そこには、生気のない灰色の死んでしまったような顔になった老人がカラカラといつまでも笑っていた。
モートは銀の大鎌をロングコートから取り出したが、一際目立つ赤い魂の人物を優先して、向きを変えて探した。
周囲を見回すと。
道路の真ん中に一人の少女が真っ赤な魂をして佇んでいる。
周りの人たちもどこかおかしい。
ゆらゆらと肩を動かして、少女を取り囲んでいた。
モートは焦ってその少女のところへ飛び込んだ。
ザンッ!
黒い魂だったので、モートはゾンビとかした男たちの首を瞬間的に狩った。
「あ、あなたは……? 怖い人ね……」
「大丈夫かい?」
「ええ、助けてくれてありがとう。でも、まだあそこのゴミ箱の中にいるわ。さっき這い出てきたから」
「ああ、君はどこか建造物の中にいてくれ」
「了解」
モートはゴミ箱を銀の大鎌で破壊すると、中にマンホールが見えた。そして、マンホールの下へと通じる梯子が見える。ざあざあと降る血の雨が、マンホールの中へと消えていく。モートが梯子を降りようとすると、「きゃっ!」とさっきの少女から悲鳴が上がった。
後ろを振り向くと、少女の足元に這いつくばる女のゾンビがいた。
モートはヘレンとの約束があるので、女子供は狩れなかった。
そのままモートは後方へと反転すると、女のゾンビを両足で踏んづけた。
女のゾンビはそのまま動かなくなった。
「さあ! 今のうちにあの建物へ! 急ぐんだ!」
「了解! 私の名前はペルガモよ! 変わった名前でしょ! 誰だか知らないけど、後お願いね!」
「ああ……」
モートはマンホールの中へと梯子を降りた。
どうやら、血の雨にあたると、人はゾンビになるのだろうとモートは梯子を降りながら考えていた。血の雨が降らなくなると、ゾンビはでてこなくなる。つまり、逆なのだ。ゾンビがでると血の雨が降るのではなく。血の雨がゾンビを増やすのだ。
なので、恐らくはここホワイトシティの下水が溜まる地下には、多くのゾンビの群れがいるはずだ。そこで、モートは本で読んだことを思い出した。占いなどでは血の雨が降る夢は生命力、再生といった意味をしているし、プラスなことになるのだ。だが、戦争などでは血の雨を降らすという言葉もあって、多くの血が流れること。つまりマイナスのことも指す。
モートは更に考えた。
何故、血の雨で人が死人になるのだろう?
現状では血の雨はマイナスなことになっているのだ。
どちらにしても、死……つまり、血の雨は生命が関連しているようだ……。
ならば、この血の雨を降らす原因を無くせば……。人はゾンビとならないのだろう。そこまで梯子を降りながら考えていたモートは、やっと真っ暗な下水道の地面に足を着けていた。
マンホールの下は、モートの考え通りに辺り一面に腐臭漂うところだった。きっと、ここはアンデッドの巣窟なのだろう。
モートは真っ暗な地の底を注意深く歩いて行った。
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