魔法少女のアルビレオ

─私の幼馴染が〈世界を滅ぼす力〉を持ってた話─
射水航
射水航

1-6 急展開

公開日時: 2021年10月20日(水) 19:20
文字数:1,508

 するとフスタさんも通信してきました。

 

【いまForcibly Connectorって言ったよね?】

【言いましたね……】

【ちくしょう! あれが厄ネタかーっ!】

【……どうします?】

【そっちのエンジニアはなんて?】

 

 頭の中から意識を戻すと、さっきの若い男性を中心にエンジニアさんたちが集まって、口々に意見を言っているのが聞こえてきます。

 

「実害は出てねえんだよな? データ吸い出されたとか」

「ええ、このアドレスと謎に通信を確立してるだけですね。データのやり取りも特になし。他のアプリとかハードにも、今のところ何の影響も及ぼしてません」

「なんだそりゃ……不気味だな。バックドアか……? だとしたらいつどこで?」

「プログラムの作成は二週間前だって……」

「二週間……まさかあの時? いやそんなまさかな……」

 

【って感じですね】

【ふむふむなるほど……って、んん?】

【ど、どうしました?】

 

 頭の中でいきなり素っ頓狂な声を上げたフスタさん。

 続きを促してみると、【いやね……】と歯切れの悪い返事をしました。何か問題が起きたのかな、とぼんやり思います。

 

 そして。

 ちょっとの溜めを置いて伝えられてきたその答えは、何かどころではない衝撃的なものでした。

 

【……いやね、何故かお客さん全員から魔力反応が検知されてて。おかしいなーって……】

【???】

 

 いやそれは本当におかしいというか、訳が分からないというか。

 何故お客さんから魔力反応が? 私たち以外に魔法使いはいなかったはずじゃ?

 それに全員からって……。何がどうなったらそんなことが起こるの?

 

【言っとくけどこっちのシステムの不具合とかじゃないよ。今朝点検したばっかだもの……ってうわぁ!?】

 

 こ、今度は何?

 さっきからなんだか事態が急展開してて、そろそろ頭がついていけなくなりそうなんですけど……。

 私はただ困惑して立ち尽くし、フスタさんの次の言葉を待つしか出来ませんでした。

 


 

 ……そして次に聞こえてきた声は、フスタさんのものではありませんでした。

 

【二人とも聞こえますか? 月島1佐です】

 

 その生真面目そうな女声はミナミさんのものでした。

 ただしその声色はいつもの理知的で落ち着いたそれではなく、非常に切迫したような声。

 聞く者の心を急き立てるような、余裕の一切感じられないものでした。

 

【いいですか二人とも、今から僕が臨時にオペレートします。事態は急を要しますので】

【【え?? あ、はい……??】】

【というわけで端的に言います。今すぐあのディープ・マーメイドを物理的に破壊してください】

 

 了解! ……ってええっ!?

 物理的に破壊……!? なんでまたそんないきなり?

 というか、臨時とか急を要するとか、一体なにを言っているのか分かりません。

 もう私の頭は完璧に置いていかれてました。今なにが起きているのか、一度ちゃんと整理してもらわないと、もう何がなんだか……。

 

【え、えっとぉ、そのぅ、ミナミさん?】

【なんですかマリナさん】

【ちょっと一回、深呼吸したほうがいいんじゃないかなーって……】

【ンなことしてる場合じゃ──ああいや、そうですね。すみません……】

 

 そして通信の向こうで吸って、吐いて、また吸って、吐いて……としてから、ミナミさんは戻ってきます。次に聞こえてきたミナミさんの声は、私たちのよく知る柔和で落ち着いた女性のものでした。

 

【落ち着きました。えっとですね……まず一番大事なことから申し上げますが、今お二人が直面しているのはかなりヤバい事態です。かなりヤバいので僕が直接指揮します】

【【かなりヤバい??】】

【ええそれはもうゲロヤバです。どれぐらいヤバいかって言いますと、テロリストが反応兵器を持っているぐらいヤバいです】

 

 は──

 

【【反応兵器ぃ!?】】

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