最弱のスキルコレクター

スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
僧侶A

33話

公開日時: 2022年7月17日(日) 19:44
文字数:2,349

「おっと。つい楽しくなって力が入ってしまっていた」


「ぶはっ!!」


「かはっ!」


 そして、無事に俺たちは解放された。


「ありがとうございます……」


 俺は命の恩人に対してお礼を言った。


「別に良いよ。悪いのはここにいる馬鹿力の卯月さんだから」


「馬鹿力とはレディに向かって失礼な」


「日本最強と名高い卯月さんをレディ扱いするのは無理だよ」


「お前も私並みに強いだろう?」


「まあね。少なくとも防御力に関しては僕の方が数倍強い」


「なら以後はレディとして扱え」


「はいはい、分かりましたよ」


「えっと、あなたは……?」


 命の恩人は麗奈さんに匹敵する実力者らしいが、こんな王道の王子様系の見た目をした男性がいることは見たことも聞いたことも無い。


「僕?そうか、飛鳥君は知らないんだったね。僕は氷浦優、『ガーディアン』のギルドマスターだよ。話は健太君から常々聞いているよ」


「え?『ガーディアン』のギルドマスターですか?」


 強いギルドに関しては調べていないのでほとんど知識は無いけれど、健太と弥生が入るギルドに関しては流石に調べた事がある。


 その記憶が正しければ、『ガーディアン』のギルドマスターはもっと筋骨隆々の大男だったはずだ。名前も関剛之という力を象徴していそうな感じの名前だったはず。


「ああ、関君の事かな?ってことは一応調べてくれてはいるんだね」


「健太が入るギルドだから流石に調べました」


「なら不思議に思っても仕方ないよね。関君は表向きにはギルドマスターということになっているんだけど、実は副マスターなんだ」


 表向きにはギルドマスター……?


「うん。関君ってさ、いかにも防御力高そうな顔と見た目しているでしょ?だから表向きにはそういうことにしてもらっているんだ。ほら、僕って『ガーディアン』顔じゃないでしょ?」


「確かにそうですね……」


 どちらかといえば相手の攻撃を華麗に避けて美しい剣技で相手を翻弄してそうなイメージがある。なんなら攻撃を一度でもくらったら折れてしまいそうな儚さすらある。


「だから表向きのギルドマスターっぽい仕事は全て任せて、僕はギルド内での仕事を基本的にしているわけなんだ」


「だから知らなかったんですね…… ってことは健太も知らなかったんじゃないですか?」


「勿論そうだよ。だからただのギルドメンバーとして色々な話を聞かせてもらえたんだ。そこで飛鳥君や弥生さん、そして孤児院についても色々教えてもらっていたってわけだ」


「もう氷浦さんがギルドマスターだってことを健太は分かっているんですか?」


「まだだよ。何なら今日飛鳥君の試験監督をすることすら知らないよ。今日帰ったら全てを話すつもり。一体どんな顔をするかなあ」


「ええ……」


 もう健太が入ってから半年くらいは経っていますよね。身分を隠すのはせめて一週間くらいにしてくださいよ……


「というわけで、今日二人を試験するのは僕たちだよ。よろしくね」


「「よろしくお願いします」」


「試験内容は事前に聞いているね?Sランク以上の探索者との模擬戦闘。二人の実力を僕たちに是非見せてほしいな」


「「はい」」


「じゃあ、二手に分かれようか」


 それから俺と麗奈さん、杏奈さんと氷浦さんに別れ、それぞれ邪魔にならないように距離を取った。



「さて、これから模擬戦闘を始めるわけだが、事前に聞きたいことはあるか?」


 お互いに距離を取り、戦闘の準備を済ませた段階で、最後の確認をしてきた。


「どうしてお二人が試験官をすることになったんですか?」


 試験に関する質問は特にないので、気になったことを聞くことにした。


 基本的にAランクの試験官は立候補者がおらず、最終的に国と直接契約しているSランクの公務員探索者が任命される事が多い。


 理由は単純で、試験官という仕事が非常に面倒な上に殆ど金にならないからだ。


 一定数Aランクに挑む探索者と話してみたいからという理由で請け負ってくれるSランク探索者もいるらしいが、どう考えてもそれは多忙なギルドマスターではない。


「当然如月飛鳥、君を一度見てみたかったからだよ」


「俺、ですか?」


「ああ。氷浦は健太という有望な新人が話していた将来有望な幼馴染が気になったから。私は、愛すべき妹が選んだ男が妹に見合う人物かを見極めるためだ」


 氷浦さんの理由は普通だが、麗奈さんの方はなんというか、シスコンが極まった理由であった。


『師走の先』のことを一切の躊躇なく利用していた一番の理由はこれか。この姉は妹

 が何をしても絶対に怒らないどころか絶対に歓迎する。


「でも、試験相手ってランダムじゃないんですか?」


 試験官に立候補する際に選べるのは試験会場と日程のみ。誰を試験するかまでは選べなかったはず。


「普通はな。だが2年前からずっとお願いし続けた結果、見事許しを得た。実績の賜物だな。ただ、妹を試験することは法律的に許されなかったので同じく飛鳥に会ってみたいと話していた氷浦を呼んだのだ」


 シスコンが極まるとこんなことになるのか……


 とそれより、


「2年前からってどういうことですか?」


 杏奈さんと出会うどころか、探索者としてダンジョンに潜ってすらいない時期なんですけど。


「数年以内に妹は『師走の先』を抜けて自分が見染めた相手と共にギルドを作ると分かっていたからな。だから私はその時に備えて国に強くお願いをし続けていたってわけだ」


「凄い執念ですね……」


「妹が生まれた時から妹の為に生きると決まってしまったからな」


「決まったって……」


「まあ、その結果呆れられて氷浦が入ってからは一言も話さず睨まれていたんだがな」


 まあ、杏奈さんは麗奈さんを超えるために努力していますからね……


「とにかく、私は飛鳥が妹に見合う人物なのか判断させてもらう」


「分かりました。出来る限りの事はやってみます」


「ああ、舐めた戦いは絶対に許さないからな」


「はい」


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