あとは野となれ山となれ~勘当されて使用人に落とされた伯爵令嬢は虐待される前に逃げ出します

空間魔法で生き抜きます
真理亜
真理亜

初めての亜空間

公開日時: 2021年5月24日(月) 00:11
文字数:1,020

 三人の輩は火を焚いて野宿の準備を始めている。


 やがて準備が整ったのか、私達に話し掛けて来た。


「お~い! お嬢ちゃん達! 夕食の用意が出来たから降りて来いよ~! 一緒に食おうぜい!」


 私は即座に答える。


「結構です。私達は自分達で用意してありますのでお構い無く」


「なんだよ~! せっかく用意したんだから食ってくれよ~! 火も焚いてるから温かいぜい!」


 しつこい! またも私は即座に答える。


「お気持ちだけで十分です。それでは」


 そう言って私は会話を打ち切る。やっと諦めたようだ。


「あ、あの、カリナさん!? 夕食ってどこに!?」


 マリス様が不安げに聞いてくる。無理もないね。だって私、手ブラだもんね。だから私はマリス様を安心させるように体に触れて、


「マリス様、ちょっと失礼しますね」 


 そう言って私はマリス様を亜空間に引き込んだ。


「えっ!? えぇっ!? な、なにこれ!? なにこれ!? ここどこ!? ここどこなの!?」


 マリス様がパニックに陥った。初めて亜空間に来た人の正しい反応だね。


「落ち着いて下さい。ここは私が魔法で作り上げた亜空間です。私は空間魔法使いなんで、このような亜空間を展開することが出来るんです。ほら、ここから外が見えますから見てみて下さい」


 私は亜空間の一部を可視化して外の様子を見せる。


「凄いですね...私、初めて見ました...」


 マリス様が目を丸くしている。


「でしょうね。希少な魔法ですから。私も他に使える人を見たことありません」


「そうなんですね...」


「私はこの能力のお陰で、護衛任務を失敗したことがありません。信用して頂けましたか?」


「はい! カリナさんにお願いして正解でした!」


 マリス様の目が輝いている。良かった良かった。信じてくれたよ。すると、


「クウ~」

  

 ホッとしたのか、マリス様のお腹が可愛い音を立てた。途端、マリス様のお顔が真っ赤になった。


「夕食にしましょうね」


「はい...」


 私は亜空間に保管しておいた保存の利く食料と水を出した。


「すいません。火が使えないので、こんなものしかないんです」


「い、いえいえ! これで十分です! ありがとうございます!」


 私達は保存食のみの味気ない夕食を済ませた。


「マリス様、今夜はここで休みましょう。あいつらは信用ならないんで、同じ場所で寝るのは危険ですから」


 私はマリス様に、これまた亜空間に保管しておいた毛布を渡しながらそう言った。


「は、はい。カリナさんの言う通りにします」 


「ありがとうございます」


 こうして私達は亜空間で夜を過ごした。

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