【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

通販サイトを頼んだはずなのに、授かった能力はネットスーパーだった。
ジェルミ
ジェルミ

第34話 食べてみる

公開日時: 2022年11月28日(月) 19:45
文字数:1,632

「じゃあ、また明日!!」

 食事も終わりジョヴァンニさん達は、日が暮れた街に消えていく。

 お店も一段落して一息つく。

 あと少ししたら店じまいにしようかな。


 そんなことを考えていた時だった。

「オォ!!ここだ、ここだ!!」

「はい、いらっしゃいませ」

 良く見ると裕福そうな人族の小太りの40歳くらいの男性と、お供のような恰好をした2人が店に入ってきた。

 私は思わずこう告げる。


「申し訳ございません。ここは獣人用の食堂でして」

 すると主人と思われる男性が横柄な口を開く。

「わかっている。食事ではなく紙皿を売ってほしいのだ」

「え?紙皿ですか。どうなさるのでしょうか?」

「どうもしない、ただ欲しいだけだ。獣人が自慢のように冒険者ギルドなどで見せびらかしている。獣人だから譲ってもらえた、特権だと」

「あ~、そうですか…」

 まさか紙皿を自慢するとは思わなかったわ。


「でも、なぜでしょう?ただの紙皿ですよ」

「えぇ、だから価値があるのだ」

「紙がですか?」

「なんだ、知らないのか?この国では紙は貴重品だ。しかもシミひとつない真っ白な紙など考えられない」

「は~、紙はそういうものでは?」

 どこかで聞いた内容だけど?


 そこからお供の人が口をはさんでくる。

「だから問題なのです」

 紙が白いと問題があると…。

「あなたは人族の方ですよね」

「もちろん、そうです」

「では、なぜ獣人などに肩入れをするのでしょうか?」

「肩入れですか?」

「そうです。卑しい獣人の肩を持ち、人族より優遇しているではないですか!!」

「優遇と言っても…」

「では紙皿を売って下さい。売らないと言うなら食事をすれば頂けるなら、私も獣人用の食事を食べていきましょう」

「いえ、それはできません」

「な、なぜでしょうか?」

「人族用ではないからです、人族と獣人族は消化器官が違うからです」

「消化器官?」

「一時的にならいいかもしれませんけど、常用は出来ません」

「食べれるのだな、では売ってくれ。まさか人族を獣人より下の見ていると言うのかおまえは?!」

「ですから、できません」

「それは差別だ!この店はお客を差別する店だ!!」


 3人の男達は店の軒下で騒ぎ立てる。

 仕方がない。

「シルバー、お客さんがお帰りだよ」

わふっあいよ!!』


 私に呼ばれたシルバーは全長2m近くある大きな体をゆすりながら、カウンターの奥から身を起こした。

「わぁ!!なんだこのでかい魔物は?!」


「私がティムしているウォーグウルフのシルバーです」

「こ、これで私たちを脅かすのか?」

「脅しではありません。帰って下さいと言っているのです。それに紙皿は一時しのぎで、これからはまた木皿で提供することにしましたから」

「な、なんだ。もう終わったと言うことか?しかし…」

 紙皿での提供が終わったと聞き、獣人と人族を差別しているのはないと分かり納得したようだ。

 しかし紙皿はどうしても欲しいみたい。


「わかりました、今回だけお出しいたします。ですが食べれなくても知りませんよ」

「オォ、出して頂けるのか。ではありがたい」

 私話を聞き、中年男性はとても喜んだ。


「それでは何を召し上がりますか?」

「あぁ、私達はなんでも構わないが…。では3人共、価格表にあるワンコスペシャルを頼むよ」

「それでお願いするよ」

 そう言う男性より3人分の代金を頂き、ワンコスペシャルをカウンターに出した。


「ほう、これが犬族用の食事か。美味しそうな匂いだな、どれどれ…ガリッ、」

 うっ?!

 最初のスプーン1杯目で、3人は口を押さえた。

 あぁ、汚いな。

 お店の前で吐かないでほしいな。


 人と犬の味覚には違うからね。

 また無理に食べ切ろうとしている。

「お客さん、家に持ち帰って食べてもいいのですよ」

「そ、そうか。その手があったか。で、ではそういたそう。面倒をかけた」

 そう言うと3人はバツが悪そうに手に紙皿を持ち帰って行った。


 まさか紙皿が欲しいと言い出す人がいると思わなかっわ。

 仕方ない。

 明日からまた、木皿に戻さないと。


 お客様が増えると、いろんな人は出てくるわね。

 そうスズカは思うのだった。


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