夜を狩るもの 終末のディストピアⅡ meaning hidden

人類の終焉に死神が人類側に味方した物語
主道 学
主道 学

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公開日時: 2024年1月29日(月) 19:52
文字数:881

  いつの間にか外は血の雨が降りだしていた。聖パッセンジャー・ビジョン大学付属古代図書館の全ての窓が血塗られていく。アリスは恐怖し、広いテーブルの下へシンクレアと共に隠れ、辺りに山積みになっていた本で姿を隠す。ドカンっと、このフロアのドアが蹴破られた。そして、慎重に歩く重い靴音が複数近づいてきた。  


「……うん?」


 アリスとシンクレアのいるテーブルの傍のにいる男が首を傾げた。男はテーブルの足に不自然に本が一冊外れているところを怪訝に思っている。


 アリスは気が付いた。その男は、トンプソンマシンガンを手に持ち、まがまがしくキラリと光るナイフを腰元に差していた。その男が、アリスとシンクレアが隠れているテーブルに積まれた本を足で打ち払った。

 

 男とアリスが目が合った。


「……?! ここにいたぞー! スティグマのターゲットだ!」


 男がアリスを見つけると、ドタドタと男たちが集まり、トンプソンマシンガンを一斉に構える。アリスは恐怖して心底どうしようもないほど絶望した。だが、モートのことが頭を過った。シンクレアは恐怖のあまりその場で固まってしまっていた。


 と、同時に天井からいきなり何かの物体が落ちてきてテーブルの上へ着地した。


 ザンッと、鈍い音と共に男たちの胴体から真っ赤な血が吹き出る。周囲の本棚が血塗れになった。


 幾つかのトンプソンマシンガンが火を吹いた。

 連射する弾丸の嵐は、ここ聖パッセンジャー・ビジョン大学付属古代図書館全体に響くほどの轟音を発した。


 アリスとシンクレアのいるフロアの壁が、蜂の巣になっていく。

 だが、モートは銀の大鎌で次々と男たちの首を狩りだした。


 やがて、静かになると、モートはテーブルの下のアリスとシンクレアにこう言った。


「アリス……やっぱり、図書館は静かなほうがいい」

「え? ええ……」


 アリスはあまりの凄惨な光景なのに、モートに相槌を打っていた。


「そうよね。ありがとうモート。後、汚れた本は洗ってくれるのかしら?」 


 シンクレアがやっと口を開いたと思ったら、冗談を言ったので、アリスは少しうんざりした。きっと、突っ立ている無言のモートもだろう。


「もうー、シンクレアったら」


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