するとフスタさんも通信してきました。
【いまForcibly Connectorって言ったよね?】
【言いましたね……】
【ちくしょう! あれが厄ネタかーっ!】
【……どうします?】
【そっちのエンジニアはなんて?】
頭の中から意識を戻すと、さっきの若い男性を中心にエンジニアさんたちが集まって、口々に意見を言っているのが聞こえてきます。
「実害は出てねえんだよな? データ吸い出されたとか」
「ええ、このアドレスと謎に通信を確立してるだけですね。データのやり取りも特になし。他のアプリとかハードにも、今のところ何の影響も及ぼしてません」
「なんだそりゃ……不気味だな。バックドアか……? だとしたらいつどこで?」
「プログラムの作成は二週間前だって……」
「二週間……まさかあの時? いやそんなまさかな……」
【って感じですね】
【ふむふむなるほど……って、んん?】
【ど、どうしました?】
頭の中でいきなり素っ頓狂な声を上げたフスタさん。
続きを促してみると、【いやね……】と歯切れの悪い返事をしました。何か問題が起きたのかな、とぼんやり思います。
そして。
ちょっとの溜めを置いて伝えられてきたその答えは、何かどころではない衝撃的なものでした。
【……いやね、何故かお客さん全員から魔力反応が検知されてて。おかしいなーって……】
【???】
いやそれは本当におかしいというか、訳が分からないというか。
何故お客さんから魔力反応が? 私たち以外に魔法使いはいなかったはずじゃ?
それに全員からって……。何がどうなったらそんなことが起こるの?
【言っとくけどこっちのシステムの不具合とかじゃないよ。今朝点検したばっかだもの……ってうわぁ!?】
こ、今度は何?
さっきからなんだか事態が急展開してて、そろそろ頭がついていけなくなりそうなんですけど……。
私はただ困惑して立ち尽くし、フスタさんの次の言葉を待つしか出来ませんでした。
……そして次に聞こえてきた声は、フスタさんのものではありませんでした。
【二人とも聞こえますか? 月島1佐です】
その生真面目そうな女声はミナミさんのものでした。
ただしその声色はいつもの理知的で落ち着いたそれではなく、非常に切迫したような声。
聞く者の心を急き立てるような、余裕の一切感じられないものでした。
【いいですか二人とも、今から僕が臨時にオペレートします。事態は急を要しますので】
【【え?? あ、はい……??】】
【というわけで端的に言います。今すぐあのディープ・マーメイドを物理的に破壊してください】
了解! ……ってええっ!?
物理的に破壊……!? なんでまたそんないきなり?
というか、臨時とか急を要するとか、一体なにを言っているのか分かりません。
もう私の頭は完璧に置いていかれてました。今なにが起きているのか、一度ちゃんと整理してもらわないと、もう何がなんだか……。
【え、えっとぉ、そのぅ、ミナミさん?】
【なんですかマリナさん】
【ちょっと一回、深呼吸したほうがいいんじゃないかなーって……】
【ンなことしてる場合じゃ──ああいや、そうですね。すみません……】
そして通信の向こうで吸って、吐いて、また吸って、吐いて……としてから、ミナミさんは戻ってきます。次に聞こえてきたミナミさんの声は、私たちのよく知る柔和で落ち着いた女性のものでした。
【落ち着きました。えっとですね……まず一番大事なことから申し上げますが、今お二人が直面しているのはかなりヤバい事態です。かなりヤバいので僕が直接指揮します】
【【かなりヤバい??】】
【ええそれはもうゲロヤバです。どれぐらいヤバいかって言いますと、テロリストが反応兵器を持っているぐらいヤバいです】
は──
【【反応兵器ぃ!?】】
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