死ぬ思いでログアウトし何とかミッドランドに設けた家に帰った僕等3人、新調した装備も武器以外全員ボロボロで全裸と言っていい、全快したのにグッタリした僕等が部屋に入るとエメラダが酒を飲みながら出迎えてくれた
「おう、観ておったぞ、最後がスッキリせん決まり方じゃったのぅ、それに戦い方も良いとこ無しの成り行き任せでは無いか、まだまだなのじゃ」
「観ていた、だと…」
「うむ、ゴブリン共に囲まれてビルを駆け上がるところ辺りからの」
「助けてくれよ!死ぬとこだったじゃんかー!」
「エメラダのバカァ!」
「エメラダちゃん…」
ヘトヘトになったところに追い打ちをかけられた気分になる
「あのくらい大丈夫じゃったろう?こうして帰って来れたしのぅ」
「あ゛〜もー、今日はもう休みたい、お風呂入るぞー」
「あーアタシもー」
「私も一緒に行こうかしら」
疲れて気付かなかったが愛夜実と一ノ瀬さんとお風呂に入るのは初めてだ、今まではいつもヴァニラの家に帰ってから休んでいたためだ
エメラダは僕等を見送る時も専用アンドロイドにマッサージをしてもらいながら酒を飲んで寛いでいた、良いご身分だな、神め!
僕等は脱衣所で服を脱ぐ、服と言ってもボロボロの布切れでそのまま廃却だ、体を自動洗浄しエメラダ設計檜の露天風呂へ入る、ホッと一息付き目を閉じて先程の戦闘を思い返す
押されに押され逃げた先でもグダグダの戦いだった、偶発的に勝てたがホブゴブリン以上の相手は全く戦いをコントロール出来ていなかった、エメラダが言うように全くスッキリしない最後だったな、済し崩し的にゴブリンキングを倒せたわけだがアレは完全に負けだった、どの攻撃にも対応出来ず、相手に隙が出来たのは死んだモンスターが煙化するダンジョン設定によるものだったしほぼ一ノ瀬さんが敵を倒していた、愛夜実の勢いも凄まじかったし…僕は肝心な所で足を引っ張っていたな…
「ふぅ、ねぇ2人とも…」
僕は目を開けて2人に声を掛け止まってしまった、愛夜実の魅力的な肉体に目を奪われてしまった為だ、人造人間らしい完璧な体の一ノ瀬さんには何故か不思議と欲情しないのだが、愛夜実の体を見ているとなんだかムラムラしてくる、生えて来そうです、そういや2人の裸をちゃんと見たのは初めてかもしれないな
「どうしたのルシエルちゃん?」
ボーっとしていたら一ノ瀬さんに声を掛けられた
「あ、えっとね、今日みたいにダンジョンでも危ない事があるからさ、そろそろ戦いを辞めた方が良いんじゃないかとも思ってさ、2人ともどうだろ?」
「はぁ?それ本気で言ってんの⁉︎今更辞めるとか無いし、てか逆にどーせ負けたらみんな死んじゃうんだしもっとみんなも戦わせれば良いんだし」
「そうね、それに私の場合記憶も常にバックアップを取ってるしダンジョンで死んでも大丈夫よ」
「「え?」」
僕と愛夜実は一ノ瀬さんの意外な言葉に思わず反応してしまった
「体をアンドロイドにする時に脳もオンラインで常に記録されるようになってるから体は別に全損しても問題無いのよ」
知らなかった、それなら今日の戦いも他にやりようがあった気がする…
「それにしてもみんなにも戦って貰うってアイデアは私も良いと思うわ」
「そうよ、どーせ地球人って暇してるじゃん?生身の人も殆どいないしさ、ダンジョンを誰でも行き来出来るようにしてさ、みんなで攻略すれば良いんじゃん?」
「んー、みんなに攻略に参加してもらう…か〜、でもやる側がメリットを感じないとやらないと思うんだよねー、既に仮想空間で自由に遊んでる地球人がリスクを冒してやるかなぁ?」
「もー負けたらみんな消えちゃうんだよー!」
「サービスの1つとして解放するのは如何かしら?」
「ん?」
「仮想現実でゲームに没頭している人達って、いわば力が無いから現実世界で参戦出来ないわけじゃない?仮想世界で都合の良い設定に慣れきった人達の中には現実戦闘のリスクを求める人も居ると思うわ、それにアンドロイド化して物理的に死を克服しているから、ゲーム感覚で参加するんじゃないかしら」
言われてみればそうかもしれない、流石にクトゥルフ世界へは人型AI兵器のホムンクルズしか参戦出来ないが、市販の武装でもダンジョンならまあ色んな戦闘体験が出来る。チョット考えてみようかな
お風呂から上がって僕等はバスローブ姿でエメラダに話を持って行った、ダンジョン攻略の仲介場を作り攻略サービスを提供する、討伐ランキング表を作って順位に応じた報酬を得られるようにしようと言う事だ。要約するとハンターギルドを作りダンジョン攻略を目指すのだ
「良いではないか!その方がよりゲームらしくて楽しめる!ワシの魔力を貸す、直ぐにやるのじゃ」
ノリノリだな
エメラダが魔力を込めたオーブをくれたので僕は早速ギルド本部デウスを創造し、仮想空間へダンジョン攻略ハンターギルド開設の広告を出した
次に僕等は人型AI受付嬢を3人置きいつでも受け付ける準備をした、そこ迄で帰って明日誰か来るかまた来ようと思ったら早速最初のハンター登録希望者達が来た
既にやる気満々で装備を整えて来ている、早くない?まだ30分も経ってないよ?僕等まだバスローブのままだしさ
「俺達はRPGの中でずっとランキングトップのクランでよ、ビリビリクラッシュメンって言うんだが面白そうな新しいゲームが出来たってのを見てクランごと登録しに来たぜ、宜しくな」
どんな名前だよって思った、普通世界ランカーのゲーマーなんて一切運動しないような虚弱体を想像するが、この世は既に肉体製作は思いのまま逞しい肉体だ、装備品だってゲームの世界で組んでた能力に近いものがある程度は揃えれる、ハンター登録第一希望者のビリビリクラッシュメンの皆さんは既にベテランの風格のあるバランスの取れた6人小隊だった、戦士、魔法使い、剣士、弓使い、タンク、ヒーラーと見た目にも拘りを感じる、と言うか地球人だけじゃない、スッカリ馴染んで異世界は異世界じゃなくなっている、違和感があるとすれば、一見古風なファンタジー装備に見えるのだが全て魔導具で全員のアイテムポーチに見える鞄なんて開けばマイクロミサイルが飛び出す仕様だ、魔法使いは流石に獣人がやってるが魔法使いの杖は大型魔導加速砲だし…この人達全員僕等よりずっと強いよね?仮想現実ゲームって凄く良い戦闘訓練になるんだね
ビリビリクラッシュメンのクランメンバーがハンター登録をしている間にも続々と新たな登録希望者が訪れる、集会所の大部屋には転移魔法陣が描かれており、一旦攻略した階層へなら自由に階層選択出来る仕様になってはいる、デジタルに慣れきった人々が微妙にアナログ仕様な設定を逆に楽しんでいる、喜んで貰えて結構な事だ
その日は結局受付に追われて帰宅する事が出来なく1日で1万人以上の登録を行い何時迄も客足は絶えなかった、僕は最終的に人型AI受付嬢を3人から8人に増やしてエメラダの部屋へ戻った、早速観戦しようと思ったのだ、
1番進んでる人は誰だろうと思ってエメラダにウィンドウを出してもらうと、やはりというかビリビリクラッシュメンのクランパーティだった
「え?ちょっとこの人達早くない?ココってさっきの10階よね?」
愛夜実が驚いて言ったので僕も気付いた、確かに10階層だ、あまりにも早過ぎる、これまでどう進んで来たのかが気になりエメラダに聞いてみた
「此奴らは面白いのじゃ、テンポ良く進んで観ていて飽きないのじゃ」
動画を巻き戻し最初から観てみる、すると先ず弓使いが空に向かって弓矢を射て、その矢が上空で細かく分裂し辺りに飛んでいった、彼らは数十秒後走り出してあっという間に第1階層をクリアし同じやり方で階層を走破していく、走る中で驚きなのは遭遇したモンスターを視界に収める前に遠方射撃で討伐して行きペースが落ちない、そしてたったの12時間足らずで第10階層まで到達したのだった
「すっご…」
「自信無くすなぁ〜…」
「スタートの初期装備性能が違い過ぎるから仕方ないわ」
凄過ぎないか?装備品は確かに多くて火力も凄そうだがこれまで殆ど戦闘を行っていない
「あ!ゴブリンキングじゃん!気を付けないと!」
別ウィンドウに映るゴブリンキングを観て愛夜実が叫ぶ
「流石にゴブリンの群勢は慎重に行かないとだよね」
しかしビリビリクラッシュメンは止まらない、これまでと同じように上空へ矢を放った後高速移動で進行する、途中あまりにも多い敵にやっと戦闘らしい戦闘を行った
先ず弓使いが再び上空へ数本の矢を放つ、不思議と敵に撃たないんだよねー、次に魔法使いが魔導加速砲でゴブリンの大群を爆撃する、突然の爆撃にゴブリン共も混乱し散り散りになる、そこにタンク役の騎士が大楯を構え突撃してゴブリンの群勢を裂いて中に切り込む、その後ろについて戦士と剣士がゴブリン共を斬り刻み道を広げる、簡単に中央に割って入ったが大楯には力場が発生しそれに触れたゴブリンが爆裂し、戦士と剣士の持つ剣も同様に薄い力場を纏い敵を豆腐みたいにスパスパ斬ってる、あんな機能を持った武器もあったのかと驚く間にも背後からの攻撃を見もせず躱し斬り殺す、後ろに目が付いているのだろうか、次は弓使いが初めて敵へ攻撃を開始した、その弓はレーザー光線で自在に飛び回り、一矢にして数十匹のゴブリンを射殺した!突き進んだ先ではホブゴブリンが、ゴブリンキングが待ち構えている、流石に正面からは厳しいだろうと思ったが大楯を持って走る騎士とホブゴブリンが正面衝突をした、冗談みたいにホブゴブリンが吹き飛び煙となる、あの大質量の高速突撃を物ともせず突き進むとは…周辺のゴブリン達は魔法使いの爆撃によって未だ立ち直っておらず、ゴブリンキング迄の道が開かれる、そしてこのゴブリンキングは鉄骨を持っておりそれを棍棒の様に騎士の大楯に叩きつけてきた、マズい吹き飛ばされる!と思ったが吹き飛ばされたのはゴブリンキングの方で、騎士の背中を踏み台に跳躍した剣士によって喉を裂かれアッサリと煙りになった…ヒーラーなんて待機したまままだ何もしてないぞ
「アレってボク達が戦ったのと同じ相手だよね?」
「そーね…」
「…」
「何であんなに強いわけ?後ろからの攻撃も見ないで躱してたよ?」
「オペレーター付きじゃから容易いじゃろ」
なにそれおいしいの?って顔をして3人でエメラダを見る
「彼奴らはチップ脳に変えておるじゃろう?それをオンラインで繋いでおるから1人に付きクランメンバー100人くらいで情報分析をして戦闘をしておるのじゃよ、階層攻略もあの弓使いの階層始めに射つ矢、数百人掛りで情報解析しアレで階層をくまなくマッピングしておるからテンポが良いじゃろ?」
じゃろ?って知らねー、見た目めっちゃ古風なのに超最先端、ステータスの割に僕等よりうんと強い筈だわ、コレはランキング報酬をかなり良いモノを用意しないといけない気がする…、僕に何が出来るだろう、まぁ10日集計にしたし後で考えよ
他のクランも覗いてみたがやはりみんな僕等より強かった、ゲームが上手い、自信無くすわぁ〜…横の2人を見ると同じような表情で画面を観ていた
「ま、まぁ2人ともゲームとかやった事ないって言ってたし、彼等と比べるのは酷だって、ボクがもっとRPG的な考えを実践出来たら良かったんだよ、ははっ…」
「…勝ちたい」
「ん?」
「勝ちたい勝ちたい勝ちたい勝ちたい勝ちたい勝ちたい勝ちたい勝ちたーい!アタシ1番になりたいの!」
「お、おぅ…」
ヤル気を無くさないどころかなんか火が点いたようで何よりです
「参考迄に1番強い人の戦いを観てみたいわ、エメラダちゃん、誰が1番強いのかしら?」
「トールじゃの」
「アタシも観たーい!観せて観せて!」
「ボクも神々の戦いはまだ観た事無かったなぁ、観れるの?」
「可能ではある、じゃが此方が観ている事を相手も分かるから面倒なのじゃよ」
そんな設定が?
「えーでも観たーい!」
「参考迄に、是非!」
「えー仕方ないのぅちょっとだけじゃぞぃ」
2人の押しに簡単に了承するエメラダ、僕も神々の戦いを観るのは楽しみだ
「どれ、戦っとるかのう?」
この世界最強の神、トールの戦いである
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