神々之黄昏

R指定のラグナロク
やほ
やほ

第50話 秘技

公開日時: 2020年10月9日(金) 00:00
文字数:3,239

クトゥルフ界の宇宙空間で対峙する5対5の上位神と上位魔神達、実力差は明確、魔神達が圧倒的にエネルギー量が多い、その魔神共がオーディン達へと接近してくる


天体級食物連鎖戦闘群体が消滅した時上位魔神が何をしたかをオーディン達は見ていた、群体から離れていなければ自分達も危なかったかもしれない


上位魔神共は突如として次元を斬り裂き現れた、そしてその時現れたのは5人だけではなかった、凡そ1万人程の上位魔神達が機を同時に宙域に現れ、限界以上に溜めた魔力を一斉に発し超々高密度魔力を衝突させ一瞬にして超質量霊子崩壊重力球を発生させたのだ


平たく言えばブラックホールだが性質が特殊だ、光だけでなくエーテルさえも引き寄せ崩壊消滅させる、その為神であっても神核を砕かれ消滅される、実際新たに現れた上位魔神達であっても一瞬で呑まれ消滅した、そして小さな魔石となって1人の上位魔神に噛み砕かれた


謎の行動である、突然参戦し己等の御業で消滅したのだ、考えられる可能性として洗脳と扇動がある、その場合更なる上位存在が居るのが自然だ、恐らくは魔石を噛み砕いた者がそうだろう


しかしオーディンは落ち着いていた、味方は5人にまで減ったが相手も同じ数だ、神器の効果を最大限に引き出し広域戦闘型から対個戦闘型へと切り替えれば切り抜けられると見通したからだ、それに魔神共の戦闘方法は力押しが基本の為戦術次第では格上だろうとハメ殺せると…


しかしゆとりが無いのも事実だ、これ以上敵が増えれば厳しいと判断して念話で作戦を端的に伝える


『みんな、速攻で決めるぞ、先ずは全員であの左端のヤツを仕留めるんだ』


オーディンは1番魔力の高い魔神から順に片付ける事にした、オーディンの見立てではその上位魔神の実力はトールに近いと感じられた、1人だけやたらと格が違う、そして他の4人は若干オーディン等よりも強い程度だ、ならば其奴を排除すれば後は然程難しい問題ではなくなる、その上位魔神こそがこの場の支配者だと予想されるが故に


オーディンの陣営、残った上位神の名はバルドル、ヴァーリ、オーズ、ソゥルと言う


バルドルは光属性浄化に特化した魔導師だ、ヴァーリは近接戦闘を得意とする剣士、オーズは格闘術に長けた拳士、ソゥルは時空干渉術に長けている


オーディンは神槍グングニルを具現化し、ヴァーリとオーズも其々の得物を具現化する、そしてバルドルとソゥルが全員に属性付与を掛け、オーディンも神楯スヴェルの効果を限界まで引き上げ戦闘準備を整えた


そしてオーディン達が攻撃を仕掛ける直前、接近して来た上位魔神達が中距離から一斉に波動を放った!光波の砲身から先程と同質のマイクロブラックホールを撃ち出す、一瞬でオーディン達は波動に呑まれ蒸発したかに見えた


だがソゥルが全員を短距離瞬間転移させ狙いの魔神を囲んだ


瞬間転移した5人は阿吽の呼吸によりソゥルが標的の周りの限定空間を結界で隔離し外部から干渉出来ないように遮断した、同時にバルドルが光の拘束具で動きの要所を全力で抑える


だが残りの3人が距離を詰める前に外から一瞬で結界を破られ、 バルドルの全力拘束も引き千切られた


ほんの刹那の妨害、全力でたったその程度、しかしそれで十分


オーズが渾身の力で背後から羽交い締めにしオーディンがオーズごと敵を突き刺す!更にオーディンまで羽交い締めに加わるが上位魔神のあまりの力にたいして抑える事は出来ない


ほんの微力な抵抗、全力でたったその程度、しかしそれで十分


ヴァーリは他の魔神共が目的を阻止しようと到達する前に味方ごと斬り刻む!全てを掛けた神速の斬撃を放ち魔神の神核である魔石を両断した!


その瞬間ソゥルが再び短距離瞬間転移で全員を退避させた


魔石を斬られた上位魔神は傷口の内側よりタールの様な黒い血を溢れさせジュルジュルと音を立ててその身を崩壊させ、邪悪の全てを孕んだ様な呪怨の声を上げながら黒い煙と化して霧散した


「ぉぉお゛お゛お゛ぉぉ…」


遥か格上の上位魔神を全員で仕留めた5人、味方の攻撃で貫かれ千刻みにされた筈のその身は無傷。神楯スヴェルの効果で味方の攻撃を無効化し、敵を捨て身で捕らえ、極限まで強化した浄化能力により討ち滅ぼせた、その時間稼ぎに全力を掛けた2人もそのエーテルを全快している


しかし次の回復は難しい、奪うべきエネルギーが最早無い、その為次の戦闘は人数差を活かし優勢に運ぶのが安全だ、とオーディン達が動こうとした時魔神達が口を開いた


「待て、異界の神々よ」

「よくぞあのナイアラルトホテップを討ち滅ぼした」

「我々は奴に思考を操られていた」

「其方等と争う気は無い」


「おおっ!喋った!?」

「操られていただと?魔神ってのはそもそも魔石によって常に魔力を求める体質だろ?」

「例えそれが本当だとしても常に捕食する思考は変わらんよな?」

「うんうん結局は殺し合いだ」

「待てみんな、だとしたら俺はさっきの奴の目的の方が気になるぞ」

オーディンはみんなの言葉に待ったを掛ける、魔神が策を練り他者を操ったとなれば目的が気になるだろう


「それは我等も知らぬ」

「我等は他者と対話などせぬ故」

「それでも上位魔神が何故上位魔神と呼ばれるのかを知っているか?魔石に支配された体質を超克した者を言うのだ」

「それを更なる支配によって我等は操られたのだ」


ならば謎は深まるばかり、オーディンは今正に嵌められている事に焦りを感じた


「さっきの奴が最終的な敵だったか明確でない、急ぎ撤退しよう!お主等、ユグドラシルに来て詳しく話さぬか?」


「良いだろう、我はアブホース」

「我はイォマグヌット」

「我はトゥルースチャ」

「我はトルネンブラ、其方等に協力しよう」


上位魔神達が協力を示してくれた、更なる敵が現れようと大きな助力となるだろう、そう心強く思った矢先


「おいおい、全く冗談じゃないぜ、それじゃこれまでやって来た事が台無しになっちまう、お前等は此処で全員死ぬんだよ」


空間に声だけが響く


「この声、ロキか?」


バルドルが声の主に問い掛ける、すると見えない膜を通り抜けて来るようにロキが現れた


「その姿、格上の者をどれだけ吸収したのだ?」

オーディンはロキの成長ぶりに驚きを顕にした、不変の神が激変して現れたのだから無理もない


「ふふふ、やあみんな、俺が黒幕だよ、て事で死ね!」


ロキはその場で強制崇拝の能力を発動し全員の思考を操りに掛かった


神楯スヴェルの効果もあり何とか自我を保つユグドラシルの神々、しかし上位魔神達は一瞬でロキの傀儡となった、一気にオーディン達へと襲い掛かる


「やっぱ厄介な神器だぜ、だがここまで戦力を削られて切り抜けられるかな?」


「何故だロキ!貴様の目的が見えん!」

オーディンは神槍グングニルを振るい魔神を牽制しながらロキへ問う


「そりゃそうだ、目的なんて特に無いもん、ただの暇潰しさぁ」


「これだけの者達を犠牲にして只の暇潰しだとっ!?」


「ははっ何言ってんだ、他人の事なんて神が気にするか?お前だって自分さえ楽しけりゃそれで十分な筈だろ?オーディン!」


ロキの言う通りだが、世界を滅ぼそうとまでする者はこれまでいなかった、他人はどうでも良くても他人が居ないと楽しみが無くなるからだ、正に自分本意だがそれが神だ


「よかろう、お前が黒幕と言うのなら俺も奥の手を出そう、出でよ神霊召喚戦乙女ーーーッ!!!!」


オーディンの持つ神槍グングニルが分裂し形を変える、それは9体の女性へと成った、軽鎧を装飾する様に装備した美女達だ、其々手に持つ武器は様々でどれも神器の存在感を持つ


「ヴァルキリー?見覚えあんぞ、いつもオーディンに侍ってる情婦共じゃねえか?」


「ふはは、貴様は知らんだろう、この嫁達こそが我が最終兵器なのだ、ロキよ己の所業を悔い無念の内に朽ち果てるがいい」


オーディンは背後に出現させた玉座型の司令塔に座り、防御結界を張りその中から指揮を執る


「ちっ、まだ手を隠してやがったか、さっきで全部出しとけよな!」




そしてオーディンとロキの最終対決が始まった

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