夜を狩るもの 終末のディストピアⅡ meaning hidden

人類の終焉に死神が人類側に味方した物語
主道 学
主道 学

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公開日時: 2024年12月6日(金) 13:36
文字数:467

 サンはそういうと、ニッコリ笑って赤黒い雹の中で、傘も差さずに一人ヒルズタウンの方へと歩き出してしまった。


 更に、こちらに手を振りこう言うのだ。


「あ! そういえば、モート君によろしくと伝えて下さい。あなたなら、何とかなるんじゃないのかな?」


 ヘレンはフラついて傘を手から、落としてしまうほどに混乱してしまった。


「何故? そんなことを私に言うのですか?」

「知ってますよ。あのモート君とはお知り合いなのでしょう。ヘレンさん。さて、近々ノブレス・オブリージュ美術館とは盛大にご厄介になりそうですよ。その時は、どうかできるだけの歓迎をして下さいね。それでは……また……」


 ヘレンは真顔で首を傾げたが。

 少ししてから、ヘレンはこう考えることにした。サンは、命の大切さは、とうに全て捨てているものの発言をしているのだと。


 だが、ヘレンは呆れることをせずに、代わりにとてつもない恐怖を感じた。

 

 人間が、こうも容易く貴重な生命を自ら手放すものだろうか?

 サンの姿がロマネスク様式の建造物の間で、完全に見えなくなってきたころには、赤黒い雹は、更に猛烈に降りだしてきていた。

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