しばらく歩くと、水滴の落ちる音や、血で汚れているであろう下水の流れる音が大きくなって来た。感覚的には50メートルだとモートは思った。前方に蠢くものを発見した。モートは、銀の大鎌を構えるが……。蠢くものは遥か上方へと上がっている。
上を向くと、マンホールがもう一つあった。
焦ったモートは上へと飛翔した。
――――
ペルガモは明るい店内の店へと逃げ込んでいたが。そこは客や血の雨から非難した通行人でごった返し、息も詰まりそうなほど人で埋まった空間だった。
ペルガモは明るい店内の店へと逃げ込んでいた。だが、そこは客や血の雨から非難した通行人でごった返していた。店内の奥に壊れたトランペットやドラムが跡形もなく転がっている洒落た店の中は、息も詰まりそうなほど人で埋め尽くされた空間となっていた。
途方もない息苦しさを覚えたペルガモは、窓の外の近くへ行こうと人々の合間から体を捻じ込んでいたが。
窓の外には……。
真っ赤に血で汚れたたくさんの自動車が隙間なく並んでいた。心底落胆したペルガモは、人々がいつの間にかこの道路をも埋め尽くす自動車をバリケードにしたのだろうと考えた。
ガシャンと窓ガラスが割れた。ペルガモは危うく外へと押し出されるところだった。人々が何故かこちらに一斉に動いているのだ。
人が波となって、ペルガモを襲う。
だが、左腕を強い力で窓の外へと引き寄せられた。
そのまま左腕を掴んだ手はペルガモを窓の外の自動車の天辺へと素早く導いた。
――――
モートはペルガモの左腕を離すと、血の雨の原因を探すと同時にマンホールの下から蠢くものを警戒した。周囲が腐臭で埋まる。血の雨が降り注ぐマンホールから這い出てきたそれは真っ赤なネズミや虫の死骸の塊だった。
モートは死骸の塊の中心に銀の大鎌を投げつける。
宙を回転する銀の大鎌は死骸の塊を中央から上下に切断した。
死骸の塊は上と下の二つに分離した。回転して戻ってきた銀の大鎌をモートはキャッチすると、素早く半分になった死骸の塊の両方を狩りこんでいく。
しばらく狩りこむと、死骸の塊がバラバラになった。
空から降る真っ赤な血で汚れた道路にネズミや虫の死骸が霧散すると、そのまま動かなくなってきた。
「ふう……」
モートは額の汗を拭った。
「もう、大丈夫よね……。助かったわ。ありがとう」
立ち並ぶ自動車の天辺にいるペルガモは可愛らしくお辞儀をして礼を言ってきた。
「もしかして、君の家は教会なのかい?」
「え? 違うわ」
「そうか……」
モートは考えた。
どうやら、守らなければならないのは、この少女たちなのだ。そして、ここウエストタウンで頻繁に事件が起きたのは、ただ単に数名の少女が住んでいただけだったのだのだろう。
何から?
そして、どうして?
少女を守らなければならないのかは、モートには皆目わからなかった。
「さあ、君の家まで送るよ」
「ありがとう……カッコよくて怖いお兄さん」
空から降る赤い水滴はいつの間にかピタリと止んでいた。
代わりにシンシンと真っ白な雪が地面に舞い降り積もっていく。
街の人々は次第に空を見上げ。
誰もが安堵の白い長い息を吐き始めた。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!