僕が自殺志願者を募ってから早一時間が経過した。
ピコン。
聞きなれない音と共にそれはやってきた。
ダイレクトメールの通知が、一件と表示されていた。
「あ、本当に来るんだ。」
僕はさっそく来ていたダイレクトメールを開いた。
「一緒に死にませんか」
正直本当に来るものだとは思っていなかったため驚いた。
世の中にはこんな簡単に自殺する人がいるのか、と考えていた時もう一通連続して届いた。
「性別は、女です」
女性も自殺するものなのか。
何が原因で彼女は自殺したいのだろうか。
ちょっとした好奇心で僕は、
「なぜ自殺したいのですか」
そう送ってしまった。
案の定結果は既読無視だった。
あぁ、こういう事を聞くのはナンセンスなのか。
学ばなくてもいいことを、僕は学んでしまった。
それから、しばらくまっても自殺志願者は現れなかった。
意外と少ないものなのか。
それともなにか条件が合致していないとだめなのか。
無知な僕はとりあえず自殺方法を記す事にした。
僕の検索エンジンの履歴は再び、自殺関連一色になった。
綺麗に死ぬ方法。
苦しく死なない方法。
迷惑をかけない死に方。
いろいろなものを見漁った。
そんな中、自殺方法がいくつも紹介されているサイトを見つけた。
「これなら簡単に、手間取らず死ねるだろう」
自殺方法を決めた僕は、さっそく改めて自殺志願者を募った。
自殺志願者からの反応が多いものを見るとすべてが、「苦しまないで死ねます」と書かれた物だった。
みんな死にたいのに、苦しんで死ぬのは嫌なのか、不思議なもんだな。
僕はそう思いながらも、
「苦しまないで死ねます」
と記し自殺志願者を募った。
前回とは違い、すぐに反応がきた。
ダイレクトメールの通知は時間が経てば経つほど、二通三通と溜まっていった。たしかな手ごたえを感じた。
一時間が経過した頃、通知は10件に溜まっていた。
まさかこんなにくるとは思っていなかった事もあり、とても驚いた。
そしてなにか罪を犯しているのではないか、という気持ちになった。
待たせるのも悪いと感じた僕は、さっそくダイレクトメールを開いた。
ダイレクトメールの相手は、ほとんどが名無しだった。
偽名を使用している僕が言えたことではないが、やっぱり名前が無い人は信用できない。
ただ一緒に死ぬだけなのかもしれないが、一応人生を一緒に終えるものとして、信用は不可欠だ。
内容もすべて目を通した。
一時間待ったにも関わらず、本気で自殺したいと考えている人はいないみたいだった。
どうやったら綺麗に死ねますか。
苦しまずに死ぬ方法知りたいです。
ほとんどがそんな内容で、中には誹謗中傷ともとれるものもあった。
なんだ結局自殺したい人なんて僕だけじゃないか。
自殺志願者を本気で探していた僕の時間を返してくれ。
そんな気分だった。
馬鹿らしくなった僕は、布団に寝転がりそのまま夢の中におちてしまった。
翌朝、何気なく携帯を開くと一件と表示された通知が届いていた――――。
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