「どう?どう?フレイヤのあの悔しそうな顔!アイツのあんな顔なんて見た事ある?あのプライド女神、傑作じゃん?フレイも干物みたいになっちゃってさ!あの美形兄妹の最期としてあり得ねーくらいハマてたっしょ?」
興奮し燥ぐロキはエメラダの部屋で神酒を煽って饒舌に捲し立てる
「フレイヤの力を奪った事でオーディン等と戦う手段を手に入れたのじゃな、神核を破壊し、その全エーテルと能力を奪い我が物としたか…」
「ふははっ、そーなんだよー、じゃ続きも観ようぜ、てかこの酒美味いね、じゃんじゃん出してよ」
神酒を飲みながらエメラダ、ロキ、そして未だ頭部のみの魔神二グラスは戦争の続きを観賞するのであった
クトゥルフ界の神々も、生物達も一枚岩などでは決してない、寧ろ己の欲望に忠実なだけあって其々での争い事も絶えない状態が平時である、そんな中でロキの提案に乗って参加したのは全体の0.001%未満、しかしその神達はその世界の9割強のエネルギー量を保有している、完全にその世界の上位存在達、今回のユグドラシルからの侵略戦争にすら大した関心を持たず好き好きに生きる者達だ
魔石を持つ故に常に魔力を求め戦闘を繰り広げる者達、ロキの計略も只の暇潰し、新たな遊びの提供くらいにしか考えていない、何故ならロキを弱者として認識しているからだ、絶対的強者故に
それでも一年程前にはオーディンやトールの実力には届いていなかった、其れを踏まえロキは其々異界の神々を唆し、初めにデウス界の神々を餌にしてクトゥルフ界の神々の強化を行ったのだ、それも誰にも勘付かれないよう他者の思考を操って。そして遂にオーディンへ正面から挑み勝利する算段を整えたのである
オーブに浮かぶ映像は半年前のオーディン達の戦場だ、ネガティブな色彩の宇宙空間、そこではオーディン達上位の神々が中位下位の神々やエルフの戦士団を指揮し戦場を動かしていた
「力量に合わせて組み分けをしたが…何という数だ、これ程多いとはな」
オーディンが言うが無理もない、オーディン達は総勢100人、個の力に特化し過ぎている為に神々とハイエルフのみで構成された一団だ
対するはクトゥルフ界の軍勢、その数、数百億、その全てが覚醒戦士以上の実力だ、其処には統率も無く我先にと相手に喰いかかる者達だ、魔神も魔人もモンスターの中に入り乱れている、異界戦争というよりも勝手に殺し合っている戦場にオーディン達も参戦したと言うのが正しいだろう、天体級食物連鎖戦闘群体だ。魔神同士で喰らい合い魔人達が群れで魔神へ襲い掛かる、それを返り討ちにし魔石を喰らう勝者、勝者を喰らい更に力を増す強者、それを繰り返す混沌がクトゥルフの世界だ、その軍勢が時空を超えて侵略してくるなど世界の終わりを予感させるのに容易い
確かにエッダの言う通りだとオーディンも思った、しかし
「はっはーーーーっ!何という数だ!殺しても殺してもまだまだ楽しめるではないかーーー!」
神々とは退屈なのだ、不変の存在であり退屈凌ぎにいつでも巫山戯ている、オーディンは思ってもいなかった敵の数に無限の楽しみを感じ高揚した、そして思うがままにその能力を奮った
魔神は基本的に搦め手を使う者はいない、何方の力が上か、其れのみを証明し続けるのが常識である
ユグドラシルの神々の強みの1つに神器がある、フレイの逸物も神器であったようにどのように所持しているかは神々による。中でもオーディンは幾つもの神器を持っており今回戦闘に置いて絶大な効果を発揮する神槍グングニルと神楯スヴェルを持ち出していた
「ふははははっ死ぃねぇーーーーいっ!!!!」
オーディンが大投擲した光の波動が蠢く巨大な天体の様な敵陣を貫く、神器を使用したオーディンはトールの実力を上回る
「はあーーーーーーーっ!!だあーーーーーーっ!!!!」
オーディンが投擲の姿勢を取るとその手に光の槍が現れる、それを投擲すると極太の光線が敵を纏めて蒸発させ再びオーディンの手から発せられる、何度も何度も光の槍を大投擲し魔神もモンスターも同様に一蹴する
「はーーーーーっはっはっはっは!!見よこの威力!なんという殲滅力!なんという爽快感!」
戦争サイコーーーーーー!という副音声が聞こえてきそうなオーディンの溌剌とした声に周りの神々も高揚し敵の殲滅を楽しむ、集団ヒステリーを起こしたかの様な狂乱振りだが開戦前にオーディンから作戦は伝えられている
作戦名[我に続け]ただオーディンの行動を真似て戦いに参加せよという作戦だ、何故か、神々は細かい作戦を立てないから、複雑な手順を伝えても誰も付いてこないのだ、神故の不変さと傲慢さがそうさせる
それを理解しているオーディンは他の神々を上手くノセ利用する、知らぬ間にオーディンの手脚となって戦うのだ、オーディンは神には珍しく搦め手を使う、戦略を練る、他者に意識を向ける、未来を想像する…
神槍の攻撃により数百数千の敵が一瞬で浄化され蒸発する、そして浄化したエーテルエネルギーを集束し再びグングニルを使用する、なので敵を殺し続ける限りいつ迄も使用可能な超位武器なのである
オーディン達の攻撃に気付いた魔神達も攻撃対象を切り替え続々とユグドラシルの神々に襲い掛かる、あまりの数にあっという間に囲まれる者も出た、複数同時に攻撃された事で防げ無い攻撃もある、しかしその攻撃が見えない壁に打つかり光を発する、球体の膜がキラリと光り輝いた
もう一つの神器、神楯スヴェルが敵の攻撃を阻む、オーディンは神楯スヴェルを起動し味方全員に防御効果を付与していた、人数が増える程効果は薄まる、それ故の100人、中位の神ですら打ち破るのは困難な最低水準、更に物理防御効果だけではなく、そのバリア内の対象に掛かるのは速度向上、常時回復、状態異常無効、魔力防御効果、身体能力強化、外部攻撃エネルギー吸収が常に掛かっている状態だ、なので対象者はそのバリアの中の安全圏から好き好きに攻撃を仕掛ける事ができる、反則まがいの戦士達、それはほんの100人足らず、されど上位者100人、数百億の敵陣に斬り込み縦横無尽に殲滅を繰り広げる
それから半年後、その戦場は更に熾烈を増し戦い続ける戦士達の姿がある
半年間不眠不休での継続戦闘だ、神の時間感覚であっても疲労は溜まり消耗が進んでいた、だが未だに死者はいない、これもオーディンの神器のお陰である、しかしいくら無尽蔵に全力攻撃を出来るとは言え精神的に神経を磨り減らす
「なあ!オーディン!コイツら殺しても殺しても全然減らないぜ!寧ろ増えてねぇか!?」
「それにどんどん強くなってんぞ!?」
精神疲労の原因、それは終わりの見えない戦闘と徐々に強力になって行く敵の実力
魔石持ちの性質上、周りの者は全て餌というのが常識である、あまりの数に巨大な天体のようであった群団はお互いに喰らい合い、勝者は更に力を増す、そしてその勝者すら一瞬で喰われ餌と化す、そしてその環境を生き抜いた者はオーディン等の攻撃により浄化されるか、又は更に上位の存在である魔神の糧となるかだ、食物連鎖の頂点である捕食者達が力を増して苛烈に攻勢に出る、神器のバリアを破りダメージを与えてくるのだ、その為いくらチート級のバフ効果を受けていても、ユグドラシルの戦士達は徐々に苦戦を強いられるようになって来ていた
そして問題はそれだけでは無い、毎秒十数万単位で敵を殲滅している上に、魔石持ちの者達は共喰いをし数を減らしている、それなのに敵の数は半年前よりも増えている
何故か?それには2つの理由がある、1つは大規模戦闘に引き寄せられた者達が参戦し続けている事、クトゥルフ界では常時天体級食物連鎖戦闘群体が各エリアで勃発している、そしてその戦闘を最終的に生き残った者が強者として君臨し続ける魔神と成れるのだ、また魔神達も初めからクトゥルフ界で生まれたわけではない、殆どの者が異界より来訪し魔石を知り魔石持ちとなり常に渇きに取り憑かれた魔神となったのだ、今回長期的に戦闘を継続した事でいくつもの天体級食物連鎖戦闘群体が引き寄せられ合わさったのだ
そして2つ目、ロキの提案に乗った者達が戦場の呼び水となっていくつもの天体級食物連鎖戦闘群体を誘引し暗躍していたのであった
オーディンも焦りを感じていた、丁度敵が数段強力になった瞬間から戦場が結界で閉ざされたからだ、上位の神といえど其々得手不得手はある、例えばエメラダやローゼル等は時空干渉が得意で結界や転移、時空創造に得手としているが実戦闘は不得手だったりする。その逆でオーディンやトールは時空干渉を不得手としており、オーディンは保険の為にいつでも転移退却出来るように事前に次空間トンネルを繋いでいたのであった、それが絶たれた、一時退却を考えた瞬間の出来事である
「むう、緊急事態だ!全員一旦集まれ!」
オーディンは全員を集め警戒を強める
「みんな気付いてるか?此処ら一帯結界で断絶されたぞ」
時空干渉に長けた者が呼び掛けた
「マジ!?どやって帰んの?」
「オレもー疲れたぜー」
「アタシもー」
未だあまり危機を感じてい無い者達が多い
「一旦撤退しよう、全員でエーテルを集中して無理矢理結界にゲートを空けるのだ」
オーディンがそう提案した時、目の前の超天体級食物連鎖戦闘群体が閃光を発し爆縮した
「なんだ!?」
「まぶしっ!」
「拙い!!」
半年掛けて減らすどころか増えた敵群が突如として消え去った
「早くゲートを!」
オーディンが大声で号令するが遅かった
先ずはエルフ達が消滅した、次に下位神、その次に中位神、そしてオーディン達上位神でも5人だけが残った
「ちっ、面倒なっ」
「どうするよ、オーディン?」
「コレ…ヤバくね?」
「………。」
「うむ…、勝って帰るしかあるまい」
全員何が起こったのかを理解している、目の前に丁度5人の魔神が立ち塞がっていのだ
敵群を一瞬で消滅させた者達、いや、一瞬で捕食した者達、そして味方を次々と殺した者達でもある
オーディン達上位神からしても格上の上位魔神が現れた
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