第9夜
東京都に住むOさんが高校生の頃に体験した話。
ある日の放課後、Oさんは100円ショップでアルバイトをしていた。品出しも終わり、客もいないのでレジカウンターでぼーっとしていると、入口のところにおじいさんがいるのがわかった。
直感で、ああ、この人はこの世のものではない、と思ったそうだ。
今まで心霊体験など全くしてこなかったOさんだったが、何故だか確信できたらしい。
おじいさんは帽子を被り、腰を曲げて、杖をついた状態で、ずっと入り口に立っている。
Oさんは声をかけようか迷った。マニュアルでは、身体の不自由な人がじっとしていたら声をかけて、必要であればお手伝いをしなければならないらしい。もしもこのおじいさんが幽霊の類いではなかったら大変だ。
しかしOさんは、恐怖で体が動かなかったという。
そうこうしているうちに、いつのまにかおじいさんは入り口の前から消えていた。
入店時にも退店時にも、自動ドアが開く音や、カランカランという鈴の音は聞こえなかった。
やはりあの人はこの世のものではなかったのだと、Oさんはほっと胸を撫で下ろした。
そうして、アルバイトの時間も終わり、電車に乗って帰ろうというとき、駅のホームで、またあのおじいさんを見かけた。
やはり先ほどの服装で、帽子を被り、腰を曲げ、杖をついている。
Oさんはギョッとしたが、気付いたことがバレてはいけないような気がして、知らぬふりをしておじいさんの横を通り過ぎることにした。
すると、通り抜け際におじいさんがしわがれた声で
「ちくしょぅ。ちくしょぅ」
と言うのが聞こえた。
Oさんはもう恐ろしくなって一心不乱でホームを走り抜け、おじいさんから距離を取った。
そして横目で、おじいさんが電車に乗らないのを確認し、ドアが閉まるタイミングを見計らって電車に飛び乗った。
そうして最寄り駅までの間、ずっとビクビクしながら車内を見渡して、あのおじいさんがついてきていないかを確認した。
念のためその後2回、電車を乗り換えて、なんとか最寄り駅に辿り着いた。
だがダメだった。Oさんはホームに降り立った瞬間に気づいたそうだ。あのおじいさんがついてきていると。
案の定、ホームにはおじいさんが杖をついて立っていた。
Oさんは全速力でおじいさんの横をすり抜け、改札へと向かった。
その際、またおじいさんが何かしわがれた声で言っていたらしいが、走るのに必死で、なんと言っていたかまではわからなかったそうだ。
とにかく、あれをこれ以上ついてこさせてはいけないと考え、Oさんは駅前のファミレスで一晩を明かしたのだそうだ。
その後、あのおじいさんを見かけることはなくなったそうだが、まもなく100円ショップのバイトは辞めたのだという。
こんばんエイト〜! 私です!
幽霊は見たことないけど不思議な体験はしたことがあります。
いずれはその体験もここでお話しできればと思います!
それでは、明日もまたこの時間にお会いできれば!
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