ここで書くことでは無いと思うんですがイラスト募集してます。
Twitterも名前は赤緑亀なのでそこからよろしくお願いします。
窓はなく、懐中電灯の明かり以外に光が無い部屋の隅に水野《みずの》 蓮斗《れんと》は三角座りで座っていた。
その瞳は懐中電灯で照らされた床の一部を眺めていた。
懐中電灯で照らされた部分の床には、赤黒い塊がこびりついていて、元々何色だったのか分からない。
よく見るとそこには、赤以外にも黒と白の何かが潰れているのが見える。
当然それが何か生き物の目玉である事は蓮斗には分かっていた。
頭の中で「何だろう、何だろう」と繰り返し、どうにか目玉だと思わないように、現実逃避に励むが一度目玉だと理解してしまった頭は、それを目玉としか判断してくれない。
ここに監禁されてからもう3ヶ月になるが、日々増えていく赤黒い塊には今だに慣れない。
最初は赤黒い塊から鼻がもげそうな異臭がしていたが、今は何も匂いはしない。
視覚より先に嗅覚が赤黒い塊に慣れたのか。
それか嗅覚自体が壊れてしまったか。
どちらにしろ最悪な事には変わりない。
何度もこの地獄から逃げようとしたが、ドアは鍵がかかった鉄扉一つ。
窓はなく天井にある排気口以外に空気の入れ替えがされることは無い。
時計が無いため時間が分からず永遠に続くかと思える。
食事や水は俺をここに監禁したあいつが毎日3食分まとめて置いていくが、こんな所じゃ殆ど食欲なんて湧かない。
何も考えないように目を閉じ思考を停止させてぼーっとしていると、鉄扉の向こうから重々しい足音が聞こえてきた。
足音は鉄扉の前で止まり鍵穴から金属音が鳴る。
鉄扉は床にこびり付いた赤黒い塊を削りながら開き、そこから蓮斗をこの部屋に閉じ込めた実の父親がビニール袋片手に中に入ってきた。
その瞬間外の光が部屋全体に広がり天井、壁、床にこびり付いた赤黒い塊が見えてしまい、胃の中身を吐き出してしまいたい衝動に駆られてしまう。
逆流した胃液を飲み込み、父の方を見上げると父は汚らしい笑みを浮かべ、小刻みに震える袋を逆さにし乱暴にも袋の中身を床に落とした。
床に落とされたのは全身傷だらけの白い子猫だった。
「蓮斗今日こそ父さんを受け入れてくれないか?お前の好きな猫を取ってきたから今日こそ分かってくれ。もうお前しかいないんだ」
まただ…。
蓮斗の父親は半年前からおかしくなっていってしまった。
最初はドラマとかで殺人のシーンを見た時に微かに笑うくらいで気にはしていなかった。
しかし月日が立つに連れ父が笑みを浮かべる対象は、まるで何か少しずつ侵食されて行くようにどんどん変化していき。
4ヶ月前には自分が気に入った殺人シーンだけを詰め合わせたビデオを作り、休みの日にはテレビの前でずっとそれを眺めていた。
3ヶ月前には映像だけでは飽き足らず、何処からか半殺しにした動物を持ってきて、家族の前で斬殺しだしたのだ。
すぐに警察に連絡しようとした母は父に殺され、この部屋の壁にこびり付く赤黒い塊の一部にされてしまい、既に頼れる人はいない。
父の惨殺ショーを理解出来ず拒絶し続け、自首するように何度も言ったが父は聞く耳を持たず終いには、蓮斗を地下に閉じ込めるまでに至ってしまった。
地下でも変わらずこうやって半殺しの動物を持ってきては、蓮斗に受け入れてもらおうと惨殺を見せ続けているが、今日はどうもいつもと違った。
父は袋から出した子猫にすぐに手を出さず、袋に手を突っ込むと袋のそこで引っかかっている未開封の新品のカッターナイフを取り出すと、蓮斗の前に置いた。
「今日は蓮斗がやってみなさい。一度やってみればきっと分かるはずだ。さぁ新しいカッターナイフ買ってきたからこの野良猫の首を切り裂いてみなさい。最初は暴れるかもしれないがすぐにおとなしくなるから大丈夫」
最初はそんな事は出来ないと首を横に降るが、父は引き下がらずこちらをじっと見つめ続ける。
蓮斗は目を閉じ吸い慣れてしまった死臭が染み込んだ空気を吸い、ゆっくりと吐くと決意めいた眼つきで、未開封のカッターナイフを開け刃を数センチだけ出すとカッターナイフを利き手である右手で握る。
「父さん…俺…やるよ…。殺すよ…」
「おお!やっと父さんを理解してくれたか!父さんはうれ……」
父の歓喜の声は最後まで言わせてもらえず、その口は蓮斗の左手に塞がれた。
一瞬の出来事に父はよろけ、蓮斗に押し倒された。
父がこの状況を理解する頃には子猫に向けられると思っていたカッターナイフの刃は自分の首に押し付けられた。
「さよなら父さん…」
蓮斗は父に最後の別れを告げると、抵抗される前にその首を切り裂く。
父の首には一つ赤い線が入れられそこからダラダラと血が流れ出した。
それが致命傷にならなかったのか父は首を押さえ、こちらを睨みつけてくる。
その目には実の息子に殺されかけている事への悲しみと言うより憎しみの念が感じられた。
蓮斗は苦しむ父の首に何度も何度もカッターナイフで切りつけ続けた。
こうする事はに前から覚悟していた事の筈なのに蓮斗の目からは涙が出てきてしまう。
今まで多くの罪を犯してきた父とは言え、肉親の命を奪うのはこんなにも胸が苦しくなることなのか。
「うああああ!」
カッターナイフの刃が全部折れる頃には父の体は冷たくなりピクリとも動かなくなっていた。
初めて人を殺した事、実の父親を殺した事への抑えていた罪悪感が一気に来たのか胃が絞られるような痛みを感じる。息も荒くなってくなってきた。
「ミー…」
そうしていると傷だらけの白い子猫は足を引きずりこちらによって来てくれた。
その鳴き声は何となく自分を慰めているようで少しだけ落ち着けたような気がする。
「とにかくまずはここから出なくちゃ」
「本当に出ていっていいのか?」
蓮斗は子猫を抱きかかえ鉄扉から出ていこうとすると暗闇から、聞き慣れない男の声がする。
「誰だ!いつからそこに!」
蓮斗は鉄扉を勢いよく開け部屋全体を照らすと、壁によしかかる全身黒い鎧に身に纏った男の姿があった。
「まずは質問に答えろ。お前はここを出ていってもいいのか?」
ここが何処か分からないが父の所有地である事は確か。父が鍵を閉め忘れたのか?。
いや、こいつは部屋の奥にいた。
この部屋を唯一出入りできる鉄扉の近くにいた俺に気づかれずあそこにいるのはおかしい。
そもそも黒い鎧来ていること自体がおかしい。
考えれば考えるほどこの鎧の男に対しての疑問は絶えないが、今はこんな奴の話を聞いていられる程暇じゃない。
「俺は早くこの部屋から出て行く。早くこの子猫を病院まで連れて行かないと死んでしまうからな!」
「そうか…なら…」
黒い鎧の男は瞬間移動でもしたかのように急に蓮斗らの前まで移動すると、子猫に手をかざし黒い霧のような物を浴びせた。
「ニャーニャー」
すると子猫は蓮斗の腕から降り、さっきまであんなに弱っていたとは思えない程に、部屋の外にいたゴキブリを追いかけ出した。
「もうあの子猫が死ぬ事は無い。これでお前も少しは冷静に考えられるだろ」
「俺は自首する。実の父を殺したんだ当然だろ」
蓮斗は自分の罪の重さを十分に理解しているのもあり、自首すると言い続けていると鎧の男の声色変わった。
「お前は今までいくつもの命を救えるかもしれないのにただ見てるだけだった。父が生き物を殺しているのを実は心の中では楽しんでいたんじゃないのか!だから母親殺しも動物殺しも全て死んだ父親に押し付けて自分はたった一つの罪だけを背負うつもりなんじゃないのか!」
「違う!今日会った不法侵入者に何が分かる!そんな事を言うために来たんならさっさと出てけ!」
「お前は罪深い」
黒い鎧の男は青い光の玉を手から出現させると、蓮斗が持っているカッターナイフをその光に包みカッターナイフの形を変えていく。
青い光が収まるとカッターナイフには円上の画面が付き、色は白色染まり青色の線が引かれた。
「何だこれ?お前今何をした!」
「そう騒ぐな。この床や壁の一部にされた者達の為にもお前は罪を償うべきだ」
黒い鎧の男はそう言うと、何も無い空間を蹴り上げる。するとその空間に不自然な亀裂の穴ができ、その向こうからは緑色の木々が見える。
「この世界じゃお前は父親殺しの罪しか償えない。なら別の世界に行けばいい。お前だって異世界くらい知ってるよな」
明らかに非現実的な事がこの短時間の間に起こり多少混乱したが、何とか心を落ち着かせる。
「モンスターとか魔法がある世界だろ」
「さっきお前のカッターナイフを異世界で戦える武器にした。それを持って異世界に行け」
蓮斗は変化したナイフを見つめると、鎧の男へ向けて拳を振るう。
鎧の男は避けようともせず拳を受けた。
「さっきから何だ!俺の罪の話をしたかと思えば次は異世界に行け?ふざけるな!」
別に異世界に行けだのわけのわからない事を言っているからこんな行動をとったわけではない。
ただこの3ヶ月間の間に父が殺し見せつけられてきた生き物達を救えなかった。
ただ見ているだけで行動に移さなかった自分への行動だった。
「俺だって救いたかったあの動物達も母さんも、でもいつしかそんな事は思わなくなっていていまったんだ」
「そうそれがお前の罪だ」
「あんたが何を考えてどうしてこんな事が出来るかなんて俺には分からない。でも一つだけ分かったことがある」
「ほぉ何だ?。その分かった事ってのは」
「あんたの言う通りこの世界じゃ父親殺しの罪しか償えない」
鎧の男は何も言わず首を縦に降るだけだった。
「今まで見捨ててきた母さんや動物達の為への罪を償うためにやる事は一つ!」
「で?その方法は?」
「父さんみたいな命を嘲笑う奴らをこの手で殺す事だ!それを邪魔する奴も全員だ!。でもこの世界でそれをやればすぐに捕まる。それだけは阻止しないといけない」
蓮斗の答えに鎧の男は更に首を縦に降る。
「確かお前はこのカッターナイフを戦えるようにしたって言ったよな。これを使えば俺の目的は果たせるか?」
「無理だな今の状態のそれを使っても一人や二人殺す事しか出来ない。でも異世界でお前自身経験を積みその武器の力を最大限に使いこなす事が出来ればたった数日でお前の目的は果たせる」
「なら…異世界だろうが地獄だろうが行ってやる」
「それでいい…」
蓮斗は父の履いていた靴を履くと亀裂の中に片足だけ入れてみた。
足には草の感触が感じられる。
一気に異世界への亀裂の中に全身を入れると、亀裂は瞬時に閉じていき森の青臭い空気が、鼻から全身に行き渡る感じがする。
辺りを見回すと空には羽を持ったトカゲのような生き物、地面にはスライムが跳ねまわっており明らかに自分がいた世界とは違うことが分かる。
次回から戦闘が開始されます。
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