怪談∞(エイト)

二階堂次郎
二階堂次郎

「全身鏡」

公開日時: 2020年9月14日(月) 20:00
文字数:397

友人のAさんはいわゆる事故物件に住んでいる。

と言っても、あらかじめ不動産会社から説明などなかったし、それほど大したことも起こらないそうなのだが。


Aさんが朝起きると、部屋にある全身鏡の前にスーツ姿の男性が立っていることがあるそうだ。

男性は鏡を覗き込みながら、自分のネクタイを閉めている。

だが、鏡には男性の姿は映っていない。

Aさんが「おい」だとか、何か声を出すとスーツ姿の男性も「あ」と声を上げて、そのままスッと消える。

こういったことが2ヶ月に1度くらいあるのだという。


「最初見た時は泥棒かと思って大騒ぎしたけど、今だとなんとも思わなくなった」


とAさん。


1度、全身鏡に布をかけて使えなくしたことがあったそうなのだが、それだと洗面所の方の鏡に出て、歯を磨きに行くときにびっくりするので、それ以来布はかけていないのだという。


特に害もないのでそのままにしているらしい。

Aさんは今でもその部屋に住んでいる。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート