それからもダンジョンの一階層毎に全てのモンスターを同時にかき集め、健太が弥生とイザベルさんを守っている間に俺と杏奈さんで倒しきるというスタイルで戦い続けた。
「結構レベルが上がったわね」
「まさかこの年齢で150って数字を見ることになるとは思わなかった」
「ね。結構危ない時あったけど、やった甲斐があったよ」
その結果たった一週間で杏奈さん、健太、弥生は150レベルに。
「そろそろ追いつかれてしまいそうだな」
イザベルさんは155レベル相当になっていた。
「方法が方法だからね。イザベルさんも効率は上がっているけれど、私たちの方がもっと効率的になってるもんね」
と弥生が言う通り、この手法はスキルを獲得するよりもレベル上げの方の恩恵がより大きい。
レベル上げは何も考えず敵を倒せば倒すだけ強くなれるが、スキルの方は若干異なる。
スキルの場合は同じ敵を倒し続けると極端に効率が下がってしまうのだ。
これは獲得したいスキルの等級が上がるごとに10倍の条件が求められる為だ。
スキルの方は同じモンスターを1000体倒すよりも、2種類のモンスターを100体ずつ倒す方が効率的なのだ。
それでもイザベルさんが追いつかれずに強くなれているのは、武道系のスキルを意識的に獲得しているイザベルさんの努力の賜物である。
「で、飛鳥は?」
となると俺もイザベルさんと同じようにそこまで強くなれていないと考えるべきだが、
「多分レベル220相当はあるんじゃないかな」
こちらは変わらず超効率的に強くなれていた。それもこれも【スキル修練・改】を得たおかげである。結局効率10倍は偉大というわけである。
「さて、次のダンジョンへ……」
『見つけた』
この調子で次のダンジョンへ向かおうと健太の車に乗ろうとした時、背後から異世界人の声が聞こえた。
「お前は……!」
「先日は部下がお世話になりましたね。私はギルド『BRAVED』の幹部、モーリス・ド・ロシュフォールと申します」
その声の正体は、最初に襲撃してきた外国人集団を取りまとめていた男だった。
「どうしてここが……!?」
物資を支給してくれる『師走の先』の人と待ち合わせしている場所ならバレたとしてもおかしくはないが、このダンジョンは誰にも行き先を伝えていない。
だからここで見つかる可能性は限りなく低い筈……
「どうしても何も最初から居場所が分かっていたからですよ」
「最初から……?」
「はい。私の職業スキルが【占い師】だからですね。一度接触した相手の居場所なんて簡単に割り出すことが出来るんですよ」
「では何故ここまで何もしてこなかった!」
「当然あなたたちと協力関係を結んでいる相手を見つけるためですが」
「協力関係を結んでいる相手……?」
「はい。お二人が異世界から来たと分かった上で手助けをするような人たちは他の異世界人が困っていた時でさえ手助けをする可能性が非常に高いですから」
「だから先に『ガーディアン』と『魔術師の楽園』を壊滅させたわけね」
「そういうことです。あそこの二人は地球の人間とは思えないレベルで強いですから、先に倒してしまわなければ厄介なんですよね。まあ、それでも地球の人間にしては強いだけで私たちには遠く及びませんでしたが」
「ってことは……」
「あなた方程度ならたった一人で十分ということです」
「それは甘く見られたものだな。私たちは強くなったぞ」
「と言われましてもね。あなた方が地球出身の人間という明確なお荷物を連れてダンジョンに潜っている時点で程度が知れているのですよ」
「皆はお荷物じゃない!!!」
3人は大事な仲間であり、重要な戦力だ。お荷物なんかではない。この3人が居たからこそここまで急激に強くなることが出来たんだ。
「味方思いのあなたはそう言うでしょうね。ですが、あなたとダークエルフの二人で効率を求めてダンジョンに潜っていたらこの世界で言う150レベルに近い実力を得ることすら容易だった。しかし、あなた方はそうしなかった」
150レベル……?
「ざ「なるほどね。私たちを切り捨てられなかったのが敗因だと」
俺たちが全員150レベルを超えていると言い出しそうになった弥生を遮って杏奈さんがそう質問した。
「ええ。まあ150レベルの強さがあっても私に勝てるわけではありませんが」
「私たちが150レベルより低かったとしても、あなたに絶対負けるわけじゃない。1対5なのだから」
「面白いことを言いますね。私たちはたった7人で二つのギルドを壊滅させたというのに」
「それは勇者と魔王が居たからでしょう?占い師のあなたが強いわけではないわ」
「なるほど、そこのダークエルフから聞いたのですね。ならそう思われても仕方ありませんね。では私の実力を証明してあげる他ありませんね。かかってきなさい」
どこからともなく杖を取り出したモーリスは、両手を広げて余裕そうに俺たちを待ち構えた。
「皆、行くわよ」
「「おう!!」」「うん!!」「ああ!」
俺たちはいつも通り俺、杏奈さん、健太が前に立ち、イザベルさんと弥生が後ろに位置付けた。
そうして俺たちは完全に臨戦状態に入ったのだが、モーリスは両手を広げたまま動こうとしない。
「どういうつもりだ!!」
「どうもこうも、ただ一発攻撃を受けてあげようという話ですよ」
健太がモーリスに意図を問うと、モーリスは小馬鹿にした表情でそう返した。
「舐めやがって……」
「そう、分かったわ。飛鳥、行ってきなさい。全力よ」
舐められていることに対して怒りを露にする健太に対し、杏奈さんは邪悪な表情で俺に指示してきた。
「うん、分かった」
一撃で決めろってことね。
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