【完結】スケルトンでも愛してほしい!

女冒険者に一目惚をしたスケルトンのすれ違いコメディー!
コル
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コレットの書~真実・4~

公開日時: 2020年11月5日(木) 12:00
文字数:2,611

「いやいや! 出て来たのはスケルトンじゃないですか!」


 ケビンさんに会えると思ったらこれだよ!

 何でいっつも邪魔ばかりするのかな!?

 もう怒った、今日という今日は許さないんだから!


『カタ! カタカタカタ!』


 このメイスに、私の怒りを乗せ――。


「武器を下げろ」


 ――てっ!?

 なんで止めるのよ!


「どうやら、そのスケルトンがケビン……って、何で前歯が1本無くなってんだ、お前……」


 ……え? 目の前にいるスケルトンがケビンさんですって?

 いやいや、グレイさんってば何を言っているのよ……そんな冗談……。


「……」


 グレイさんが今まで見た事もない真剣な顔をして、スケルトンを見ている。

 とても、冗談を言っている様には見えない。

 

『カタ? ……カタカタカタ! カタカタカタカタ!!』


 あのスケルトンも、グレイさんの言葉に反応して前歯を触っているし。

 嘘……まさか……本当にそうなの? あのスケルトンが……ケビンさん?

 これって夢じゃないわよね?


「……いふぁい」


 ほっぺを引っ張ったら普通に痛いという事は夢じゃない。

 え? これはどういう事なの? これはどう状況なの? 全然頭が纏まらない。

 てか、こんな時にスケル……もといケビンさん? の歯を気にしているグレイさんも何を考え……ん?


「……歯? ……あっ!」


 あの時、体にくっ付いていた歯って……まさか。


「どうした、コレット」


「イッイイエ、ナニモ! アハ、アハハハハ!」


 いやいや、あの1本の歯くらいでそうと決まったわけじゃない。

 それにあの歯はジャイアントスネークに食べられた後に付いた物のはずだし、そんな事が――。


『カタカタ! カタカタカタカタカタカタカタ!?』


「ん? ヘビに食われた後じゃな。ポチはちゃんと全部拾ったらしいのじゃが……」


『カタカタカタカタ、カタカタカタカタカタカタ!?』


「お前は物を食べないし、前歯1本無くても問題はないじゃろが」


「……ヘビに食われた後?」


 ――あった。


「……ああ、やっぱり……」


 ケビンさん? もジャイアントスネークに食べられていたのと、何故か嫌な予感だけはよく当たる私の感で考えると、あの埋めた歯はケビンさん? の可能性が非常に高い。


「やっぱりって……どういう事だ?」


「うっ!」


 どっどうしよう! ケビンさん? にとって歯はとても大事にしていたみたい……あのドラゴニュートに向かって文句を言っていたみたいだし、だとしたら「歯は私が地面に埋めちゃいました」なんて言えるわけがない。

 かと言って、このまま追及されるのも辛いし……ええい、こうなったら。


「そっそれよりも! あのスケルトンがケビンさんってどういう事なんですか?」


 話題を変えてしまおう! どっちにしろこれは重要な事だしね、うん!

 ……で事が終わり次第、街に戻って、こそっと歯を掘り出して、こそっとどこかに置いておこう。


「ああ。この手紙によるとだな……」


 ふむふむ。


「ケビンはここ数日前に目覚めたそうだ……」


 なるほど。


「で、どういう訳かスケルトンになっていたんだとよ」


 そういう事……って。


「えっ!?」


 それで終わり?

 何の解決にもなってないし!


「その話――」

「――その話は本当の事ですかな!?」


 ジゴロ所長さん、お願いだから最後まで言わせて下さいよ。

 しかも、そのままケビンさん? の方へ走って行っちゃったし。


「ほうほう! ふむふむ! んーこの目は見えているのですかな!? 私の声は聞こえているのですかな!?」


 ケビンさん? の周りを目を輝かせながらウロチョロしている。

 まるで新しいおもちゃを買ってもらったばかりのヘンリーみたい。


「この関節の部分は――」


「そこまでだ。――よいしょっ!」


 グレイさんがジゴロ所長さんを捕まえた。


「なっ何をするですな!? これをほどくですな! まだ調べないといけない事――もがっ!」


 そして、体をロープでグルグル巻きにして猿轡まで……さすがにやりすぎの様な気もするけど、これくらいしないと止まらないからね、この人は。


「これでよし、すまんが今は大人しくしていてくれ、じゃないと話が前に進まん。……さて、この手紙の字は間違いなくケビンだが、内容についてはまだ半信半疑なんだ……お前は本当にケビンでいいのか?」


 グレイさんは全てを信じきっていなかったのね。

 それに比べ私は夢じゃなかったからって、ほとんど信じきってしまっていた……。


『カタ、カタカタ』


 ……。


「……本当に、ケビンなのか?」


『カタカタ、カタカタカタカタ』


 うん、カタカタ言っているだけでまったくわからない。


「……」


『カタカタ、カタ……』


「だあああああ! さっきからカタカタと鳴らしやがって! ちゃんと俺の質問に答えろ! やっぱりお前は偽物か!?」


 ちょっグレイさんがキレた!


『カタ!? カタカタカタ、カタカタカタカタカタカタ! カタ、カタカタカタカタカタカタ……カタッ』


 質問に答えろって、骨だから声が出ないと思うんだけど。

 もしかしてグレイさんってば、見た目ではわからなかったけど内心はこの状況に動揺していて、そんな簡単な事にも気付いていないんじゃ。


「あの~グレイさん……ケビンさん? はスケルトンですから、声が出ないと思うんですけど……」


「……あっそうか……」


 やっぱりそうだったみたい。

 歯は気になったくせに、声には気がついていないって……。


『――!』


 あ、ケビンさん? が両手で丸を作った。

 思った通り……じゃなくて見た目通りのままね。


「どうやら当たりみたいだな、ケビン? が両手で丸をしていやがる。お前、そんな大事な事はちゃんと書いておけよ!」


 いや、その前にわかるでしょ!


『カタカタカタ!』


 それよりも、これは困ったわね。こっちの言葉は通じても、ケビンさん? の言葉がこっちに通じないんじゃ結局はわからないまま……どうすればいいのかしら。


「じゃあ何か? この手紙みたいに筆談で会話しろってか?」


 あっなるほど。

 その手があったか。


「……勘弁してくれ……解読しながらだと時間がかかるぞ」


 それは嫌だ。

 いい案だと思ったんだけどな~私もその解読が出来ればよかったんだけど……う~ん、やっぱりこの字は読めない。


「そんな面倒くさい事をせずとも、ケビンの声がお主等に聞こえる様には出来るのじゃ」


 えっそんな事が出来るの?


「……そういえばお前は会話しているものな。それはどうやるんだ?」


 確かにケビンさん? とドラニュートは普通に会話してたわね。

 にしても、私達にも聞こえるようにってどうやるんだろ? 例えば私達がゾンビ化させるとか?


「……」


 うん、想像するだけで恐ろしいから止めよう。

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