スキルイータ

北きつね
北きつね

第二百九十九話

公開日時: 2023年11月12日(日) 12:09
文字数:3,316


 ゼーウ街に着くまで、ルートガーは抵抗していたが、決定は変えなかった。ルートガーに悪いが、ゼーウ街で、ゆっくりとデ・ゼーウの手伝いをして欲しい。


 ゼーウ街から、ダンジョンまではスムーズに移動が出来た。

 デ・ゼーウが手配を終わらせていて、俺たち6名はすんなりとダンジョンに入ることが出来た。


 カイとウミとライは、俺の側に居る。

 ダンジョンには、俺とイェレラとイェルンとロッホスとイェドーアとデ・ゼーウからのごり押しで、ファビアンが一緒に潜っている。


 ファビアン以外の4人には、ルートガーの”ツケ”で武器と防具を渡している。

 スキルカードは、防御系を主に渡している。気にしないで使うように言っているが、果たして使うか微妙な所だ。


 防御系のスキルカードは、レベル5やレベル6が多い。

 レベル5では、結界/障壁/防壁/耐性を、渡してある。レベル5なので、感覚では1万ほどの価値だ。

 レベル6は、硬化を渡している。殆どの物理攻撃が利かなくなる。


 他にも、索敵や探索も渡した。

 攻撃系のスキルカードは、自分が持っている物を使ってもらう事になった。


 ファビアンが後ろで、何か言っているが、スキルカードで命が助かるのなら、スキルカードを惜しむ理由はない。渡しておいて、使わなければあとで回収すればいい。俺が持っているのに、渡していなくて、命の危険があるほうが怖い。


 俺の従者ではないが、大切な仲間だ。


 低階層は、4人で戦わせる。

 これは、ルートガーとの約束だ。


 中層からは、相手を見て判断をする。


 フェビアンは、物資の搬送を担当する。戦えとは言っていない。物資を運んでくれるだけで助かる。


 ファビアンは、契約で縛らせてもらった。

 俺が使うスキルは、”他言無用”という契約だ。レベル7のスキルカードを使った。


 ダンジョンは、チアル大陸にあった物よりも難易度は低そうだ。


「ツクモ様」


「大丈夫だ。俺も、カイもウミもライもまだ戦っていない。余裕がある証拠だ」


 従者の4人だけで戦っても、十分に対応が出来ている。

 出て来る敵も、カイとウミなら簡単に対処ができる。後ろをライが警戒しているが、保険のような感じだ。


「そうですか?聞いた話では、10階層のセーフエリアまで行くのに、慣れたパーティーでも6日はかかると・・・」


 それは、ダンジョンの踏破に慣れていない者たちのパーティーだろう?

 この難易度なら、チアル大陸に居る者たちなら、3日程度だろう。早いパーティーなら2日もあれば十分だ。


「そうか?地図も貰っている。探索が目的ではないから、時間を掛けてもしょうがないだろう?」


「地図を持っていたとしても・・・。そうですね。探索が目的ではないので・・・」


 どこか納得が出来ていない様子だ。

 ファビアンには説明していないが、従者たちが使っている武器は、チアルダンジョンの下層でも通用する武器と防具だ。防具は、サイズの問題があって、揃いにはならなかったが、部位の防御だけでも対処ができるはずだ。


 戦闘では、大量に渡しているレベル3のスキルカードを使っている。

 効果は、レベルの高いカードほどではないが、オーバーキルの状態になってしまっている。


 レベル3でも、【体力強化】【攻撃力向上】【速度向上】【命中向上】を使えば、地力の差もあるので、簡単に倒せる。


 状態異常攻撃をしてくる魔物が出てきた時には、ライが【状態異常半減】を使って補助を行っているので、よほどのことが無ければ苦戦はしない。


 10階層までで、俺とカイとウミが手出しをした回数は0回だ。

 後方から来た魔物をライが倒したのが3回あっただけで、4人だけで対処が終わった。


 今は、10階層のセーフエリアで休憩をしている。


「ファビアン殿。階層主の戦闘後に11階層・・・。中階層に入りますが、どうしますか?」


 デ・ゼーウとの取り決めで、ファビアンは、10階層までは必ず連れて行くことになっていた。

 10階層より下の階層は、難易度も跳ね上がる(と、言われている)。必ず、ファビアンを守れる保証はない。ここから先は、自己責任だと話をしている。


「ツクモ様。20階層までご一緒しても?」


 ファビアンの狙いは解っている

 俺やカイやウミの戦闘を見たいのだろう。確かに、20階層まで進めば、俺たちが戦う場面もある。だろう。


「いいけど、守れる保証はないぞ?」


 自己責任を強調しておきたい。着いて来てもいい。契約で縛りを付けているから、スキルに関しては、報告ができない。先頭の様子で、スキルの類推はできるが、正式な物は解らないだろう。それに、スキルが解っても、対処ができないスキルも多い。あと、レベル7になれば、有効な枚数を俺たちが抑えているスキルカードも多い。対処は、不可能だろう。

 レベル7に対策を考えずに対応しようとしたら、レベル8のスキルカードが必要になってしまう。


「解っています。10階層までのご様子だと、大丈夫だと思いますが・・・」


 確かに、大丈夫だと思う。ファビアンの護衛をライが行えば、20階層どころか、最下層まで連れて行くことはできるだろう。

 でも、連れて行ったとしても、俺たちにメリットがない。デメリットも少ないが・・・。戦闘が始まったら、ライにファビアンを隔離してもらって、戦えば様子も見られない。ファビアンも安全。俺たちは何も困らない。

 でも、それなら、この階層で別れた方が楽だ。攻略の速度に違いが出て来る。


「そうだな。大丈夫だとは思うが、積極的に守らないぞ?いいのか?」


 もう一度、しっかりと話した方がいいだろう。俺たちが戦いだしたら、ファビアンが無防備になる。

 そのことに気が付いたら、自分が戦うことに辿り着くと考えた。


「はい」


 ダメだった。

 デ・ゼーウに知られたくなくない情報だけど、開示しておいた方がいいだろう。


「それから、帰りはどうする?」


 帰りを考えていないようだ。

 当然だな。セーフエリアは、階層主の部屋の前にある。そして、階層主を倒さなければ、次の階層には進めない。戻ってくるときには、階層主は存在しない。どんな理屈なのか解らないが、ダンジョンでは”そう”なっている。不思議に思っても、それが|理《こちわり》だ。

 だから、ファビアンは20階層のセーフエリアで待っていれば、帰りも俺たちと一緒に帰ることができると思ったのだろう。


「え?」


「10階層なら、誰かと一緒に地上に戻れる可能性はあるが、20階層だと難しいぞ?」


 しっかりと説明したほうがいいだろう。

 待っていれば大丈夫だというのは、攻略したあとの情報がないのだろう。


「ツクモ様たちは?」


「このダンジョンが、チアルダンジョンと同じなら、最下層に地上に戻る方法があるはずだ」


 このセーフエリアに来るまでの行程で、チアルダンジョンの話を何度も聞いてきたので、ファビアンの目的の一つに、チアルダンジョンの情報収集があるのだろう。希望通り、最下層の話を教えた。

 この|ダンジョン《名前は無い》がチアルダンジョンと同じである可能性は低い。

 しかし、ダンジョンが成長している。階層の雰囲気が変わっているという情報もあることから、ダンジョン・コアがあるのだろう。


 最下層に辿り着いて、最下層の階層主を倒しても、地上に戻る魔法陣が出なくても、ダンジョン・コアを支配するか、手元にダンジョン・コアに乗っ取らせれば、最下層から地上に向かう方法は準備ができる。


「・・・。ここから、地上に帰ります」


 ファビアンは、目を瞑って考えてから、地上に戻ると決断した。

 命との天秤では、命に傾くのは当然だ。それに、俺たちは攻略を目的としている。攻略されるまでに、20階層のセーフエリアで待ち続けると考えれば苦痛に感じるのだろう。食料の問題も発生する可能性もある。

 俺たちは、10階層のセーフエリアで食料を収納から取り出す所を見せている。スキル枠を利用しているが、スキルの情報なので、ファビアンに見せても大丈夫だと判断している。


「それがいいだろう」


 10階層の階層主と戦う前に、ファビアンと別れる事が決定した。

 11階層からは、俺とカイとウミも戦闘に参加する。4人が危ない時には、ライに隔離してもらう作戦に切り替える。


 さっさと攻略して、低階層に鉱山を設定しよう。

 あとの交渉は、ルートガーに任せれば安心だ。


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