「ジョン……あなたは一体? それと……レメゲトンをどう使うのかしら?」
ヘレンという人がアンリーの傍で、独り言をごちた。
人通りのない東館の色とりどりの絵画のある廊下を進むと、二つの螺旋階段のある広大なサロンへ続く扉を見つけた。アンリーは何故かちょっとここへ来ただけなのにノブレス・オブリージュ美術館の館内でどこになんの部屋があり、どんな骨董品や調度品、絵画、銅像などがあるのかも、何故かわかるようになっていた。
「そういえば、もう閉館時間よね」
アンリーは呟くと、だが、明るいサロンは高級な服装の貴族の人達が談笑したり、飲み物や小料理を楽しみ。歌を聴いたりしている社交の場となっていた。
「どうしたの? お嬢さん?」
煌びやかなドレスを着た貴婦人に呼び止められた。
「あ、あの……ここで待っていてって、言われたの」
「あら、ヘレンさんのお知り合い?」
貴婦人はサッと左手を上げると、黒を基調としたボーイが音もなく駆け寄り。トレイに載った日本茶を勧めてきた。
「あなた。何かあったのね。でも、もう大丈夫よ落ち着いて」
「ええ……。ええ、ありがとう」
「ここだけの話。私の叔父はここホワイトシティの市長なの。困ったことがあったら何でも私に聞いていいのよ」
「……そ、そうなの?! ありがとう。でも、もういいわ。あ! モートが来てくれたわ!」
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