確かにナシャータの言う事も分かる、分かるんだが。
『それはそうなんだが……そう! これは気持ちの問題なんだ!』
「わしにはわからん気持ちじゃな。わかりたいとも思わんが……」
『うっせ』
それにしても、意識してしまうと下半身が出ている事がすごく気になる……なんだかコレットにすごく会い辛いし、何か隠せる物はないか……。
かといって、この辺りに服みたいな物があるわけが……あ、丁度いいのがいるじゃないか。
『ポチ。そのボロマントをくれ』
「なんでそうなる! このぬのはあげないよ!」
ケチな事を言う奴だな。
『そう言うなよ、お前は元々魔獣でその時は裸状態だったんだから別にいいじゃないか』
「エサがそれをいうか!? それにいまのポチは、にんげんにちかいすがたにかわっちゃったせいで、からだのけがほとんどなくなったの! だからこれがないとさむいんだよ!」
寒いって、そんなボロマントじゃ、あってもなくてもそう変わらない気がするんだが。
ん? 待てよ、人間と同じ姿で毛がなくなったって言ったよな? ……と言う事は、あのボロマントの下って完全な――。
「……このスケベトンが」
ちょっ! スケベトンってなんだ!?
勝手に変な名前を作るなよ!
『いやいや、誤解をするな! まさかポチがそんな風になっているとは思わなかったんだよ!』
「……………………そういう事にしておいてやるのじゃ」
その間はなんだよ!
それに、そういう事にしておくって知らなかったのは事実だし!
「すけべとん?」
ポチの方は俺らのやり取りに意味がわかってないからか首を傾げている……ある程度知力は上がっても、その辺りは獣のままか。
まぁわかっていたら今頃ぶっ飛ばされてそうだが。
『もういい! その話は終わりだ! でも、そうなると俺の下半身はどうやって隠せばいいんだよ?』
結局問題が解決していない。
「べつにエサはエサらしく、そのままでいいじゃないか」
『何だよ、そのエサらしくって……』
意味がわからんぞ。
「今までその姿でウロウロしておったんじゃから、別に拘らんでもいいと思うじゃ」
『だーかーらーこれは気持ちの問題なんだってば!』
「あ~そうじゃったそうじゃった……」
うーわ……明らかにどうでもいい感じの言い方をされた。
「はぁ……これ以上言い合っても仕方ないのじゃ。そうじゃな……よし、ちょっと待っておるのじゃ、よっ」
ナシャータが飛び上がって行ったが、何をする気なんだ?
※
「ここを縛って……これでよしっと。――どうじゃ、これで良いじゃろ?」
『…………』
どうじゃと言われても、まさか|【母】《マザー》の枝と葉っぱで作った腰ミノを作るとは思いもしなかったぞ。
スケルトンが腰ミノを着けているって、これまたけったいな姿だな。
『いや、俺は普通にポチの様な布で良かったんだが……』
というかそっちの方がいいんだけど。
「ケビンは良くバラバラになるからの、|【母】《マザー》の魔力を身に纏っていた方がわしはいいと思うのじゃ」
ああ、なるほど。
確かに魔力を感じる……下半身からというのは何ともいえないが、まぁ見栄えは良くないがこれでよしとするか。
となると後はプレートだな。落とした場所は大体分かるから取りにいくか。
『ナシャータ、すまないが俺を上に上げてくれるか?』
「はぁ? まだコアを諦めてなかったのか!? いい加減諦めたらどうじゃ……」
『なっ、ちっ違う! 名前の入ったプレートを探しに行くんだよ!』
「ん? そうじゃったか。それじゃ掴まるのじゃ」
正直、コアの方も諦めてはいなかったが……それを言ったら連れて行ってくれなさそうだし黙っておこう。
◇◆アース歴200年 6月17日・夜◇◆
あれこれとしていたら、もう夜になっていた様だ。
まぁ俺を含め、後の2人も暗闇はほとんど関係ないがな。
『えーと……次はここを左に……ってなんじゃこりゃ!?』
虹色のでかい物体のせいで通路が塞がっているじゃないか!
これじゃ先に進めな……ん? 虹色のでかい物体? これってまさか。
『……やっぱり! これミスリルゴーレムじゃないか! どうしてこんな所に!?』
魔晶石の間が崩れた時、一緒に埋まっていた。
コアを掘り出す時に埋まっていたのをこの目で見ていたし……それが何故こんな所に?
自力で出たのか? いや、それはないか。動かないようにナシャータがコアを止めて……。
『……なぁナシャータ……』
「なんじゃ?」
『お前、今日冒険者達が入ってきた時に追い払おうとしてポチを連れて何処かに行ったよな。一体何をしていたんだ?』
「何って、ポチと一緒にミスリルゴーレムを掘り出して動かしたのじゃ。それならわしやポチが出て行かなくても、あいつらを遺跡から追い出せたのじゃ」
やっぱりか!!
確かにナシャータとポチは出て来ていないが、これはこれで問題だろうが!!
こんな物が遺跡をうろついたら、結局コレットが遺跡に来られないじゃない……か……ってあれ?
『このミスリルゴーレム、まったく動かないような』
「そりゃそうじゃ、コアの魔力が尽きておるからな。魔晶石の間におれば魔力が吸収され永久的に動けたのじゃが、この辺りではもう消耗し続けるしかない、じゃから魔力が尽きれば動きも止まるのじゃ」
こいつ、怒りのせいでミスリルゴーレムが色々やらかした事に気が付いていないな。
『動かないと、この通路通れないんだが?』
「あっ……だっ大丈夫じゃ、この遺跡全体には|【母】《マザー》の魔力が篭っておるのじゃ! 時間が立てばまた動き出すのじゃ」
『それはどのくらい掛かるんだ? 俺は今すぐにでもここを通りたいわけなんだが?』
「あ~……そこはわしにも分からんのじゃ……じゃったら退かせばいい――」
『こんな狭い通路で何処に退かすんだよ!? これじゃもうミスリルゴーレムを壊して行くしかないだろうが! しかも、それが出来るのはこの中だとナシャータしかいないんだぞ』
「うっ」
露骨に面倒くさいという顔をしたよ。
そりゃそうだ、いくらナシャータでもミスリルゴーレムを一々壊していくのも大変だからな。
『後、何で俺のいた床が崩れ落ちたのかも分かったよ……ミスリルゴーレム達の動く振動のせいで床が崩れたんだろう、つまり自分の家を守るはずが逆に壊していたわけだ』
「……そん……な……」
膝を折って項垂れているドラゴニュート……なんと哀れな姿だろうか。
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