【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

通販サイトを頼んだはずなのに、授かった能力はネットスーパーだった。
ジェルミ
ジェルミ

第39話 庇護欲

公開日時: 2022年12月3日(土) 16:10
文字数:1,697

 もう解体は終わったかな?

 そう思いながら冒険者ギルドの買取カウンターにいるマッスルさんに声をかける。


「マッスルさん、ワイルドボアの解体は終わりましたか?」

「おぉ、終わっているぞ。肉以外は買取で良いんだな?」

「実は魔石もほしいのです」

「魔石をどうするんだ?」

「シルバーが欲しがっているので」

使役しえきしている魔物か…。まあいいが、それだと引き取る素材が少ないから、解体料を引くとだいぶ安くなるぞ」

「おいくらですか?」


「まあ、毛皮や牙だけだから5万と言うところだな」

「それで構いません」

「そこで相談なんだが、肉を少し分けてくれないか?」

「肉ですか?」

「そうだ。肉は需要が多くて供給が間に合わない。今回のワイルドボアの肉は220kgもある。色を付けるから、その半分で良いから売ってくれないか?」

「わかりました。売ります」

「それはありがたい。それでは買取価格は全部で16万円だ。受け取ってくれ」

 肉は半分なら110kg、買取金額は100g100円というところね。

 私は渡された硬貨を数えストレージに収納する。

「はい、確かに頂きました」

「じゃあ、肉を渡すからこちらに来てくれ」

 そう言われ私は解体場のドアを開けた。


「ほれ、そこにあるから持って行ってくれ」

 置いてあった残りの生肉と、5cmくらいの魔石をストレージに収納した。

「マッスルさん、追加で買取をお願いします」

「いいぞ。そこに出してくれ」


「では、お願いします」

 そう言うと私は魔物をストレージから出していく。

「おぉ、ホーンラビットか。まだあるのか?ポイズンスネーク、ジャイアントスパイダー、それにレッドクラブか?!」

「それも魔石以外の買取をお願いします」

「わかった。夕方には出来るぞ」

「夕方は店があって忙しいので…」

「なんだ、店をやってるのか。冒険者なんてやってないで、店に専念したらどうなんだい?」

「そうすると使役しえきしているシルバーと離れないといけないので…」

「そうか、そのために冒険者を続けるのか」

「えぇ、でもシルバーはもう家族ですから」

「優しいんだな、スズカさんは」

「そんなことないですよ。ではまた明日」

「あぁ、また明日な」


 冒険者ギルドを出てヤルコビッチさんのお店に再び向かう。

「ヤルコビッチさん!お肉をお持ちしました」

「ありがとうございます、スズカさん。何度も来て頂いてすみません」

「いいんですよ。ヤルコビッチさんには、お世話になってますから。お肉は何kgくらい必要ですか?」

「できれば1kg分けて頂けないでしょうか?それだけあれば何日か食べれますから」

 1kgと言うとハンバーグのレギュラーが約160g。

 ジャンボサイズで240gだから1kgはそれの四枚分。

 保存方法を考えたらそれで充分ね。


「わかりました、大丈夫です。台所をお借りいたします」

「どうぞ、お使いください」

 台所に入りストレージから、転移してきたときに購入した包丁を取り出す。

 まな板に肉を出し切り分けようと思ったけど、計量器がないから1kgの量がわからない。

 ええい、スーパーで購入するパックの肉のイメージでいいわね。

 少し多めにと…。


 切り分けた肉を皿にのせ奥さんのリリーに渡す。

「はい、どうぞ」

「まあ、こんなに?!」

「サービスです」

「スズカさん。おいくらですか?」

 冒険者ギルドの買取金額は100g100円だったから同じで良いかしら。


「はい、1,000円です」

「1,000円?!スズカさん、いくらなんでも安すぎます」

「そうですか?」

「もしかしたら冒険者ギルドの買取価格を基準にしていませんか?」

「えぇ、そうです」

「やはりそうでしたか。店頭に並ぶ時には最低でもその3倍になります。それでも肉が手に入るなら安いものです」

「わかりました。では3,000円でいいでしょうか?」

「それでいいのですか?」

「もちろんです」

「では、それでお願いします」


 また肉が欲しい時は言ってくださいね、と言い残しスズカは店を後にした。

 しかし置いて行った肉は、どう見ても3~4kgはあった。


 それを見たヤルコビッチは思った。

 世間を知らなすぎると…。

 そして更にヤルコビッチ、いいや、ヤルコビッチ夫婦の、庇護欲ひごよくをかき立てるのには十分であった。


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