最弱のスキルコレクター

スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
僧侶A

23話

公開日時: 2022年7月5日(火) 19:25
文字数:2,396

「遅かったわね。そんな入念に忘れ物のチェックでもしていたの?」


 声のした方へ振り返ると、杏奈さんが腕を組んで訝し気な表情でこちらを見ていた。


「いや、それがね——」


 俺は先ほどの話を正直に説明した。



「あはははははっ、ダンジョンボスになりますかって……」


「いや、笑い話じゃないんですけど」


 今後の将来を決めるかもしれなかった結構重大な話なんですが。


「まあ、ならなくて正解だったと思うわよ。ダンジョンボスはどれだけ知能の高いモンスターでもボス部屋の外に絶対出られないらしいから」


「そうなの?」


「ええ。少し前に姉がダンジョンボスのアークデーモンで試した結果、そうだと分かったらしいわ」


「試すって」


「試すと言ってもボス部屋の扉を開くだけ開いて中を観察していただけよ」


「そうなんだ」


「にしてもあなたがダンジョンボス、ね。もしかしてダンジョンにあなたがモンスターだと思われたんじゃない?」


「俺が?どう考えても人間でしょ」


「でもレベルが上がらないじゃない」


「それはそうだけど、単なる特徴の一つでしょ」


 レベルの代わりにスキルの獲得で強くなれるわけだし。


「まあ、細かいことは置いておいてさっさと換金に行くわよ」


「俺人間だよ!!!!」


 換金のためギルドに向かう間主張を続けたが、全て無視された。


 ちなみに換金結果は500万円でした。嬉しいです。




 その日から俺たちは本当にB級ダンジョンに潜り、レベルと経験を積んでいくことになった。


 そして丁度5つ目のダンジョンを攻略した頃、しばらく行っていなかった学校から呼び出された。


 というわけで杏奈さんに事情を説明した後、休みをもらって学校に行くことに。



「こんな時期に何かあったかな……」


 今は1月で、別に卒業シーズンでもなんでもない時期だから呼び出された理由が全く思い当たらない。


 進路に関しては既に言っていた……言ってないな。なかなかギルドに受からないという話で終わっていた気がする。


 そもそも諦めて一般人として生きる道を選びかけていた時ですら説明していなかったな。そりゃあ呼び出されるわ。


 と今日呼び出された理由に合点がいったところで丁度学校の校門に辿り着いた。


 外から校舎をちらっと見てみると、教室では生徒が熱心に授業を受けている光景が見えた。


「うん、一応授業は受けに来た方が良かったかな」


 熱心に授業を受けているのは別に1、2年だけではなく、3年生も同様だった。


 これは怒られそうだなと思いつつ、とりあえず職員室へと向かう。


「失礼します」


 そして職員室に入り、俺を呼び出した張本人である担任を探すが見当たらなかった。ってことは授業中か。


 なら放課後までジムで鍛えようかなと思い、職員室を後にしようとすると、


「そこの君、授業中だろうが。どうして職員室に出入りしているんだ」


 と教師の一人に声を掛けられた。振り返って見ると、その人は全身ムキムキで、綺麗な角刈り頭の男性だった。


 その癖してジャージではなくスーツという特徴的な恰好をした教師なこともあり、確実に見た記憶はあるのだが、授業を受けた事がなく関わりが一切無いので名前が全く思い出せない。


「ギルドの活動に参加していたのでここ最近は学校に来ていなかったんですが、今日杉田先生に呼び出されまして」


 この手の教師を無視したり適当な説明をして逃げたりしたら面倒な事になるのは間違いないので、ちゃんと事情を説明した。


「ああ、言われてみればそんな話をうっすらと聞いた覚えがあるな。呼び止めてすまない」


「いえ。こんな時間に職員室にやってきて何もせずに帰る生徒が居たら呼び止めて当然ですよ」


「そう言ってもらえると有難いな。とにかくギルドでの活動、頑張ってくれ」


「はい」


 俺は教師に一礼した後、職員室を出た。



 そのままジムに籠った俺は、スキル獲得の為に筋トレをして時間を潰した。




「っと、放課後か。じゃあ行かないと」


 校舎からざわざわと生徒たちの声が聞こえてきたので時計を確認すると、もうそんな時間だった。


 というわけで筋トレを中止し、再び職員室へと向かった。


 そして担任の杉田先生の席を見てみると、クラスメイトの千堂雷斗と楽しく談笑している様子が見えた。


 正直あいつとはそこまで関わりたくは無いが、さっさと話して要件を終えたいので意を決して杉田先生の元へ向かった。


「あの、杉田先生、如月飛鳥です」


「おう落ちこぼれ、久しぶりだな。朝来ていなかったからてっきり来れないんじゃないかと思っていたぞ」


 と呼びかけた声に反応したのは杉田先生ではなくて千堂だった。


「どういうこと?」


「まあまあ、話は後で聞くから。じゃあさっさといこうぜ」


 そう言って千堂はにやにやしながら俺の肩を組み、どこかに連れ去ろうとしてきた。


「いやいや、どうして千堂が関係あるのさ。呼び出したのは杉田先生なんだけど」


「お前を呼び出して話を聞くべきだって提案したのが俺だからな。関係大有りだよ。ですよね?杉田先生」


「ああ。千堂からの報告があり、事情を問いただすために今日ここに呼び出したんだ。ここで話をするわけには行かないから先に二人で生徒指導室へ行っておいてくれ」


「生徒指導室?」


 授業に来ていない事は悪いかもしれないけど、別に3年生だから特に問題は無いだろうし、生徒指導室で話をするような内容だったっけ……?


「そうだ。私は教頭を呼んでくる」


「え?」


「ってわけだ。さっさといこうぜ、落ちこぼれさん」


 俺は一切の事情が掴めないまま、生徒指導室へと連れていかれた。


 そして生徒指導室の中で千堂と向かい合わせで二人っきりという非常に気まずい状況になった。


 一応結構前に防御系スキルを獲得するための礎となってくれたから恨み等は一切ないのだが、あまりにも分かりやすく見下してくるのは非常に困るんだよな……




「にしても、いくら強くなれないからってあれはやりすぎだよなあ」


 そんな中、千堂は俺の弱みを握ってやったぜと言わんばかりの表情で勝ち誇ってきた。


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