キッチンまでの道のりには敵が一切居ないので特に問題なく移動出来た。
そのまま皆で協力し合って全員ではしごの下に降りることが出来た。
「ここからモンスターが出てくるかもしれないから、皆極力固まって静かにしていてね」
俺は子供たちにそう呼びかけ、亮と共に一番前を歩く。
一階層目については剣をゴブリンしか敵が居ないため、特に問題なく次の階層への階段を見つけた。
ここまでは亮のレベル上げの為に一度来ていたが、その先は一切中身を知らないので二階層目からが本番である。
「見た目は同じだね」
「そうだね」
二階層目も先ほどと変わらず、洞窟型だった。恐らく最後まで同じような形なのだろう。
ただ、敵まで同じとは限らないので最大限警戒しつつ先を進む。
『敵だ』
歩くこと数分、視界の先にモンスターを見つけた。コボルトだった。
コボルトはゴブリンが持っていたものと同じような剣を装備していた。
コボルトはゴブリンよりも身体能力が高いため、先ほどよりも厄介な敵だが、Aランク探索者にとっては誤差レベルである。
「よし、次行こうか」
真正面から一撃で殴り倒して先に進んだ。
同じように第三階層、第四階層、第五階層にも剣を持ったホブゴブリン、エースコボルト、オークがそれぞれ出てきたが特に問題は無く瞬殺して次へと進んだ。
そして第六階層。同じように洞窟ではあったのだが、異常なまでに広かった。
先ほどまでの洞窟は天井は3m、横幅は5mくらいだったのだが、今は高さが7m、横幅は10mくらいになっている。
「オークよりも大きくて強いモンスターが出てくるかもしれないから気を付けて。杏奈さん、一応前に来てくれると助かるかも」
「分かったわ」
背後が若干手薄にはなるが、目の前に現れた敵を全て討伐しながら進むのでそこまでの危険は無いだろう。
現状背後から攻撃を仕掛けられたことは無さそうだし。
同時に出てくる敵の数が多くなるのか、それとも敵モンスターが巨大になるのか、真相は分からないが、警戒しておかなければならない。
念には念を入れて、今までの半分くらいのスピードで先に進むことした。
そして歩くこと5分。
「そういうことね」
この階層が広くなっていた原因だと思われるモンスターを見つけた。ハーピーだ。
とは言っても顔は人間とはかけ離れていて、身長も2mと大柄なので一般的に想像される親しみやすいハーピーではない。
加えて、ダンジョンに出てくるハーピーはそもそも鶏並みの知能しかないらしい。
そのため、後ろで見ている子供たちも親しみを覚えることは無く、ゴブリンやコボルトのようなモンスターと同じように倒すべき敵として見てくれている。
だからみんなの事を気にすることなく戦える。
「口に剣を咥えているわね。このダンジョンは剣士を意識しているのかしら」
ハーピーは両手が翼になっており剣を持てないためか、口で剣を咥えていた。
「なら空を飛べるハーピーじゃない方がありがたいんだけどね……」
「四の五の言っている暇はないわ。一匹も後ろに回したら駄目なんだから」
「分かっているよ」
「じゃあ行ってくるわ」
杏奈さんはハーピーの群れに対して一直線に突っ込む。
そして手頃なハーピーから剣を強引に奪い、振り回し始めた。
「キュアアアアア!!!」
そんな杏奈さんをハーピー達は敵だと認識したらしく、空を飛んでから口で加えていた剣を足で掴み、杏奈さんの周りを囲む形で襲い掛かった。
どうやら臨戦態勢に入るまでにタイムラグがあったのは剣を口ではなくて足で使うためだったらしい。
俺はハーピーが杏奈さんに気を取られている隙に接近し、空中に居るハーピーに合わせて高く飛び、ぶん殴った。
空中での攻撃であるため、踏ん張る系のスキルが作用せず通常時よりは若干威力が下がったようだが、それでも脆いハーピーを倒すには十分な威力だった。
「キィィィ!!!」
俺が空を飛んでいるハーピーを一撃で倒す光景を見ていたハーピーが俺の事を杏奈さんよりも脅威だと感じたらしく、杏奈さんをスルーして俺の方にやってきた。
しかし、
「私も攻撃力は高くなったのよ」
攻撃力の問題を改善した杏奈さんの手によって背を向けたハーピーは一匹残らず駆逐された。
残り3匹のハーピーは俺たちに勝てないと判断したらしく、逃げていこうとしたが俺たちが逃がすわけもなく、全員きっちりと討伐した。
「ふう。空を飛べる敵だから一時はどうなるかと思ったけど、別に変わらなかったね」
「脅威となる敵をまず排除したくなるのはどのモンスターも同じなのよ」
「それもそうだね」
意思疎通が出来る知能があるモンスターならともかく、知能が無いモンスターが弱い奴から先に狙おうなんて考えるわけがないか。
続く第七階層以後も空を飛ぶモンスターが剣を持って現れたが、知能が高いモンスターが現れることは無かったので、特に問題が起こることは無かった。
そして遂に第十層に辿り着いた。
「どうやら十階層だったみたいだね」
「これ以上長くなくて本当に良かったわ。何人かは限界に近かったみたいだから」
いくら最短距離を歩こうと、定期的に休もうと十層分の道のりは子供達にはかなりきついものだった。
持って残り3階層といったところだったので、この段階でボス部屋が現れたのは行幸だった。
「とりあえず、少し休んでから入ろうか」
「そうね」
子供たちの体力が回復するまでボス部屋の前でゆっくりと休んだ。
「よし、行くわよ」
「そうだね」
大体30分ほど休憩を取って皆の疲れも取れたため、扉を開けて中に入る。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!