チート勇者候補達は酒場にて

魔王を倒す使命を無視したチート能力者たちは女神からもらった大金で酒場を中心としたスローライフを満喫しています
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第7話 モンスター集団(チートを使った殲滅戦)

公開日時: 2021年1月30日(土) 21:00
文字数:3,476

 精霊の森に入った侑希一行。湖に向かう道中でモンスターの集団に囲われた。


「まさか、囲われるなんて。一体、どうしてなんだ?」


 あたりを見渡す侑希。どう考えても、多種多様なモンスターに襲われている。クマ、男性の平均身長の半分ほどの大きさのウサギと言った獣のようなものから、自律歩行する木や氷の塊のような自然物の化身らしきモンスター、ガイコツなどのアンデットが3人を取り囲んでいた。


「知らないわよ。それよりも、まずいんじゃないかしら?」


 こわばった声で、舞は侑希たちに注意を促し、剣を構える。鋭い眼差しは赤く輝いている。明らかに狙いは冒険者3人だ。


「こうなると……。侑希さん、舞さん。手分けして倒しましょう」


「了解」と侑希が答え、モンスターの集団に雷を放った。電撃を食らった数体のモンスターはパタリと倒れた。


「やるわね。私も少しだけ本気出そうかしら」


 銃をホルスターから抜き、銃口をモンスター達の集団に向けた。引き金を引くと、銃弾を発射する。矢継ぎに引き続け、弾を打ち込んだ。


 結果は全弾が急所にヒット。モンスターは悶絶しながら、後ろに倒れた。


「おふたりの攻撃は遠距離ばかりですね」


 抜刀するアリサ。両手で柄を掴む。剣を振り上げ、超高速で敵の集団に詰め寄る。彼女はバッサバッサと敵を薙ぎ倒す。右の敵を倒せば、左の敵。前方の敵を倒せば、背後から奇襲してきた敵を横一文字に切り裂く。


「まだ、全滅しないか?」


 侑希が嘆く。規格外の力で攻撃してもモンスターは全滅しない。未だに、モンスターたちは3人を囲っている。


「一網打尽にできれば……」


「なら、侑希君が熱風の嵐で敵を投げ倒しておいて、それでもきた敵は私たちが倒すのはどうかしら?」


 倒し方の方針を侑希がつぶやく。瞬時に、舞は方針に沿った作戦を思いつき、提案した。


「それならいけそうだ。アリサ、いけるか?」


「もちろん」と明快に返事をする。その声は他の冒険者にどこか凛々しく、そして、頼もしかった。


 それを合図に、侑希は「ストーム!」と詠唱する。彼の目前に、風の大渦ができる。次いで、風の渦に指を刺し、「イグニション!」と追加の魔法を唱えた。風の渦は炎をまとい、モンスターの集団に突撃する。


 熱風の嵐に飲まれたモンスターの体は傷がつく。やがて、全身に火がつく。最初は3人を攻撃しようと、ふらつく体で襲いかかる。しかし、それも虚しく、断末魔を挙げ、地面に倒れ伏し、灰と化した。


 舞の想定通り、敵はまだ残ってい。耐性を持つ魔物、例えば、アンデットや鉱物系統の魔物は、なりふり構わず3人の冒険者突撃する。


「来たわね」


 舞は銃口を向ける。トリガーを引くと、マシンガンのように乱射した。アンデットはなぜか前のめりになって倒れたが、鉱物系の魔物は弾を跳ね返しながら、進撃を続ける。


「マジックシールド!」


 跳ね返る銃弾から身を守るため、侑希は3人の目前に半透明の板状シールドを展開。銃弾はシールドに阻まれると、地面に落ちた。


「鉱物系の敵は任せてください!」


 迫り来る鉱物でできた魔物。アリサは大剣を大きく振り下ろし、一刀両断。魔物は盾に2つに割れた。


「やるな」


「冒険者でしたから」


 褒める侑希。アリサは言葉を返しながら、敵をまた2つに割った。鉱物なのに、竹を割っているようだ。


 ある程度区切りをつけると、3人は開けた土地の中央に集まる。周りには数多の敵。最初と比べても、数は減ってない。


「でも、減らないな。一体何故なんだ?」


 侑希は氷の刃を自分の周りに展開。四方八方にサイコキネシスで飛ばす。舞とアリサを傷つけぬようにコントロールには最新の注意を払って。


「分からない。でも倒していくしかないわ」


「舞さん。それで、こっちが息切れしたら終わりですよ」


「じゃあ、どうすれば良いのよ?侑希君」


「例えば、親玉的なものが近くにいるとか」


「いるの?本当にるいたらもう攻撃してるわよ」


 敵を一撃で倒しつつも、舞は侑希と解決策について話し合う。競技を重ねても、解決の糸口は見つからない。やがて、体力が落ちてくると、動きが鈍くなる。


「きゃっ!」


「舞!」


 肩を庇いながらも、銃をモンスターに打ち込む。すぐさま、侑希は舞を光で包み込み、怪我の回復を試みる。その間、背後にできた隙を狙われ、侑希は熊のような怪物に背中を殴られる。


「ぐあっ!」と侑希は痛そうな声を上げた。その声を聞いたアリサは熊のような怪物に詰め寄り、一刀両断した。


「侑希君!?」


「だ、大丈夫だ。魔法を……使い続ける」


 血反吐を吐きながらも、侑希は舞にために魔法を行使する。やがて、光が消えると、舞は完全回復。全力で、銃でモンスターを撃ち殺す。


「セルフキュア!」


 侑希は結晶の中に閉じこもり、自らの怪我を治そうとする。結晶には60という数字が書かれており、1秒ごとに減っていく。


「ありがと。ゆっくり回復していて……」


 結晶の前に立ち、舞は回復中の侑希を護衛する。近づくモンスターがいれば、なりふり構わず銃弾を打ち込んだ。


「どうすれば……」


 この危機的状況を打開するてかがりを探しながら、敵を倒していく。あたりを見渡すと、木々の間にあるものを見つける。


「アリサ。あれは何なの?」


 背後から、舞はアリサに近づき、疑問点をアリサに耳打ちする。アリサの口から「え?」と小さく声が漏れる。


「あれ、って何ですか?」


「ほら。あそこに人形のようなモンスターいるじゃない」


 舞は対象に指さす。指先はしっかりと伸びている。ブレることもない。


 指された方を、アリサはじっと見つめる。最初はぼんやりとしており、ときおり、首を傾げた。時間が経つにつれ、姿形が明確に見えた。


 アリサが見たもの。それは禍々しい紫色の体色の人形モンスターだった。額から出ているツノは黒いオーラに包まれている。目は見開いており、焦点は左右往生している。体長と同じぐらいの尻尾は一定のリズムで地面を叩いていた。


「魔人です。おそらく、彼が親玉でしょう。大抵、モンスターを洗脳してたり使役してたりするのは、魔人であることが多いですし」


「分かったわ。ありがとう」


 舞は迫り来る敵を撃ちながら、侑希のもとへ駆け寄った。右、左、右、左と賢明に足を動かす。


「これで良し」


 治療から復帰した侑希は様々な魔法を様々なモンスターに当てていた。


「解決策……。何がある?」


 ぶつぶつと呟きながら、火の玉や氷の刃、雷撃で、侑希はモンスターを多く葬った。しかし、無限に湧くモンスターの謎が解けずにいた。謎について考えると、隙が生まれる。背後から、大ガエルのようなモンスターが飛びかかってきた。彼は気づいていない。


「後ろ!」


 舞は大声を出した。侑希に襲撃してくる大ガエルに気づいてもらうためだ。同時に、大ガエルに銃口を向け、発砲した。


「申し訳ない!」


 舞は走りながら銃を打つ。襲いかかるモンスターを返り討ちにする。侑希に近づくと、彼と背中合わせになった。


「侑希君はレーザーのような魔法は出せる?」


「もちろん。ただ、応用魔法の類になるけど」


「応用魔法?」


 聞き慣れない侑希の言葉に、舞は目を点にした。

 

「説明はいつかする。どこに、打って欲しいんだ?」


「あとあも、侑希君に説明してもらうとして。方向は10時の方向よ」


「了解」


 反時計回りに60度、体の向きを変えた。手のひらを向け、しっかりと伸ばす。


「ライトニング・レーザー」


 侑希の手のひらから、青白いレーザーが放たれる。レーザーの射程範囲に入ったものは木だろうとモンスターだろうと、何だろうと消しとばした。それは隠れているモノも例外ではない。


「クケケケ……。これで、チート能力を持つ奴らを……。ウゲッ!」


 森の片隅に隠れていた青い体毛が特徴の魔人は攻撃に対処する前にレーザーに飲み込まれる。音もなく、姿が消えた。


「これで良いかな?」


 侑希は軽いトーンで舞たちに語りかける。その瞬間、モンスターは一目散に四方八方に逃げる。


「お見事です。素晴らしいお手前です」


 まばらな拍手をして、アリサは侑希を讃える。舞もアリサの動きを真似て、拍手をした。


「ええっと。すいません。俺、なんかやったか?」


 異世界でチート能力を使った直後の主人公みたいな言葉を、侑希は口に出す。唇をかみ、少しだけ首を横に倒した。


「モンスターをここに集めてたやつがいたわ。それを倒してもらったの」


「なるほどな……。それは本当か?」


 舞の解説に、侑希は首を傾げた。いまだに実感が湧いていないようだ。


「モンスターもいなくなったな。さて、湖に向かうか」


 気を取り直した侑希は目配せする。アリサと舞はコクリと首を縦に振れば、彼を先頭に森の奥へと進んでいった。

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