最弱のスキルコレクター

スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
僧侶A

20話

公開日時: 2022年7月1日(金) 19:27
文字数:2,409

 最初は周囲を回る俺に視線を合わせていたが、鎧のせいで動きにくいのか徐々に遅れてきて、最終的にはなったく視線が合わなくなっていた。


「ここだ!」


 俺はそれを好機と判断し、背後から突っ込み打撃を入れた。


 するとリビングメイルは激しい音と共に吹き飛ばされ、勢いよく壁に打ち付けられた。


「はあっ!」


 リビングメイルの性質なのか、それともぎりぎりで持ちこたえているのか剣と盾はしっかりと握りしめていたが、倒れた状態で反撃をすることはかなわないだろうと判断し、そのまま追撃を入れた。


 するとリビングメイルは一切動かなくなった。おそらくこれで倒せたと思う。



「余裕だったでしょう?」


 すると戦いを見ていた杏奈さんが、なぜかどや顔でこちらにやってきた。


「確かに余裕だった。見た目通り硬かったけど、見た目以上に軽かったからこちらへのダメージは大したことなかった」


 そこに触れると面倒な予感がしたのでスルーして、思ったままを述べた。


「まあこれは鎧だけの敵だから。中身がない分吹き飛ばすのは楽なのよね」


「これなら盾ごと吹き飛ばしても良さそうかも」


「確かにそうね。将来的な事を考えるとその訓練をした方が良いかもしれないわ。でも、その戦いかたを選ぶのは今回の探索では推奨できないわ」


「どういうこと?」


「攻略していけばわかるわ」


「分かった」


 意図は掴めないが、杏奈さんがそう言っているので素直に従っておくことにした。


 その後しばらく第二層でリビングメイルを討伐していると、


「スキルを獲得できるようになったみたい」


「あら、おめでとう。どんなものかしら?」


 リビングメイルをたくさん倒したことにより『リビングメイルキラー[初級]』を獲得。

 そして、直接敵を殴ったことにより『実践パンチ(初級)』と『実践アッパー(初級)』を獲得したらしい。


「って感じ」


「敵を直接攻撃することが条件のスキルもあるのね」


「C級以上のダンジョンに潜るのは当分先だと思っていたから完全に忘れていたよ」


 何故か実践系のスキルを獲得する条件に敵がC級以上という条件が追加で付いていたので自分にはしばらく縁が無いと忘れていたが、今後C級以上のダンジョンに潜っていくことを考えるとかなり重要な話だった。


「大丈夫よ。自分の興味を満たすために分かっていて敢えて言わなかった蓮見が悪いのだから。あとでお仕置きしておくわ」


「な、なるほど?」


 蓮見さんもこの世に存在するスキルが多すぎて忘れていた可能性も否定はできないが、杏奈さんが言うのならそういうことなのだろう。


「とにかく、実践系のスキルが存在するのであれば外でスキルを獲得するための時間を取らなくても強くなれそうね」


「みたいだね。ダンジョンで戦えばお金も入ってくるし」


 強くなれるのは良かったけど、お金が稼げないのが問題だったからね。


「今日は実力の把握をしつつ実践に慣れてもらうだけの予定だったけど、このまま先に進んでしまいましょうか」


「元々そうじゃなかったんだ」


 てっきり最初から普通に攻略していくつもりだと思っていたんだけど。


「あら、そう言うってことは最初から覚悟は出来ていたってことかしら?」


「連れていかれている間にある程度は」


 こんな高ランクダンジョンに来ることは若干予想外だったけど。


「そこまでやる気があったのね。私はとても感心したわ。その覚悟に応えて今日はここを軽く攻略した後、Aランクダンジョンに行ってみましょう」


「Aランク!?!?」


 俺の総合力ってBランク相当なんですけど?


「大丈夫、ほんのちょっとだけだから。足を一歩踏み入れるだけだから」


「一歩踏み入れたら最後、最深部に行くまで逃がさないやつですよねそれ」


 知っているんだよ。そのセリフは先輩探索者が高難易度のダンジョンに初めて挑ませるときのやつだって。


 学校の先生にそのセリフを聞いたら絶対に拒否しなさいって教わったんだよ。


「当然じゃない。Aランクダンジョンは大抵都心部から大きく外れた秘境みたいな場所なのよ。ただ足を一歩踏み入れて帰るなんて時間の無駄でしかないわ」


「確かに正論だけども」


 俺たちが住んでいる地域から一番近いAランクダンジョンは直線距離で100㎞以上離れているけれども。そういう問題じゃないよ。


「大丈夫、私が助けてあげるから」


 杏奈さんは俺を安心させるためにカッコいいことを言ってくれた。しかし、


「杏奈さんのレベルは?」


「43」


「Aランクダンジョンの適正レベルは?」


「50以上」


「Aランクダンジョンに潜る際の適正人数は?」


「3人以上」


「つまり全部がアウトだよね」


 杏奈さんが俺を助けられる根拠が一切存在しないのである。



 そもそも今潜っているBランクダンジョンも実は少々怪しいラインだったりする。


 といっても杏奈さんは適正レベルよりも3高いし、俺の攻撃力は適正を遥かに超えているから無茶をしなければ問題ないけれど。


「大丈夫よ、私はそこらの43レベルじゃないわ。あの日本最強ギルド『師走の先』のギルドマスター、卯月麗奈の妹なのよ」


「そういうところだけ利用するのさあ……」


 姉を超えるとかどうとか言っている割に姉の権力とか名前使いまくるのどうなの。


「とにかく、私は43レベルだけど、53レベルくらいの強さがあるから安心しなさい」


「一番信頼できないセリフだよそれ」


 そのセリフを言う人って大抵レベル相応なんだよね。


「強情ね。そこまで否定するなら分かったわ。3か月以内にBランクダンジョンを20個攻略してレベルを上げてAランクダンジョンに挑みましょう」


「3日で1つ攻略していくってこと!?」


「そうよ。私は早くAランクダンジョンに潜りたいの」


「せっかちが過ぎませんかね……?」


「姉を超えるのよ。そのくらいやらないと話にならないわ。というわけでさっさとこのダンジョンを攻略するわよ」


「わかりましたよ。なら次からは手伝ってくださいね」


「勿論」


 それからは杏奈さんも戦闘に加わった状態でダンジョンの中を進んでいくことになった。


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