どうして!? 何でこんな事になっちゃってるわけ!?
もしかして落ちる瞬間にレア・スケルトンが飛びかかって来て、偶然こんな形になっちゃった?
……いや、そんな奇跡的な事なんていらないわよ! 肌の温もりも感じない、骨の硬い感触しか伝わってこない、こんなお姫様抱っこは味わっていたくない!
『カタカタカタカタ!』
「へっ!?」
ちょっ、レア・スケルトンがこのままの恰好で走り出した。
まさかこのまま私をどこかに連れ去る気なの!? 冗談じゃない、そんな事は絶対にお断りよ!
何としてでも抜け出さないといけないけど、どうすれば……そうだ! 体をめちゃくちゃに動かしてレア・スケルトンの腕を壊して脱出しよう!
「放して! 下して! この!」
『カタカタカタ! カタカタカタカタ!』
「はぁ~はぁ~……」
駄目だ、レア・スケルトンがふらついただけで腕が壊れる気配がまったくない。
よく考えたらカルロフさんをあれだけ殴っていても平気だったんだから、私がジタバタしたくらいじゃ壊れるわけないじゃない。
それに、いつものパターンなら私をキャッチして着地した時点で全身バラバラになっているはずよね……何で今日はこんなにも頑丈なわけ? もしかして、このレア・スケルトンはかなり強化されている?
『カタカタ、カタカタカタカタカタ』
ぱっと見は、いつものカタカタうるさいレア・スケルトンなんだけどな。
う~ん…………うん、頭が痛くなってきた。そうよね、こんな事を私が考えたところで答え何て出るわけがない、このレア・スケルトンの件はグレイさんに話して考えてもらおう。
となれば、今私が考えないといけないのはこの状況を抜け出す事よね。
腕を壊すのが無理となるとメイスで殴ったところで無駄よね……そうだ、定番の閃光弾をぶつけてレア・スケルトンが倒れたその隙に逃げよう。
よし、さっそく――くっ走って体が揺れているせいで腰につけた道具袋に手が入らない。となると、やっぱり自力でどうにかするしかないわね。
……あっ倒れると言えば、さっき暴れた時にレア・スケルトンがふらついたわね。
なら、もっと暴れればバランスが崩れてこけるかもしれない!
「うわああああああああ!」
手足をジタバタさせるだけじゃ駄目だ!
体全体を使って上下左右に動かす!
『カタカタ! カタカタカタ!』
レア・スケルトンの奴足がもつれ始めてる。
あともうちょっとね、残りの力を振り絞って暴れるのみ!
「おりゃあああああ!」
『カタカタ! カタカタカタ!』
――ガシャーン!
『カタッ!』
「っあいた!」
いたたた……レア・スケルトンをこかせる事に成功したけど、放り投げられてその勢いでお尻を思いっきり打っちゃったわ。
でも、これで脱出成――。
「シャーーーーーーーーーーーー」
――功……とは言えなかった。
お姫様抱っこの衝撃が強すぎて、ジャイアントスネークの存在をすっかり忘れてたよ!
もしかして、レア・スケルトンが走り出したのはジャイアントスネークから逃げてた!?
だとしたら私が余計な事をしちゃったんじゃ……。
「シャーーーーーーーーーーーー!」
ジャイアントスネークが大きな口を開けながら向かって来た。
あれは完全に捕食する気満々だわ、もはや逃げられない。
今まで何だかんだで助かって来たけど……今回こそもう駄目ね、食べられちゃったら終わりだもの。
神父様、シスター、みんな……ごめん。
――バクッ!
※
「ここ……天国……?」
思ってたのと全然違うわね。
真っ暗だし、窮屈で何かヌメヌメするし……とても天国とは思えないけど、こんな感じなのかな。
「ハッ! もしかして、ここは地獄!?」
私って生前そんなに行いが悪かったのかしら、うう……ショックだわ。
地獄ってこんなにも窮屈でヌメヌメして、生臭くて、生ぬるい感じがして、生き物の中にいるみたい……ん? 生き物の中?
「そうか! ここは天国でも、地獄でもない、ジャイアントスネークのお腹の中なんだわ!」
丸飲みにされたおかげで生き残れたのね、良かった~。
……いやいや、何も良くない! 次はここから脱出しないと、結局は消化されてアウト!
「ん! この! ふぐうう!」
駄目だ、今度は手も足もまともに動かせない。
これじゃメイスも持てないし、道具袋からナイフとかも出せない。
あれ? となると、どっちにしろアウトだった?
「……いやあああああああ! ここから出してええええええ!」
こんな終わりってないわよ!
今までの中で一番最低じゃない!
「うわああああああん!」
「シャーーーーーーーーーーーー!!」
「えっ!? なになに!?」
急にジャイアントスネークが暴れ出した!
「シャーーーーーーーーーーーー!!」
「あだだだ! 背骨が折れる!」
ジャイアントスネークの中にいるから、その動きに私の体も曲がってしまう!
あなたは曲がれるだろうけど、私の体はそっちの方向に曲がれないから!!
「シャーーーーーーーーーーーー!!」
「むぎゅうううううう!」
ちょっと! 今度は体内を絞めすぎ! 苦しい!
しかもどんどん、後ろに追いやられて行くし。
一体何が起こっているのよ!?
――ペッ!
「きゃっ!? ――いたた……またお尻を打った……って、あれ?」
周りの景色が遺跡の中だ、外に出られた?
もしかして、ジャイアントスネークが私を吐き出したのかしら。
「シャーーーーーーーーーーーー」
「っ!」
……ジャイアントスネークが逃げて行く。
やった、よくわからないけど助かったんだわ!
「良かった~……うえ、粘液で体がベトベトしてる。それに何かくっ付いて……きゃっ! 骨!?」
ジャイアントスネークに食べられた動物の骨かしら?
もしくは人の……いや、これ以上何も考えないで取ってしまおう。
「で、ここどこかしら?」
遺跡の中なのは間違いないと思うけど、今まで来た事がない場所だわ。
こんな所があったなんて――。
――コン
今何か足に当たった。
これは皮の鎧、何でこんな所に? というか、これどこかで見た事があるような気が……。
「……ん? あっ壁が崩れて、行ける所がある」
どれどれ、中はっと――どうやら、いつもの隠し部屋みたいね。
中にあるのはボロボロになった青銅の鎧が1つのみか。
捨てられた物みたいだけど……どうしてだろう、何か気になるわね。
「……よし、両方を持って帰ろう」
一応戦利品って事で、ゴミだったら捨てたらいいしね。
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