父さんは誰かが死ぬのを見るのが嫌だった。
僕も同じだった。
父さんの気持ちがわかるから、父さんの意志を継いで祓子の頭になったと思っていた。
でも、僕は本当のことなんて何もわかっていなかった。
祓子の頭になり、殺されていく人間をたくさん見てきた。
ああ、これが父さんが見てきた景色なんだ…と。
まるで、地獄だった。
人間の命がこんなにも簡単に奪われいくなんて…。
きっと、父さんも辛かったんだ。
だから、父さんは目の前にある命を守ろうとしたんだって。
父さんと同じ痛みを知っていく中で、僕も父さんみたいに目の前の命を守ろうと思った。
「唯人」
聞き慣れた声がして、唯人は声のする方を見た。
「父さん」
そこには穂高が立っていた。
「よく頑張ったな」
穂高は笑顔で言った。
「僕は、これで、みんなを守れたことになるのかな?」
「ああ。守れたさ。おまえは立派な祓子の頭だったさ」
「そうか。良かった」
唯人は嬉しそうに笑った。
「唯人。おまえを一人にして悪かったな。もう、一人にはしないからな」
穂高は唯人に手を差し伸べた。
「父さんと一緒にいられるの?」
「ああ。ずっと一緒だ」
穂高が穏やかに笑うと、唯人は嬉しそうに穂高の手を握った。
「さあ、行こう。唯人。これからは、ずっと一緒だ」
唯人は穂高に手をひかれ歩いていく。
眩い光に向かって。
その日、唯人は病室で息を引き取った。
一族の者や彼に助けられた者に囲まれて。
その顔は満ち足りて、とても安らかだった。
それはきっと守りたい命を守れたからに他ならない。
たくさんの命が失われていく絶望の中で、唯人は誰かの命を守ることを諦めなかった。
最後に自分の死が待っていたとしても。
奪われた命を助けられなかった痛みが、唯人をそうさせた。
もう、誰も死なせたくないと。
それが唯人の心からの願いだった。
体調不良が続き、中々続きが書けない中たくさんの人に読んでいただけて、本当に嬉しかったです。
他に執筆されている方に比べると大したことないのかもしれませんが、それでも読んでくれる人がいるというのは嬉しいことです。
最後まで読んでいただいた方、本当にありがとうございます。
これからも、作品は書き続けますが、本業との両立と疲労による体調不良から中々、続きが書けないこともあるかと思います。
それでも、私の書く作品を気に入っていただけるなら、今後も読んでいただけると嬉しいです。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!