X月X日 午前十時起床。
いつも通り洗面台に向かい洗顔と歯磨きをし、最低限度の身だしなみを整える。
朝食は、冷蔵庫にある物を適当に選んで食べる。今日の献立は、昨日の夜の残り物にした。
「あぁ、つかれたな」
何をしたわけでもないのに、毎回口から出る言葉はこの言葉一択だ。
僕なりの朝のルーティンを終えた後、水の入ったグラスを片手にソファーに寝転がる。そのあとは、ただただ時間を潰すだけの一日が僕の生きる一日である。
ふと窓のカーテンを開け空を見上げた。
「綺麗な雲だな」
「あ、さっきそこにいた雲はどこにいった」
最初はそんなどうでもいいことを心の中で考えていた。
「あぁ、死にたいな」
その言葉は、口から自然と出た。
雲に浸っていたのに、いきなり自殺願望だなんて馬鹿馬鹿しい。
ただ、あまりにも自然に口から出た言葉を僕は忘れられなかった。
昼食をとる時も、夕食の時も僕の脳裏には、「死にたい」という言葉が焼き付いて離れなかった。
もしかしたら、僕は本当に死にたいのかもしれない。精神病かなにかなのだろうか。
気付いたら僕の検索エンジンの履歴は、すべて自殺関連の内容だった。
僕は、本当に死にたいのだろうか。
死にたいとするならば、果たしてそれはなぜなのか。
頭をフル回転しながら考えた。
行き着いた先は、生きる意味がないという理由だった。
たしかによくよく考えてみれば、僕は生きている意味がない。
雨風を防げる家もある。
快適な睡眠をとれる布団もある。
なんなら、家族にも友人にも恵まれている。
では、なぜ死にたいのか。
簡潔に言うと、これらには生きる意味がないからだ。
生きるための条件には最適なのかもしれないが、生きる意味という意味では、圧倒的に何かが欠如している。
「やっぱり、死にたいかも」
この瞬間で僕の中の何かが変わった。
僕は、死にたいんだ。
そう考えたら、心にあった何かが軽くなった。
僕の知らない何かが居座っていたみたいだ。
そう考えたら、僕の行動は早い。
意外かもしれないが、僕は即決断即行動の部類だ。
さっそく自殺について調べた。
内心とても楽しかった。
さっきまで雲について考えていたのが嘘かのように、胸が高鳴った。
自殺について調べていくうちに、もっとリアルな世界を見たくなった僕はSNSを作成した。
僕には新境地だった。
もちろん自殺自体が新境地なのだが。
後々、めんどうになることを恐れて適当に偽名を使った。
そして、自殺志願者を募る内容のものに片っ端から反応した。
反応するだけでは、意味がないとも感じた。
試しに、僕自身も自殺志願者を募ってみた。
一時間後
一通のダイレクトメールが届いた――。
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