うぞうぞとアンデッドの集合体は、オーゼムの両手から発する光で徐々に消えていたが、その外側だけを崩しているだけで、どう見ても集合体は大きすぎるのだ。ならば、バラバラに狩りこめばいいとモートは考えた。
銀の大鎌でアンデッドの集合体を四方に分断していく。
濁った血がしばらく辺りに噴き出した。
だが、すぐに腐った血や肉片はオーゼムの両手からの光の中へと消え去っていった。
最後にアンデッドの集合体は、モートは銀の大鎌で真横に切断され、オーゼムの発する強烈な光で跡形もなく消滅した。
「ふう……。なんとかなりましたね。……これで賭けは私の勝ちですね」
「……?」
――――
一夜明けて早朝の5時。
血の雨が止んだ空からは、瞬く間に粉雪が降りだした。通行人はいつもの様子を取り戻し、人通りが少ない大通りから新聞売りの子供たちが白い息を吐きながら元気な声を張り上げている。
下水処理施設から外へと出たモートとオーゼムは新聞をそれぞれ買った。
「いやはや、聖痕ができた少女は無事でしたね。軽い腐食バクテリアによるための痙攣だけでした。ですが、一体何のために……少女を襲うのでしょう? 男性? アンデッド? ……これは殺人でしょうね。そうです、殺そうとしている。と、考えられますね」
「新聞では、行方不明者はまだでていないようだ。それにしてもオーゼム?」
「ええ、そうです。ヘレンさんがあなたを心配していましたよ。なので、ひどく疲れていた私と賭けをしたんですよ。モート君が全てのアンデッドを葬り去るのが早いか、それとも私の助けが間に合う方が早いかと……いやはや、ラッキーですね。賭けは勝ちなのは薄々気が付いていましたよ。かなり急いで来ましたからね……」
モートは少し笑った。
「ああ……ありがとう…………」
新聞売りの子供たちの新聞は飛ぶように売れていた。
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