赤黒い雹がパタリと止んだ。
周囲のゾンビが急に、倒れだした。
黒色の騎士は、聖パッセンジャービジョン大学付属古代図書館の方を向いてから、ヘレンに馬上から優しく話し掛けた。
「あっちへは行かない方がいい。あっちの方はゾンビしかいない。もう手遅れだよ」
ヘレンはその大きな馬に圧倒され、言葉を失った。何も言えずに首を振り続けていると、黒色の騎士は赤い空を見上げた。
「いいかい。全てはもう遅いんだ。だけど、抗うだけ抗うのも君たちの勝手だ。でもね、もうすでにはじまっているんだ……その時が……」
そう言い残して、黒色の騎士は赤い空へと音もなく飛翔した。
ヘレンはその言葉を反芻した。今度は身体が震えで動けなくなってくる。だが、勇気を振り絞ってヘレンは聖パッセンジャービジョン大学付属古代図書館に向かって歩きだした。
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