「それは良かったです」
『で、キサラギが攻撃を受けていた奴らは何者だ?』
「地神教って言って、モンスターを親の仇のように憎む集団のことです」
『なるほどな。理解した』
「ねえ、あなたが楽しそうに話しているのは何者?見た感じダークエルフのようだけど。どういう関係?」
「ああ、そうだった。話してなかったね。この人はイザベル・ラ・ディアブロさん。ランクを上げるために一人でダンジョンに潜っている時に出会ったんだよ」
「ダンジョンで出会った?どういうこと?」
「カメレオンが居るはずだったDランクダンジョンのボスにイザベルさんがなり替わったんだけど、偶然会話が出来たから会話して仲良くなったんだ」
「会話?言語が違うみたいだから話せないと思うのだけれど。あなた日本語以外話せないでしょ?」
「うん。でも、イザベルさんが言語魔法っていう言語が違う人同士でも意思疎通が出来る魔法を使ってくれているから会話が出来るんだ」
「でも私は何を話しているのか分からないのだけれど」
「レベルが高くて言語魔法に抵抗しているからだって。俺の場合は魔法に関するスキルを一切獲得していないから、抵抗力が無くて普通に聞こえるんだって」
「そう?私にはこの人が何かしらの魔法を使っているようには見えなかったんだけれど」
「え?イザベルさん、魔法を使っていますよね?」
俺がそう聞くと、イザベルさんは数秒間迷ったのち、
『……地神教とやらに襲われたということであれば言っても問題ないか。私は魔法を使用していない』
「魔法を使っていないってどういうことですか?」
今こうやって意思疎通が出来ているのに?
『そのままの意味だ、私は魔法を一切使っていない。そもそも言語魔法という魔法は存在しない』
「え……?じゃあどうやって意思疎通が……?」
『お互いにダンジョンと関係があったからだ。一度でもダンジョンに結び付けられてしまった経験がある者は同じ境遇の似た種族の者と意思疎通をすることが可能になるんだ』
「互いにモンスターだからってことですか?」
『モンスター、まあ分類的にはそうなるな』
「でもどうしてそのことを正直に言わなかったんですか?」
『それは、キサラギに自身がダンジョンに結び付けられた自覚が無かったからだ。知らないのであれば言わない方が幸せだろうと思ってな』
「あれは優しさだったんですね」
多分あの時にお前はモンスターだって知ってしまったらどうなるか分からなかった。
『まあな。後一つ勘違いしているようだが、キサラギも私も厳密にはモンスターではない』
「厳密には?」
『この世界的にはダンジョンに居たということでモンスターだと認識されるが、正しいモンスターというものはダンジョンに産み出された存在だけを指す』
「同じ意味じゃないですか?」
ダンジョンから産まれたんだからダンジョンに居るんだと思うんですが。
『若干違う。この世界のダンジョンに居る条件として、一つはダンジョンに生み出されたもの以外にダンジョンの崩壊に巻き込まれるというものがある』
「ダンジョンの崩壊?発生ではなく?」
『ああ、崩壊だ。この世界のダンジョンというのは、元々私たちが産まれた世界にあったものだ。それが崩壊した後、別の世界にそっくりそのまま移動しているんだ』
「私たちが産まれた世界?」
『ああ。私たちは地球とは異なる世界からやってきた、異世界人に当たる存在だ』
「異世界人……?」
『そうだ。キサラギはこの世界の住人でも、ダンジョンに根差したモンスターでもない』
「そうだったんですね。だからこのペースで強くなることが出来たと」
『ああ』
「良かった、モンスターじゃなかったんだ……」
もしかしたら本当にモンスターなのかもしれないとほんの少しだけ思っていたので、こうやって否定されて嬉しかった。
俺はちゃんと人間なんだ。地球のでは無かったけれど。
「私にも説明して頂戴」
俺の言葉しか杏奈さんは理解できていなかったので、杏奈さんにもイザベルさんが話していたことを伝えた。
「あら、そういうことだったのね」
「結構あっさり納得するんだ」
「既に相羽さんからモンスターに近い存在だと説明されていたからよ。実はモンスターではなくダンジョンに巻き込まれた異世界人だと言われても別に驚きようが無いわ」
「確かに」
モンスターも異世界人も言われてみれば誤差に近いのかも。人間だってことはどっちみち変わらないわけだし。
「それよりも、今後どうするつもりかしら?イザベルさんを味方に引き入れること自体は構わないけれど、私と彼女では意思疎通が出来ないわ」
「そうだね……イザベルさん、杏奈さんたちと意思疎通する何かいい方法でも知ってる?」
と言われても俺には分からないのでイザベルさんに方法を聞いてみることにした。
『ウヅキと意思疎通する方法か、当然無いな。キサラギが同時翻訳をする以外に方法は無い。あるのであれば最初から使っている』
「それもそうだよね……」
相手は異世界の人間だから別に殺したところで罪に問われたりとかしないのに絶対に殺そうとはしなかった人が会話出来る方法を知っていたら会話してるよ。
「ってことで杏奈さん。俺が同時通訳をするしか方法は無さそうです」
「そう。じゃあ頼んだわ」
『出来る限り早くここの言語を学んで話せるように努力するから待っていてくれと伝えてほしい』
「うん。杏奈さん、イザベルさんが——」
俺はイザベルさんの話したことを伝えた。
「良い人ね。ありがとうと伝えて頂戴」
「うん」
その後、とりあえず今後の話をするために家の中に入った。
そしてリビングのテレビは当然付いていた。
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