少女がいた。美しかった。
すんなり伸びた肢体と、鼻梁の整った怜悧な容貌。月光に照らされたその姿は、さながら一挺の刃のようだった。
凛々しい短髪がはらりと払われると、柔らかな輝きが薄明かりに踊る。濡れたように妖しい光沢をもつ黒髪が、雪白の肌によく映えた。
細面のなかで一際目立つ漆黒の瞳は翳り、星の終焉の一欠片を閉じ籠める。黒い水面に映る白い円は小刻みに揺れ――やがて、輪郭を失う。
生気のない白黒の少女。自嘲と苦悩を湛えた唇から紡がれる鬱々とした独白は、この一言から始まった。
『愛する人に生きて欲しいと願うのは、罪ですか?』
――淡々と自らの過去を語る彼女は、その答えを既に知っているようだった。
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