それを踏まえて、だったら何故アイドルの完コピなんかやっているのか。
趣味とかではありませんよ。れっきとしたANNAの魔法使いとしての仕事のためです。
次の任務へ出撃するのに、アイドルになりすます必要があるからなんです。
今から数日前のこと。
私たちの上官であるミナミさんが、私たちを呼び出して言いました。
『そろそろ一度、自分たちだけで現場へ出てもらおうと思いまして』
知っての通り、現場へ出たこと自体はもうありました。内田を捕まえたのもそうですし、その後も何人か魔法テロリストを捕まえています。
ただしナツミ教官と一緒に、ですが。基本は私とマリナだけだけど、危ないところは教官が手助けしてくれていたのです。
それを今度は完全に教官抜きにしてみようというわけです。『要はチャリの補助輪を外してみようってことです』とミナミさんは付け足しました。
『でもって、出てもらいたい現場はこれです』
指パッチンを合図に表示されたホログラム。それはイベントのパンフレットでした。
で、そこに書いてあったのがこれ。
『『新人アイドル限定の……フェス??』』
『ええ。駆け出しアイドルがトップを目指すための登竜門と言われていて、今トップアイドルと言われてる人たちはみんなこのフェスを通ってきてます。まあそれはいいんですが、実は協賛企業の中に怪しいヤツがいるんですよ。そのページの一番下の〈ロケットスター・テクノロジーズ〉って会社、聞いたことあります?』
マリナが食い気味に答えました。
『月面基地の建設作業用ロボット作った会社、でしたっけ?』
『その通り。〈ロケットスター〉は新進気鋭のスタートアップで、重作業や危険な作業を支援・代行してくれる自律ロボットが主な商品ですね。広告用に女の子型のロボットを保有してまして、フェスの運営資金を援助する代わりに出演枠をもらい、そのロボットで自社の宣伝をすることになっているようです』
『へー……それがどうあやしいんですか?』
『ここ最近、会社にネオ・バプテストの魔法使いが出入りしていました』
『『!!』』
『捕まえて話を聞いたところ、そいつ自身はただの使い走りで、肝心なことは何も知らないようでしたが。それでも時期から言って、連中とロケットスターが共謀してフェスで何かしようとしている可能性は高いわけです』
『なるほど……つまりわたしたちはフェスへ潜って、そいつらがなにか悪いことしないか見張ってればいいわけですね!』
『そんなところです。それでフェスへ潜る方法なんですが……』
『『なんですが??』』
『お二人には、このアイドルユニットの替え玉になっていただこうかと』
『『……えっ??』』
『だってほら、見た目が超そっくりですから。声も似ていましたし。ちょっとメイクすれば見分けなんてつきませんよ絶対』
『『えっ……ええ~っっ!?』』
とまあこういうわけで。
私たちはアイドルユニット〈アルビレオ☆★〉になりすますことになったのです。
ちょっと前に「私うまくやっていける気がする!」みたいなこと言ったばかりだけど。
これはやっぱりちょっと、不安かなあ。
アイドルとかできるのかな私……。
まあ、〈できる/できない〉じゃなくて〈やる〉しかないんだけど。
これからマリナを護っていくには現場での経験を積み重ねて、もっと強くならなくちゃいけないんです。
だからこそ、努力してモノにしなきゃ……!
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