深夜のノブレス・オブリージュ美術館の一室には、闇夜を照らす。どこよりも明るい照明が仄かに光っていた。その広大なサロンには、高級なドレスやスーツを着こなした男女もいる。皆、興味深い面持ちで、5人の少女たちと、アリスとヘレンとで、オーゼムの話に耳を傾けていた。
そこで、モートは片隅の質素な椅子に座って、外の様子をうかがっていた。
「アンリー・サルギスのおばあさんは、この聖痕現象について、幾つかの例のヒントを提示してくれました。聖痕がある8人目のアリスさんは、未だ不明ですが……」
アンリーは黙っていて、片隅に座るモートをいつまでも、見つめていた。オーゼムがアリスの方を向くと、アリスも沈黙を守っていて、静かにオーゼムの次の言葉を待っている。
「創世記において、7つとは、神が人と契約を結んだり。七つの贖罪などのように、誓いや契約を表しているんですよ。後は、7つの教会にあてられる書簡という形で書かれた『黙示録』では、7つの封印が登場していますし、なので、今はまだ、私も上層部とは連絡が取れない状態ですが、これらは、神と人との関係で新しい契約が起きる前触れだと、捉えられますねえ」
オーゼムはそこまで話すと、一つ咳払いをして、
「もう一つは、神は6日で世界を創りましたが、7日目はお休みになりましたね……これらの事象から、何か世界を新しく創り上げるのでしょうかねえ? いずれにしても、ゾンビを操るあちら側の出番がないことには、さっぱりですが……おお、モートくん。決して、このことからもこちらの7人たちと、それと謎なのですが、アリスさんの身を守ってくださいね」
「ああ……勿論だとも」
モートが椅子からそのまま頷くと、オーゼムは、下を向いて口を閉ざして考え事をしてしまった。
「創世記? ……ですか? 一体。それはなんなんでしょうね?」
ヘレンはレメゲトンのこともあって、悪魔の偽大国が関連しているのでは、と訝った。
と、その時。
東の方から西へと、天が裂けたかのような稲光が発生した。
窓の外を窺っていたモートが窓ガラスを開け空を見上げると、その次は何かが一粒空から落ちてきた。モートは外へ手を伸ばした。手の中に落ちたそれは真っ黒な雹だった。その雹は夜空から大量にばら撒かれたかのように、猛烈な勢いで、ホワイトシティ全体へ広がり。地上へと降り注ぐ。
モートは慌てて、窓ガラスを開けると、外からムッとくる濃い血の臭いが室内に大量に入り込んできた。
「これは、黒いけど血の雹だ……」
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