魔王の剣を担ぐ俺。目の前には片腕を落とされた四天王。四天王は泣いていた。
「ほ、ほら見ろっ! 何が仲間に入りたいだっ! そんな奴がこれから仲間になろうって奴の腕を落とすか!?」
しかし仲間の魔族たちは呆れていた。
「あんたもたまにやってるじゃないっすか」
「そっすよ。俺なんてこの前前歯いかれたし」
「お、お前ら……!」
門を守っていた魔族たちは四天王の泣き叫ぶ様を見てスッキリとした表情だった。
「だから治してやるって言ってんだろうがよー。仲間に入れてくれよー」
「断るっ!!」
「あぁん!? 次はどこを落として欲しいんだ?」
「鬼畜過ぎるっ!?」
「「「まぁ、待て」」」
「ん?」
城から騒ぎを聞きつけた残る三人の四天王がやってきた。一応紹介しておいてやるか、
まずこの両腕のない男。こいつは口ばっかりの四天王最弱の性悪。名を【リベラウス】と言う。トカゲに似ている。
次に髪が蛇になっている女。名を【デュール】と言う。必殺技は魔眼。視線を合わせた相手を石に変えてしまう危険な奴だ。しかも自分は石化耐性持ちで鏡を使って勝つなんて単純な方法では倒せない強敵だ。
三人目は大悪魔【ガンニーニ】。魔法とは違う魔術をあやつる強敵だ。しかもかなり知恵が回る。魔王軍の参謀を担っていた。
最後に四天王最強の男。その強さは魔王に匹敵する。今は人の姿をしているが、その正体は邪竜【ウロボロス】。身体能力、頭脳、人望、そのほとんどが魔王と同格であり、今一番魔王に近いと言われている。
ウロボロスが俺に話し掛けてきた。
「仲間に入りたいそうだな?」
「ああ、理由はトカゲから聞いてくれ」
「ふむ」
ウロボロスはリベラウスから事情を聞き出している。その間に今度はデュールが俺に話し掛けてきた。
「久しぶりじゃない。まさか私に会いに?」
こいつを倒したのは俺だ。【全状態異常無効】を持つ俺なら石化に耐えられる。その時からだ。視線を交わすたびにこいつは頬を赤く染め、自分を弱く見せ始めたのは。
「私をしっかり見つめてくれたのはあなただけよ……。これは運命なのっ! 仲間になりたいのよね? もちろん私は大歓迎よっ! さあ、私の部屋に行きましょう!」
「えっ!? あ、ちょっ……!?」
デュールは俺の腕に抱きつき物凄い力で引っ張って行こうとしている。
「デュールさん、少し落ち着きなさい。まだウロボロス様の許可が出てませんよ」
「許可なんて必要ないわ! 私が責任を持って飼うもの!」
ペットか俺は。
そこで事情を聞き終わったウロボロスが口を開いた。
「ユウキ・アイカワ。事情は聞いた。だが魔王の封印を解除する必要はない」
「……ほうほう。なぜ?」
「それは次の魔王がお前になるからだ。私の血を飲め、ユウキ・アイカワ。それでお前は正真正銘魔族の仲間入りだ。飲めぬならこの話はなかった事になり、今すぐここから消えてもらう。さあ、どうする? ユウキ・アイカワ」
邪竜の血を飲めば魔族の仲間入り。晴れて人間とはオサラバってわけか。
俺は悩んだ。どうせ元いた世界には帰れないのだろうし、五年以上行方不明のままだ。しかも俺は施設暮らし。誰も探すような人などいない。別にここで人間やめても困る事はないし、王国の奴らに復讐出来るなら魔族になっても良いかもしれない。
俺はウロボロスに向かってこう言った。
「血をくれ。喜んで魔族になる」
「ほう? 魔族になると言う事は生まれ変わると言う事だ。当然勇者の技は使えなくなる。それに、レベルもリセットされるだろう。それでも飲むか?」
「ああ、早くよこせ」
別に勇者の技なんて使えなくなった所で何も困らない。俺が召喚された際に付与されたスキルさえあれば何一つ不自由はしないだろう。
「……上を向き口を開けろ、ユウキ・アイカワ」
「こうか?」
ウロボロスは手首を切り、俺の口に血を流し込んだ。
「ああ、言い忘れていたが私の血を飲んでの魔族転生はかなりの苦痛と渇きを伴う。デュール、面倒を見てやれ」
「任せて! さあユウキ、私の部屋に行きましょう!」
「ちょっ……まっ……ぐぅぅぅぅぅっ!!」
ウロボロスの血が喉を通り胃から身体に染み渡る。それと同時に強烈な倦怠感と喉の渇きが俺に襲い掛かってきた。
「く……そっ……! もっと早く……言えっ! あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「た、大変っ! ユウキ、行くわよっ!」
俺はデュールに部屋へと連れていかれ、一晩中色々された。別に嫌だったわけじゃない。デュールは魔族だが美しい。身体も主張が激しく悪くない。
「明日には魔族の仲間入りね、ユウキ……。ようこそ、魔王軍へ」
「がっ……はっ……はぁっはぁっ……!」
久しぶりに温もりを感じつつ清潔なベッドに横になった俺は微睡む意識に任せ眠りに就いた。
そしてその翌日。俺は喉の渇きと暑さによって目を覚ました。
「あ、暑い……。み、水……水……くれ……」
「あ、起きた? 水が欲しいのね。待ってて」
そう言い、デュールは何を思ったか水を口に含み、俺に口移しで水を飲ませ始めた。
「ふふっ、まだ動けないから仕方ないわよね? はい、もう一回」
「んぶっ……」
手段はアレだが今は水が欲しくてたまらない。いくら飲んでも全然足りないくらい喉が乾いている。俺はもっと水が欲しくてつい舌を動かしてしまった。
「あ、ダメよぉ……。そんなに刺激されたら発情しちゃうわ……」
「い、いいから水よこせっ……!」
「うふふ、はいど~ぞ」
俺はデュールにされるがまま、ひたすら喉の渇きを満たすため、デュールと口唇を重ね続けるのであった。
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