【完結】スケルトンでも愛してほしい!

女冒険者に一目惚をしたスケルトンのすれ違いコメディー!
コル
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コレットの書~強奪・2~

公開日時: 2020年11月2日(月) 09:59
文字数:2,605

 ◇◆アース歴200年 6月23日・朝◇◆


「これで、よしっと」


 1本の歯を埋めるだけなのにリリクスの外まで来る事になるとは……。

 宿屋の庭や花壇とかにコソっと埋める事を一瞬思ったけど、さすがに正体不明の歯を埋めるのはまずいと思い直し。

 で、どこかいい居場所がないかウロウロと動き回ってたらこんな場所になっちゃった。


「……」


 朝の早くから、街の外でなにやってんるんだろう……私。


「あれ? コレットさん?」


「へ?」


 あ、マークさんだ。

 こっちに歩いて来たけど……方向的に街の中からじゃなくて、街の外にあるあの森から来た感じね。

 森で狩りでもしてたのかしら?


「えと、おはようございます」


「おはようっス。こんな所で何をやっているっスか?」


 それはこっちの台詞なんだけどな。


「私は歯を埋めてました」


「え? 歯? ……んー? コレットさんの歯はどこも抜けてないみたいっスけど……」


 私のだったらこんな所じゃなくて歯医者に直行してますよ。


「私の歯じゃなくて、遺跡で拾った歯を埋めてたんです」


「……何でそんな事をしているんスか?」


 それは私の方が聞きたい。


「気分……ですかね、自分でもよくわからないです。それは置いといて、マークさんの方こそあの森からこっちに歩いて来た様に見えたんですけど、狩りでもしていたんですか?」


「いや、してないっス。あの森で寝ているだけっス」


 寝てるって、あれ? あの森の中に宿屋なんてあったっけ?


「あの森の中に宿屋なんてありました?」


「? 何を言っているんスか、宿屋なんてないっスよ」


 なんでマークさんが不思議そうな顔をして私を見ているのよ。

 いやいや! 不思議なのは私、私!


「でも、さっきあの森で寝てるって言ったじゃないですか」


「そうっスよ。俺あの森の中でテントを張って寝てるっスから」


「テッ!」


 まさかの野宿!?

 え、なんで?

 魔晶花やコアの売ったお金があるはずなのに。


「マークさん、お金はどうしたんですか!」


 まさか、ギャンブルで全部使っちゃったんじゃないでしょうね。

 マークさんならありえそうなんだけど。


「お金? ちゃんとあるっスよ。――ほら」


 胸元から出した袋の中には大金が入ってる。

 それを常に持ち歩くのもどうかと思うけど、それは後回し!


「だったら何で野宿なんかを!?」


「いやー、宿に泊まろうとすると門前払いか泊れても一晩だけなんスよねー。だから今はテントを張って外で寝てるっス」


 ……それってどう考えても香水のせいじゃない。

 本人は自覚無いとはいえ、そんな事するなら辞めたらいいのに。


「ナルホド……」


 まぁマークさんがそれでいいのなら、私が口出しするのも野暮か。


「今からギルドに行きますけど、マークさんはどうします?」


「行くっス!」



「え~と……」


 グレイさんはっと……いつもの席にいるわね。

 相変わらずお早い、四つ星だからギルドにすぐ来られる宿にでも泊まっているのかしら。


「グレイさん、おはようございますって……あれ? 今日は私服ですか?」


 いつもみたいに鎧を着ていない。

 私が寝込んだ時もラフな格好していたけど、私服の姿にやっぱり違和感。


「ああ、今日は遺跡に行かないからな。この後は色々まわろうと思っている」


 そうだったんだ。

 それじゃ私が行けない事は言わなくていいか。

 理由が理由なだけにあまり話したくはなったし……。


「えっ! そうなんっスか!? 俺聞いてないっスよ!」


「そりゃそうだ、昨日の夜に決めたんだから。コレットが遺跡に行けないんじゃ現場検証も出来んしな」


 へ? 私が行けない事を、なんでグレイさんが知っているの?


「あの、どうして私が行けない事を知っているんですか?」


「どうしてって昨日俺が親父さんの店にいた時、厳重に密封された箱を持った親父さんの妹さんが来たんだ」


「!?」


 あの時、グレイさんまだいたなんて!


「で、預けて行った後に開けてみたらお前の鎧と悪臭が……うぷっ思い出しただけでも吐き気が……あの時の店の中はやばかったぞ……」


 その時の地獄絵図が目に浮かぶ。

 そして、怒った親父さんの顔も……。


「……あの……親父さんの反応は……」


「あーなんだ……ゲンコツ1発は食らう覚悟はした方がいいぞ……」


 ひいいいいいいいいいい! やっぱりいいいい!!

 こうなっら宿屋の女将さんと一緒に行こうかしら。


「さて、今日の本題だ。この鎧の件だが……」


「それっス! 結局それは何なんっスか? 二人の世界に入ってそのまま解散したんで俺置いてけぼりだったんスよ!」


「……親父さんの話だと、やっぱりこの鎧はケビンのに間違いないそうだ」


 本当にケビンさんのだったんだ。

 プレートに鎧、どんどんケビンさんに近づいて行っているわね。


「無視はやめてほしいっスよ!」


「それでコレット、どの辺りでこれを拾ったから教えてほしんだ。本当は現地で確認をしながらの方がいいんだが、とりあえず場所は頭に入れておきたくてな」


 グレイさんが見取り図を取り出した。

 おお、こく細かに色々書きこまれてる。


「はい、わかりました」


「……二人とも昨日と同様っスか」


「……竜の巣がここだから……この辺りの通路ですね。壁には穴が空いていて、いつもの隠し部屋があったんです。で、中にはケビンさんの鎧が落ちていたんです」


「……なるほど。一応確認なんだが、部屋の中にはこの鎧しかなかったのか?」


 部屋の外には皮の鎧も落ちてたけど、中じゃないじゃら別に言わなくてもいいか。

 それに、昨日グレイさんは皮の鎧には反応しなかったからケビンさんに関わっている物でもないみたいだしね。


「はい、この鎧以外は何も。あ、強いて言えばボロボロになった布らしきものはありました」


「そうか、それはおそらくケビンの着ていた服だろうな。それにしても穴か……ここは何回も通っているがそんな穴はなかった。となると、最近の騒動で壁が崩れたんだろうが……うーん、これは厄介な事になったぞ」


「厄介な事?」


「鎧、そしてプレートがあった位置が離れすぎている。そして、どっちにも肝心の中身が見つかっていない……今までの情報をまとめると、ケビンの身に起きた事が多数考えられるんだ」


 ケビンさんの身に起きた事……。


「例えば何ですか?」


「例えば理由はわからんがケビン自身がプレートを外したり鎧を脱いで置いて行った。または、壁に穴が空いた時にモンスターが部屋に入ってケビンをどこかに持って行った……」


 ふむふむ、なるほど。


「ケビンがアンデッドになった……」


 ふむふ――。


「……えっ」


 ケビンさんが……アンデッド……?

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