スキルイータ

北きつね
北きつね

第百三十九話

公開日時: 2023年11月12日(日) 09:56
文字数:7,922


 ゼーウ街が動いた。

 この情報は、フードコートのオープンを見学するために集まっていた、行政官にも伝えられた。


 住民にさとられないように、フードコートを順次出て、迎賓館に集まるように指示を飛ばした。

 同時に、ワイバーン便を使って、ロングケープ区、パレスケープ区、パレスキャッスル区に向けて船が出港したという知らせを出した。3つの区に駐屯している部隊には、索敵範囲を広げることを命令として出している。


 準備段階で、海図の作成を行わせている。

 水深や海岸地形を利用した陸上からのスキル攻撃が可能になるだろう。今までは、船乗りたちの経験と勘で乗り切ってきたようだが、航海の安全のために作成を行わせた。


 海図に合わせて、港町に住んでいる年配者に”おとぎ話”や”伝承/言い伝え”なんかの話をまとめてもらって、俺に送ってもらった。


 港町で生まれ育った身なので、それらの伝承が単なる”与太話”ではない場合が多いのを知っている。各地の海沿いに水神様が祀られているのは、津波被害を恐れたからだ。そう考えれば、地形の変化も発生しているだろうが、地震や台風のときにその神社付近までは波が水が来る事を想像しなければならない。


 この世界でも同じ事が言えるのかはわからないが集めて見る価値があると思った。


 結果・・・同じ様に伝承で自然災害の事が伝えられていた。

 そして悪い意味で、予想があたっていた。伝承を無視するような作りに港が作られていた。改修工事の指示は出しているが、未来の災害・・・それも|伝承《与太話》を信じての改修指示になるので、現地の有力者からは反対の声と同時に嘲笑の声が伝えられた。


 それでも改修工事は強行した。既得権益だと思っている連中は、そのままにして、移動に賛同した者から順次移動を開始させた。その結果、1キロ近く内陸部に移動した事になる。津波対策で、壁の建築を行わせようかとも思ったが、強度計算に自信がなかったので、消波ブロックを作って散らす事にした。効果が有るかはわからない。もしかしたら逆効果かも知れないが、何もしないで被害が広がったら後悔するだろう。


 同時に、年配者から季節ごとの”大まかな”潮の流れを聞いた。

 海図に書き込んでおけば、危険な場所がわかりやすくなる上に、攻められた時の位置取りにも使える。


 報告が上がってきた、準備が間に合ったようだ。


 竜族を飛ばして、パレスキャッスルとパレスケープとロングケープの防衛軍の指揮官を呼び戻している。

 明日には到着するだろう。


 先程の情報が3日前だと考えると・・・。物資の搬入が早ければ1日。そうなると海に出て2日という事になる。

 波や潮から、この時期だと、10日ほどは見なければならないと言っているが、漁をするわけではない上に無茶をするかも知れない。半分と仮定すると・・・5日。既に2日が経過しているから、3日の猶予が有る。

 既に、各区の防衛軍には指示が出ているので、迎撃準備が整うのが遅くても3日後。ギリギリになってしまうだろうが、最終確認だけはしておきたい。索敵体制が整っていれば、最悪の事態は避けられるだろう。


 今日は、チアル街での会議になる。

 状況報告と、各SAやPAや道の駅及び各集落に対して情報開示を行うための会議になる。


 ルートガーが状況の説明と今後の予定を説明する。


 説明は、30分位で終わる予定だと聞いている。その後、質問を受け付けるのだが・・・。


「この作戦はチアル大陸にゼーウ街の者たちが上陸させない事だ」


 ルートガーの説明はこれで区切りになるようだ。

 確かに、表の作戦としては、これ以上話すことがない。


 第一弾と第二弾の作戦も説明した。

 詳細を聞いていなかった者から安堵の声が聞こえてくる。


 やはり、雰囲気で戦争が近づいていたことがわかっていたのだろう。噂話し程度にしか聞いていないと、悪い話の方が先に伝わってしまうのだろう。


「ルートガー殿。作戦はわかったが、私達は何をしたらいいのですか?」


 それは難しい。正直にいうと何も無いが答えになってしまう。


「もう既に作戦は始動しています。今は、3つの区に居るチアル軍が港を守りきれる事を信じてください。噂話など流れてくるかと思います。その場合にこの作戦の第一段階を説明してください」


「第一段階でいいのか?」

「直近は、第一段階でお願いします。作戦が第二段階に入りましたら、ワイバーン便で皆様にお伝えします。その後、チアル街の勝利をお伝えいたします」


 ルートガーの癖にかっこよくしめた。

 そこまで言い切られたら、質問も出にくいだろう。


 予想通り、質問の声が上がらなかった。


 それに、ルートガーの説明にもあったのだが、ゼーウ街の船団を港に接岸させるつもりはない。

 海の藻屑となるか、捕虜になる道しか残されていない。


 港には、竜族が2体?名?づつ張り付いてもらっている。

 包囲網を突破されたときには、沈めてもらうためだ。はっきり言ってチートだとは思うが交渉もしないで攻め込んできたのだ、そのくらいのチートは許してもらおう。


「ツクモ様。何か補足ありますか?」

「ない。ルートガー。それに、皆も、絶対に安全とは言わないが、安心してくれ、すでに相手の情報も掴んでいる。それだけでも、俺たちは有利な立場にある。その上、作戦で奴らを上回る。個々の能力はもちろん、連携でも俺たちは負けない。デ・ゼーウに俺たちに手を出した事を後悔させてやろう」


 ”おぉ!!”


 こんなしめでいいのか?と思ったが、皆が嬉しそうにしているので良かったのだろう。


 俺から、退場しないと皆が席を立つ事がない。


 俺は、横に座っているシロに声をかけて、玉座風になっている場所からバックヤードに抜ける。執務室への近道なのだが、この通路は、俺とシロ以外は通らない事になってる。例外は、カイとウミとライだけだ。


 執務室で、本当の会議を行うために待っていると、順次集まってくる。


 ルートガー、ミュルダ老、シュナイダー老、メリエーラ老、モデストだ。


「悪いな。それで、ルート。奴らの動きは?」

「はい。予想通りです」

「どっちの予想だ?」


「チアル街に取って都合がいいほうです」


 情報収集をしていなかったのか?

 それとも、情報収集をしていたけど、偽情報との区分けができなかったのか?


「モデスト!」

「はっツクモ様の命令通りに、捕らえた奴らから聞き出した通りに、情報を流しました」


 奴らに情報を流していた者たちの粛清は終わったのだが、そのまま情報が流れてこなかったり得られなかったら、新しい諜報活動が始まってしまうかも知れない。

 そのために、完全に情報を遮断するのではなく、ゼーウ街にいくつかのルートで情報を流していたのだ。


 本当の事を混ぜつつ、過小な情報と過大な情報や、アトフィア教がゼーウ街を狙っているという情報も流した。

 嘘の情報ばかりだと、情報の出処を疑い始めるかも知れないが、ある程度の本当の事が含まれていると、情報自体の出処を疑わう事が少なくなる。フェイクニュースと同じだ。

 人は、信じたいと思う情報に重心を置いた考え方をしてしまうのだ、その信じたい情報が誰によって、なんのために齎されたのかを考えようとしない。見えている情報にも目を塞ぐことがある。


 デ・ゼーウがそこまで近視眼になってしまっている理由がわからない。わからないが、この状況を利用させてもらう。


「そうか、ありがとう」

「はい。面白いように引っかかりました」

「そうか・・・それで、モデスト、アトフィア教はどうしている?」

「はい。そちらは、どう言っていいのか・・・」

「かまわない」

「はい。アトフィア教は、一部の者だけが、ゼーウ街に対して粛清を行えと言っているようです」

「強硬派か?」

「そうです。噂程度にしか話しが流れてきませんが、強硬派は、先の戦いで数を減らしてしまって、その補充を行う必要があるようです」

「ん?それだと、ゼーウ街に攻めると逆効果じゃないのか?」


 俺の疑問に答えてくれたのは、シロ・・・・ではなく、メリエーラ老だ

「ツクモ様。やつ・・・あっアトフィア教の強硬派が必要としているのは奴隷ですじゃ」

「奴隷?あぁゼーウ街の奴隷商や・・・ゼーウ街ごと奴隷にしようという考えなのか?馬鹿なの?」


「そうじゃな。馬鹿なのだろう。しかしじゃ奴らはそれが正義だと思っておるのじゃよ」

「そういやぁそういう集団だったな」

「・・・」

「ん?ちょっと待てよ。この前の戦闘って・・・」


 シロを見るとうなずいている。


「おかしくないか?数を減らしたのは、強硬派と穏健派だろう?聖騎士が多かったはずだぞ?奴隷は殆ど居なかったぞ?」

「えぇそれが奴らのやらしい所で・・・」


 今度は、またモデストが話始める。


「ん?」


 シロを見なくていいよ。アトフィア教とは関係ない。俺の嫁だぞ!?


「失礼しました。彼らは、奴隷とした者を人質のような状態にして、その街から聖騎士になる者たちを連れて行くのです」

「へぇ・・・それで・・・かぁ」


「え?何かあるのですか?」

「いや、なに、あの戦いの時に、一部のロングケープに居た聖騎士以外の者たちが、脆いなと思っただけだ」


 シロの手を握りながらそう応える。俺の本心でもある。


「脆い?」

「あぁそうだな・・・ミュルダ老は前線に居なかったよな?ルート・・・は、クリスと一緒だったか?」


 ミュルダ老は縦に首を振って、ルートガーは横に首を振る。

 そうか、前線には居なかったのだな。


「ミュルダ老。あの戦いで俺たちの犠牲者は何人だ?」

「いません」


「え?」「は?」


 シュナイダー老も、ルートガーも、その事は知っている。

 メリエーラ老も大勝だという事は知っていても1人の犠牲者も出さなかったとは知らなかったようだ。


「ツクモ様。”あの戦い”とは、2万近い数のアトフィア教に攻められた戦いですよね。チアル街が大勝だと言うのは知っていましたが・・・犠牲者が1人も・・・ですか?」

「2万もいたかは・・・置いておくとして、ヨーン達の部隊にけが人が数名出たけど、致命傷は1人も居なかったはずだぞ」


「・・・」「・・・」


 ミュルダ老もルートガーもシュナイダー老も肯定してくれるので、メリエーラ老とモデストも納得するしか無いようだ。


「あの戦いの詳細を知りたければ、ヨーンが帰ってきてから聞けばいい。面白おかしく話してくれるぞ」

「・・・はい・・・わかりました」

「あぁそれで、脆いって言うのはな。最初は、自分たちが優勢だと信じていたのだろう、そのときには、しっかり協調・・・していたかはわからないけど、しっかり行軍していたけど、後方が少し混乱して、考えれば逃げ道なんて沢山有るのに、来た道が戻れなくなると思って、パニックになって、前線でも強めの反撃があったら総崩れだったからな。誰かのために・・・とか、そういうのではなくて、しっかりした考えでの行軍ではなかったのだろう。だから、少しの事で、崩れる”脆さ”があった」


「そうだったのですね」

「そうだな・・・ん。横道にそれてしまったな。それで、ゼーウ街とアトフィア教はどうなっている?」

「膠着状態です」

「そうか、人数は?」

「ゼーウ街が2,000程度で、アトフィア教が500程度です」

「へぇそれで膠着状態か・・・アトフィア教が頑張っていると見るべきか、ゼーウ街がだらしないと見るべきか・・・」


「前者だと思います。アトフィア教は港を占拠して、そこで籠城戦をしています」

「へぇ考えたな。それに、港が一つ使えなくなったのはこっちとしても嬉しいな」

「はい」

「うーん。その港は、元々ゼーウ街の支配下の港なのか?」

「そうです。距離的には、ゼーウ街から7日程度の距離にある港です」

「そうか・・・俺たちが狙っている港よりも遠いのか」

「そうですね。出港した場所は、ゼーウ街から5日程度の距離です」

「ゼーウ街の港はこの二つだけなのか?」

「はい」

「追加の作戦で悪いけど・・・作戦が第二段階に入ったら、モデスト。配下と、眷属を連れて、その港に潜入してくれ」

「かしこまりました。何をしたらいいですか?」

「いやがらせ」

「は?」

「港街で、アトフィア教が占拠したり、接収した場所があるだろう。そこを狙った破壊工作をしてくれ、できれば、住民に被害がない場所が好ましい」

「かしこまりました。物資はどうしましょうか?」

「奪ってしまえ。奪えなかったら、使えなくしてしまえ」

「はっ」


 港をアトフィア教にくれてやる必要はない。

 今後の大陸での運営を考えれば、港は抑えておきたい場所だ。


 アトフィア教に関しては、ローレンツの報告ともそれほど大きな差がない。これで大丈夫だと思っておこう。


 話を戻して・・・

「ルート。それで、ゼーウの港に残っているのはどの程度だ?」

「・・・200に満たないと思います」

「計算方法は?」


 ルートガーが説明した方法は、単純な方法だった。

 船の数を数えて、船を動かせる最低限の人数を加算していく、街に入った人数はおおよそ把握しているので、そこから減算すれば残っている者の数が導き出される。


「そうか・・・それじゃ、200未満で間違い無いようだ」

「はい。そう思います。それも・・・」

「なんだよ。そこで止めるなよ」

「・・・はぁ・・・俺の勝手な想像ですけど、いいですか?」

「かまわない。ここには、事情がわかっている者しかいない」

「・・・そうですね」


 ルートガーが皆を一通り見回してから想像・・・憶測を口にした。

 自分たちにあまりにも都合がいい想像だったので、考えから外していたと言っていた。


「そうか・・・港町は空に近い・・・違うな、非戦闘員しかいない可能性があるのだな」

「はい。街に入ってきた者は、間違いなくゼーウ街から来ています。冒険者や近隣から連れてこられた者もいました。中には奴隷も居たようです。その者たち全員が街から出ていった形跡が無いのです」


「ルートガー殿。それは、当然ではないのか?船に載せてチアル大陸に攻め込むために集めたのだろう」

「俺も最初は、そう考えました。しかし、船が出港してから、商人として潜り込んでいた者は港町から出されて、暫くは港町に入る事が禁止されたようです。それから、近くの高台から港を見たら1艘の船も見られなかったという事です。先程届いた報告なので、真偽の確認はまだできていません」

「当然ではないのか?」


「漁をしている住民の船もなくなっているのです」


「あっ」

「それに、俺は”|最《・》|低《・》|限《・》|の《・》|人《・》|数《・》”で数えました」


 ルートガーの言っている事はよく分かる。

「そうだな。最低限であってそれで確実に動かせるとは限らないし、船だけ戦場に来ても意味が無いからな。戦闘をするために船を出したのだからな」


 そうか、非戦闘員しか残っていない可能性があるのか?

 もしかしたら、物資も全部持っていかれたかも知れないな。


「ルート。港町の非戦闘員はどのくらいだ?」

「え?あっ2,000名位だったと思います」

「モデスト。アトフィア教が占拠している港街も規模は同じくらいか?」

「はい」


 合計4,000名・・・5,000と考えればいいか。


「シュナイダー」

「はっ」

「今から、5,000名が2ヶ月生活できる食料と衣料品を集めるのにどのくらいかかる?」

「・・・5日ほど・・・SAやPAと道の駅で補充しながら行けば3日もあれば・・・可能かと思います」


「無理しない範囲では?」

「10日ほどで商業区の備蓄を使って揃えられると思います」

「わかった、準備をペネム街から持ってきた事がわかるようにして進めてくれ、15日後にペネム街を出発して、二つの港町に運べるように手配してくれ」

「かしこまりました」

「スキルカードは、スーンに言って置く必要な分だけ持っていってくれ」

「はっ」


 ミュルダ老が何かあるようだ

「ツクモ様。捕らえた者達はどう致しましょうか?」

「そうだな。強制された証拠がある者は、そのまま帰していいだろう。ゼーウ街に雇われた奴らは、隷属化して、復興のために力を使ってもらおう。ゼーウ街の幹部連中がいたら、チアル街に来てもらう事にしよう」

「かしこまりました」

「あぁそれは明日の会議で説明してくれ」

「はっ」


 今日はここで解散となった。

 ルートガーが何かいいかけたが言葉を飲み込んでいた。俺が行くのをやめさせたいのだろう。


 でも、もう作戦が動き出していて止められないのは、ルートガーにもわかっているのだろう。今止めるほうが被害が大きくなってしまう事も理解しているのだろう。そして、今日居た面々は俺が潜入するのを知らない者も居る。心配事を増やす必要はないと考えてくれたようだ。


 翌日・・・ヨーン達が迎賓館に集まる。


 出征の前に、戦闘の前に指揮官クラスだけは一度迎賓館に集まって、最終確認を行う事にしていた。


 会議室ではなく、謁見の間で面談したいという事なので、俺とシロが玉座に座っている。

 ヨーン達は臣下の礼を取っている。頭を垂れながら、現状報告をしてくれている。昨日の会議で決まった事を、ミュルダ老から伝えている。


 3ヶ所全てで問題は発生していない。

 命じた海図と潮の流れを考えての布陣も完了している。


 必要と思われるスキルカードも渡してある。

 気にしないで使うように伝えてある。


 最終確認は何事もなく終わった。


「ツクモ様」

「どうした?何か、まだ有るのか?心配事なら、全部吐き出していけ」

「はっ」


 ヨーン達は一度あげた頭をもう一度下げて、

「カズト・ツクモ様。我らの主様。勝利を御手に!」「「「勝利を御手に!」」」


「・・・」

「・・・」


 俺もシロも急な事で言葉が出なかった。

 しかし、言葉をかけないと終わらないのもわかっている。


「勝利の条件は整えた、あとは戦って勝つだけだ!無理せず戦ってこい。いいか、1人も死ぬな!死ぬことは、俺が許さない。いいか、無事に帰ってきて、俺とシロにお前たちの勇姿を自慢しろ、そして、俺が褒美で困るくらいに手柄を立ててこい!」


「「「はっ!!」」」

「ツクモ様。シロ様。我らは、必ず勝利して帰ってきます!吉報をお待ち下さい!」


「わかった。ヨーン。任せる。行って来い!」


 ヨーンが立ち上がって、頭を深々と下げてから、謁見の間から出ていく。皆が続いて出ていく。


 皆が部屋から出ていってから、俺もログハウスに移動した。

「リーリア。オリヴィエ。ステファナ。レイニー準備はできているか?」

「「「「はい」」」」


「よし、今日の暗くなってから出るぞ」

「「「「はい」」」」


 リーリアが一歩前に出る

「ご主人様。向こうで馬車を引くのは、ノーリとピャーチでよろしいのですか?」

「そのつもりだけど問題があるのか?」

「問題は無いのですが、バトルホースでは目立ってしまうかも知れません」

「そうか・・・ん?たしか、二頭とも、変体スキルを持っていたよな?」

「・・・え?そうなのですか?」

「あぁあとで確認しておいてくれ、なかったらスキル変体を付ければいいだろう?」

「わかりました」


「向こうに付いたら忙しいし、移動中は寝られないと思うから、夕方まで自由行動にする。身体を休めておくように」

「「「「はい」」」」


 俺も、そのまま洞窟に入って仮眠を取る事にする。シロもそうするつもりのようだ。


「カズトさん・・・・」

「どうした?」

「ね・・・寝られません」

「興奮・・・違うか、緊張しているのだろう」

「・・・はい」

「シロ。おいで、寝るまで傍にいてやるよ」

「・・・でも」

「いいから・・・それとも、一緒に寝るか?」

「・・・はい」


 緊張で寝られないシロを連れて、寝室に入る。

 そのまま、二人で横になる。緊張は有るだろう・・・でも・・・。シロが握ってきた手が暖かくて、眠りに誘われる。いつの間にか、シロが寝息を立て始めている。俺もシロの寝息を聞きながら、ゆっくりと目を閉じた。


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