フレイヤとローゼルの権能を奪ったロキがその能力を振るう、強制崇拝によって支配した魔神達に防御結界を施しオーディン達へ嗾ける
4人の魔神共がバルドル達に迫るが、それをヴァルキリー達が強襲する、分散して戦うのではなく1人に対して9人全員で攻撃を仕掛けた
「「「「「ぃぃいやあぁーーーっ!!」」」」」
「ヴオォォーーーッ!!」
「今だ!」
「砕けろーーっ!」
「はああぁぁっ!」
「やあぁっ!!」
ヴァルキリー達は5人掛りでロキの張った結界を破り、抵抗し咆哮を上げるアブホースの動きを止め、残りの4人が集中的に急所を攻撃する、胸の中心にある魔石への集中攻撃だ、流石の上位魔神も自身の防御も撃ち破られ魔石を砕かれた
「おおぉ、更なる呪縛より、よくぞ我を解放してくれた、悔やむべくは我等をいいように弄んだ簒奪者を我が手で仕留めきれぬ事だ…さらば異界の者よ…」
魔石を砕かれたのと同時に、ロキの支配から解かれた上位魔神アブホースが紫色の光子になり四散していった
「はあっ!?、何だあの女共!上位神より、上位魔神より強いだとっ!?どうなってんだっ!?」
アッサリ上位魔神の1人を浄化消滅されロキが驚愕する
「オーディンよ…こんな奥の手、俺等も知らなかったぞ…」
「ホントだぜ!さっきで出しとけよなっ!」
「んだコレ俺等よか強ぇーじゃん!」
「全員お前の嫁ってどんな設定!?」
全員が愚痴りだす
「ぬうっ…お前等人が折角秘技を使って救かったというのに…、まぁ良い、さっさと片付けてしまおう」
「我等が主人の御心のままに!」
オーディンが声を掛けヴァルキリー達が覇気を持って応える、戦術を伝えなくともパワーバランスを考え自分達で標的を決め撃破する、戦闘の天才達だ
ヴァルキリー達は普段からオーディンに侍り共に暮らす最愛の妻達だ、彼女達が何故強いのか?それはいつもはそのエーテルを別次元に置いてある神器エインヘリアルへと常に蓄積し続け、戦いの時にはその溜まったエーテルを一気に解放消費し全力で敵を殲滅するからだ、エーテルが溜まった分だけ強くなるがその貯蓄分が空になれば地球人並みに弱くなる、メリットは短時間の超絶火力、しかしそのメリットを生み出す為のデメリットも存在する
先ずエーテル貯蓄の為の膨大な時間、神の尺度であっても気が遠くなるような時間だ、少しづつ少しづつ、何も無い極点の大陸に深々と降り積もる雪がやがて氷の大陸を形成するように、最低でも数10万年前の刻を用する
次にその膨大なエーテルを超短時間で放出する為使用者の身体に限界以上の負荷が掛かるのだ、少しでも出力を誤れば身体が即爆散してしまうリスクがある
そして例え敵を倒し勝利を納めても最終的には必ず身体が限界を超えボロボロに崩れ死を迎えるのだ、オーディンとヴァルキリー達はその結末を知っている、主人の痛みと妻達の悼み、そして両者の覚悟が敵を熾烈に攻め滅ぼす、生命の灯の最期の炎はなによりも苛烈で誰よりも強く敵を焼き尽くすのだ
しかしオーディンはもう一つの神器、現在座っている椅子は実は舟の操舵席であり死者の魂を保護し乗せ集める事の出来る効果があるのだ、その名は神舟フリングホルニ、エインヘリアルからのエーテル出力を調整するレギュレータの役割も果たしている、そしてヴァルキリー達が死んだ後、その神核が消滅してしまわないよう保護する為に起動している
エインヘリアルを使用した者は死後、神核をフリングホルニに保護され別次元ヴァルハラへと運ばれる、そこでまた長い時間を掛けて生まれ変わることになるのだ、記憶は無くし新たな神として
ヴァルキリー達は上位魔神達を圧倒し次々と魔石を砕いて行く、徒手格闘においても超絶技巧と言っていい研鑽を感じさせ、魔神の光速の連続突きを回し受けでそのまま腕を切断する、ヴァルキリーは一見剛よく柔を断っているようにも見える体術だが、実際は魔神の攻撃こそ剛撃でヴァルキリー達は正に柔能く剛を制している、ほぼ全ての攻撃をカウンターで決め意識の薄い箇所を狙い撃つ
されど敵は上位魔神、その防御を抜くだけで多大な神器の出力を要する、ヴァルキリー達は敵を撃つ度に死に近付いていた
「はあっ!」
槍を振り回し魔神を無数に分割し斬り裂く
バギリィイィィーーンッ!
「さら…ば…」
ヴァルキリーの1人が最後の魔神にトドメを刺す、魔神達は支配から解かれオーディン達に仇を託すように消滅していった
「嘘だろ…上位魔神共がこんなにアッサリ…」
「ははっ残念だったなロキ!」
「観念しろ、結界を張った、この場からは絶対に逃さんぞ」
「貴様の遊びの為に殺された全ての神々の怨みを知れ」
「死ねロキ!」
支配した上位魔神を全て浄化され1人になったロキ、だがまだまだ余裕をみせる
「はんっ、確かに売女共の戦力は想定外だったがよ、もうお前等が死ぬ事は決まってんだよ、そのまま力を使い果たして喰われちまえ」
ロキはそう言って黒々とした巨大ゲートを開いた
ゲートからは禍々しい長大なモンスターが現れその身を躍らせて周囲を囲んだ、体表の鱗からは瘴気が溢れ黒い霧が立ち込める
「何だこの生きものは!?蛇?竜?」
「お前等は知らないだろう、このモンスターは龍と言って異界の神獣さ、俺の新しいペットさ」
「貴様!いったい幾つの異界に手を出しているのだ!?」
「熱っ!?みんな!この黒い霧結界を通り抜けてダメージを与えてくるぞ!?」
「なんだと!?拙い!早く浄化してしまうんだ!」
「傷が再生しない!?」
バルドル達が異界の神獣による攻撃に晒され焦り出す
「ヴァルキリーーーーーーッ!!!!」
オーディンが声を掛けるが先かヴァルキリー達は皆の前に立ちはだかり浄化の焔を爆発させた、輝く萌黄色の焔が黒霧を浄化し黒龍を押し返す
「ちっどんだけだよ、トールより厄介なんじゃねえか!?」
ヴァルキリー達の活躍にロキが忌々しそうに愚痴を吐く、ヴァルキリー達の消耗を知らないロキは次の手も通用しない可能性を感じ顔色が変わる、しかし兎に角オーディン達の消耗を狙うロキは次の手を撃つ
「間に合うか…、1つしかないがしょうがないな、ここで勝たなきゃ次は無いしな」
ロキは呟き緑のオーブを取り出した、それは特別なエーテル結晶でありクトゥルフ界の者達にとってはこの上ない餌である、そのオーブを砕き左腕にエーテルを纏わせると自ら腕を引き千切った
そしてその腕を緑の火の鳥へと変えヴァルキリー達の張るバリアへと飛翔させた
火の鳥はバリアに触れると周囲を呑み込み爆縮し一気に全エネルギーを爆発させた
「「「「きゃああぁーーーっ!!」」」」
「「「「うおおぉおーっ!?」」」」
爆炎に曝されたヴァルキリー達、バルドル達はその身を焼かれ崩壊して行く
「アレは!?まさか!!ロキめ終焉之炎焔を使ったな!どうやって手に入れたんだ!!」
オーディンはロキの使った導具が何なのかを見抜いた
終焉之炎焔、幻初の火とも呼ばれ神の間でもその存在が定かでは無い御伽噺の1つである
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