若き葛藤の書物

原氷詩集
原氷
原氷

ささやかな愛が悪になる時

公開日時: 2021年7月31日(土) 16:10
更新日時: 2021年7月31日(土) 16:23
文字数:523

「アンニュイ」

散り散りになるこの思い

憂愁とともに生きた日々の糧

容赦ない悪意から免れて

やってきた部屋

そこには純粋な女がひとり

ぼくを受け入れ

ぼくを乱し

ぼくを拒絶する、たまに

降りしきる雨の中

疲れた肩をおろし

一瞬の輝きもおろそかにしない

つらつらと文章を連ね

半獣神がうたたねしている

ぼくは奇妙だと感じる

君に魂があることが肉体があることが

ぼくは詩を書くことしかできないから

君を魅了するほどの力はないけれど

ときおりひょろひょろと精子が流れ出て

電車の中で肩をあずける東京の女を思い出す

君は?

君は?

 

不思議な出来事をつらねて

霊感に打たれた魂を宿し

ポエットリーリーディングに天使がまぎれこむ

文字盤に心を打たれ

詩に恋をし

ヴェルレーヌの雨を浴びている

君は? 「ねえどうしたい?」

 

艶美なるぼくの男根が

淫らな君の服装に欲情し

フランスの歌手を思う

シャンソンを歌う君は極上の酒の泡


「詩人の愛」

詩人の愛は 火炎で出来ている

彼を愛する者にしか 触れられない



「薔薇」 薔薇たちが恥じらう 

血の泪を流し 純潔を捧げて 

獣の拙い愛撫を楽しむ 薔薇たちが戯れる 

清き乙女のなりをすまして

曇天の暗き栄誉を冠の如く

薔薇たちが囁く

恋人を乗せて

刹那の中に久遠の情熱を見る

薔薇たちが語らう 

美の秘密を 秘中の恋を 犠牲の愛情を

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