んーこの目は見えているのですかな!? 私の声は聞こえているのですかな!?」
ケビンさん? の周りを目を輝かせながらウロチョロしている。
まるで新しいおもちゃを買ってもらったばかりのヘンリーみたい。
「この関節の部分は――」
「そこまでだ。――よいしょっ!」
グレイさんがジゴロ所長さんを捕まえた。
「なっ何をするですな!? これをほどくですな! まだ調べないといけない事――もがっ!」
そして、体をロープでグルグル巻きにして猿轡まで……さすがにやりすぎの様な気もするけど、これくらいしないと止まらないからね、この人は。
「これでよし、すまんが今は大人しくしていてくれ、じゃないと話が前に進まん。……さて、この手紙の字は間違いなくケビンだが、内容についてはまだ半信半疑なんだ……お前は本当にケビンでいいのか?」
グレイさんは全てを信じきっていなかったのね。
それに比べ私は夢じゃなかったからって、ほとんど信じきってしまっていた……。
『カタ、カタカタ』
……。
「……本当に、ケビンなのか?」
『カタカタ、カタカタカタカタ』
うん、カタカタ言っているだけでまったくわからない。
「……」
『カタカタ、カタ……』
「だあああああ! さっきからカタカタと鳴らしやがって! ちゃんと俺の質問に答えろ! やっぱりお前は偽物か!?」
ちょっグレイさんがキレた!
『カタ!? カタカタカタ、カタカタカタカタカタカタ! カタ、カタカタカタカタカタカタ……カタッ』
質問に答えろって、骨だから声が出ないと思うんだけど。
もしかしてグレイさんってば、見た目ではわからなかったけど内心はこの状況に動揺していて、そんな簡単な事にも気付いていないんじゃ。
「あの~グレイさん……ケビンさん? はスケルトンですから、声が出ないと思うんですけど……」
「……あっそうか……」
やっぱりそうだったみたい。
歯は気になったくせに、声には気がついていないって……。
『――!』
あ、ケビンさん? が両手で丸を作った。
思った通り……じゃなくて見た目通りのままね。
「どうやら当たりみたいだな、ケビン? が両手で丸をしていやがる。お前、そんな大事な事はちゃんと書いておけよ!」
いや、その前にわかるでしょ!
『カタカタカタ!』
それよりも、これは困ったわね。こっちの言葉は通じても、ケビンさん? の言葉がこっちに通じないんじゃ結局はわからないまま……どうすればいいのかしら。
「じゃあ何か? この手紙みたいに筆談で会話しろってか?」
あっなるほど。
その手があったか。
「……勘弁してくれ……解読しながらだと時間がかかるぞ」
それは嫌だ。
いい案だと思ったんだけどな~私もその解読が出来ればよかったんだけど……う~ん、やっぱりこの字は読めない。
「そんな面倒くさい事をせずとも、ケビンの声がお主等に聞こえる様には出来るのじゃ」
えっそんな事が出来るの?
「……そういえばお前は会話しているものな。それはどうやるんだ?」
確かにケビンさん? とドラニュートは普通に会話してたわね。
にしても、私達にも聞こえるようにってどうやるんだろ? 例えば私達がゾンビ化させるとか?
「……」
うん、想像するだけで恐ろしいから止めよう。
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