女騎士ロザリーは甘えたい

下垣
下垣

141.王城を取り戻せ

公開日時: 2020年11月4日(水) 19:05
文字数:2,314

「ジャン! この場の指揮はキミに任せた! 私はラインとアルノーとクローマルを連れて、王城へと向かう!」


「ええ。わかりました。この場にいるリザードマンの処理は残った騎士達で十分です。私に任せて下さい」


 ロザリーの命令を受けて、ジャンは残った騎士達に指揮をしてリザードマン達を追いつめていく。しかし、リザードマンは全滅させられないように防御的な陣形を組んでいる。こちらはかなり時間がかかりそうだ。


「さあ、皆行くぞ!」


 僕とアルノーとクローマルはロザリーの後を付いていって王城へと向かった。



 王城の正門前には既に大量のゾンビがいて、とてもじゃないけれど中に入れない状況だ。


「強行突破するか?」


 クローマルが刀を握りしめてそう言った。


「いや、別の侵入口から攻めよう。王城には、万一の時に使う脱出口がある。王城から、王都にある水路に出るルートがあるんだ。それを逆に侵入に使う」


 ロザリーは王城近くの水路からボートに乗り込んだ。ボートは丁度四人乗りでそのまま乗れた。


「おお丁度四人乗りだなんて凄いですねロザリー団長。ここまで計算してたんですか?」


「ああ。もし、正門が塞がれていた場合の侵入経路を考えたら、多くの騎士は連れていけないからな」


「流石ロザリー姐さん!」


 ボートは進み、王城へと侵入するルートに入っていく。かなり入り組んだ道で道筋を知っていなければ、入るのは不可能な程だ。


 そして地下水道の中に入り込み、王城への侵入に成功した。僕達はボートを停泊させて、降りた。ここから道なりに進めば地下牢へと出る。そこから王城内部に侵入しよう。


 地下牢に出るとそこにも数匹のゾンビがいた。このゾンビは囚人服を着ているようで、元々囚人だったモンスターがゾンビに噛まれて感染したのだろう。


「囚人とはいえ惨いことをする……皆。元は人間だからと言って情けは必要ないぞ!」


 ロザリーはレイピアを構えて、ゾンビの首元を突き刺した。アルノーもそれに続き、ゾンビにレイピアを突き刺す。僕も負けてられないな。僕もクレイモアでゾンビを斬りつけた。


 所詮は囚人のゾンビ。武装していないから、武器を持っている僕らの敵ではない。そう思っていたら、後方には衛兵の服を来たゾンビが現れた。衛兵までゾンビにさせられていたのか。


 衛兵は武器を持っている。腰に携えたサーベルを手に取り、出鱈目に振り回している。


「く……衛兵まで……」


 流石に僕達と同じ志を持っている兵士仲間と戦うのは躊躇する。そう思っていたら、クローマルが前線に立ち、刀で容赦なく衛兵を斬りつけた。


「お前らがこいつを殺すのが辛いなら、代わりに俺がやってやる。俺はまだこの国の兵に対する思い入れはないからな」


「ああ。ありがとうクローマル」


「え、そ、そんな……ロザリー姐さんの為ですから」


 クローマルはロザリーに褒められて分かりやすく照れている。本当にこの人はロザリーのことが好きなんだな……


 僕達は階段を上り、地下から一階へと出た。一階にはまだ火は侵攻してないことから、火は上の方から点けられたのだろう。一刻も早く、上に行き消火しなければ……


 一階にはゾンビやらスケルトンと言ったアンデッドモンスターが蔓延っていた。小汚い恰好のゾンビもいれば、綺麗なみなりのゾンビもいる。身なりが綺麗な方は恐らく、王城にいた貴族や役人などであろう。ゾンビに噛まれたことで感染してしまったのだ。


「ひ、ひい! 助けてくれ!」


 階段の踊り場にいたリュカ大臣がゾンビ達に追われている。このままでは彼も咬まれてゾンビの仲間入りをしてしまうであろう。


「せいや!」


 ロザリーはレイピアを振るい衝撃波を飛ばして、ゾンビに攻撃した。リュカ大臣は咬まれる寸前で助かったのだ。


「ロ、ロザリー! た、助けてくれ!」


 散々ロザリーに嫌味を言ってきたリュカ大臣。だが、自分の命の危機に瀕した時に都合よく助けを求めている。僕はなんかもやもやした気持ちを抱えていた。


「大臣! 早くこちらへ」


 僕達は一階に蔓延っているゾンビやスケルトンの大群を次々に蹴散らしていく。そして、リュカ大臣が通れる道筋を開けた。リュカ大臣は安全を確認した後に、僕達の方に急いで駆けよって来た。


「た、助かった……」


「大臣。状況を説明してください」


 ロザリーの追求に大臣はしどろもどろになっている。


「あ、ああ……えっと……その、何から説明すればいいのやら……」


「まずは、いつゾンビが攻め込んできたのか説明してください!」


「あ、ああ……それはだな。王都にリザードマンが侵攻したという情報を聞きつけてな。王城にリザードマンが入り込まないように正門の守りを強化している時だった。地下牢から悲鳴が聞こえてきてな。それからだった。ゾンビが侵攻してきたのは……奴らは水路から侵入して内側から王城を攻め落とすつもりだったらしい」


 僕達が通って来たルートを使ってゾンビやスケルトンが侵攻してきたと言うのか。ジュノーは過去にこの王城を征服したことがある。その時に、王城の構造を調べ尽くしたのだろう。


「陛下は無事なのですか?」


「無事というわけではないが、まだ生きておられる。憎き魔女ジュノーは謁見の間にて陛下を監禁している。早くお助けしなければ……」


「ジュノーめ……陛下になんてことを……大臣。もう王都にも王城にも安全な場所はありません。どこか物陰に隠れてじっとしていて下さい」


「あ、ああ。わかった」


 ロザリーの指示を受けて、リュカ大臣は安全な場所を求めてどこかへと去っていった。生き延びてくれればいいけれど。


「ライン、アルノー、クローマル。敵は謁見の間にいる……行くぞ!」


 僕達は謁見の間を目指して進行した。陛下をお救いするため、ジュノーを倒すために前へと進むんだ。

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