私だ、目白だ。
受講登録をしてくれた諸君、本当にありがとう。
何せ、私の出番はだいぶ先の予定でね。暇を持て余しているのだよ。
さて、今回紹介するのはこの妖怪だ。
『鉄鋼百足』
全身が光沢を帯びた鋼で出来ている巨大なムカデ。
大きさは個体によって差があり、最小で一メートル、最大で本州と同じ長さの個体が確認されている。もっとも、鉄鋼百足は普段は地中に埋まって生活しているため、まだ見ぬ大物が息をひそめている可能性は高い。
側面には先が尖っている無数の鋼の足が生えている。鉄鋼百足という名であるからには足が百本あるのだろうと思われがちだが、こちらもやはり個体によって異なる。
顔には巨大なプラスネジとマイナスネジが目玉のように六本刺さっており、口には鎌のような牙が生えている。鉄鋼百足の目はほとんど機能しておらず、わずかな光を頼りに獲物の位置を認識し、捕食している。
合成音声のような声で喋る理由は諸説あるが、かつて工場で使われていた古い機械が妖怪になったためであるという説と、工場の地下に住み着いていたある個体が地上から聞こえてきた合成音声を覚え、他の個体にも広まったという説が有力視されており、専門家の間でも度々論議が繰り広げられている。
鉄鋼百足の体は純度の高い鋼で出来ていることから、術者の間では武器の材料として利用されてきた。その武器の切れ味は恐ろしく鋭く、また刃が欠けなかったことから、「名刀」とも「妖刀」とも呼ばれたそうだ。
私も鉄鋼百足で作ったメスか包丁が欲しいな。
如何だっただろうか?
ヤミヒソミについては蒼劔君が詳しく解説してくれていたので、必要ないだろう。
彼は長く生きている分、妖怪や鬼などの異形に限らず、人間の文化についても詳しいようだ。贄原君ももっと蒼劔君から色々学ぶべきだと、私は思うね。
ではまた次回。
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