下卑た笑い声が、木霊する狭い地下室で、5人兄弟が手もみをしながら、、最初は誰か? と話し合っている。
しかし、マリンシスにはその最初というのがよくわからなかった。
彼らの後ろには、今まで見たことのない大型機械があったのだ。ミンチマシーン? そうとも言えるような意図で作られた機械だった。
そうとわかると、マリンシスはガタガタと震えだした。幸い。身体は自由に動けた。ズキズキとする頭を抑えなければならないが、至って走って逃げることはできそうだ。だが、どこへ?
ゾンビが徘徊する外へと出て。それから一体どうなるのだろうか?
と、いきなり。黒い物体が天井から降ってきた。そのままコンクリートの地面に着地すると、目にも止まらぬ速さで、五人兄弟に向かって、右手を一周するように横に振った。
「なんだ?!」
「こいつ!!」
「……あれれ?」
「……」
「……」
次第に彼らの発声する声が、途絶えてきて五人兄弟の首が静かにずり落ちていく。黒い物体は、黒いロングコートを着ている美しい銀髪の男だった。こちらに振り向くと、ニッコリ笑った。
そこで、何故かホッとしたマリンシスはしばらく銀髪の男を見つめていた。
「君は身体のどこかに聖痕はあるかい? あるいは、傷や文字のようなものが最近になって、腕や足などに浮き出てこなかったかい?」
なんとも優しい声に、安心感を抱いたマリンシスは正直に話そうとした。
「……聖痕……」
「ああ、なければいいんだ。さあ、安全なところまで君を送ろう」
銀髪の男がこの地下室の出口へ歩いて行く。
「え! あの!」
「なんだい?」
「一週間前に、教会の帰りで空を覆うような光を見たわ。最初幻覚だと思ったのだけど、その時から掌にこういう模様がついたの。まるで、杭を打たれたような傷にも見えるのよ。きっと、これが聖痕かもしれない」
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