そのままど真ん中に突っ込むと、腐臭漂う空間でモートは次々とゾンビの首を素早く狩り続ける。その間。銃声は鳴り続けていた。
だが、弾丸はモートに決して当たることはない。
倒れたゾンビはびくびくと痙攣していた。
ゾンビは動きが緩慢で首をたやすく狩れるはずなのだが、何故かモートは訝しんだ。黒のロングコートが徐々にだが濁った血液の汚れで、そのせいかひどく重くなってきているのだ。
身体が重くなったモートは危険を察知してゾンビの群れから少し距離を置いた。
その中心に銀の大鎌を思いっきり投げつける。
高速に回転した銀の大鎌はアンデッドの群れの複数の首を正確に狩って行った。濁った血液が大量に地面にばらまかれ、腐った水たまりができる。
銀の大鎌がモートの手に戻る頃には、首を狩られたゾンビの群れはその場に音を立てて崩れ落ちていた。
周囲の排水路からの赤い水が濁水へと変わりつつある。
今までモートに向かって撃たれていた銃声も止んできた。
どうやら、ゾンビと血の雨は何か関連をしているのは間違いないのだろう。
モートは今度は、銃声のした方へと走った。
暗闇の中から瞬間的に火花が飛ぶ、依然と銃声がしているのだ。また向こうから数発撃ってきていた。
「うん?」
モートは驚いた。銃を撃っているものもゾンビの群れだったのだ。
こちらに気がつくとゾンビたちはひたひたとゆっくりと歩いて来た。至近距離で銃を発砲する。素早くモートは、そのゾンビの群れの中へと飛び込み。全ての首を狩った。
ここの真っ暗な空間の脇にある排水路から再び赤い色の汚水が流れはじめた。
そして、首を狩られて倒れたはずのゾンビたちが、何故かびくびくと痙攣しだした。
グチャっと音が辺りに鳴り響く。
この真っ暗な空間を突如、おびただしい腐臭が包みこんだ。
「くっ!!」
モートは壮絶な腐臭に鼻を抑えた。
その時。ドンッ! っと、巨大な種々雑多なアンデッドが混同した塊が天上から落ちてきた。犬、猫、ねずみ、人、ミミズなどの集合体のゾンビだ。そして、不気味にこちらにずるずると這い寄って来る。
地下。ここは、様々な排水路が集結している場所だった。恐らくここホワイトシティ全部の水が流れ落ちるところなのだろう。その全ての水が真っ赤に染まっていた。止め処なく流れる赤い水のせいで、周囲は血の臭いが濃くなってきていた。
…………
「やれやれ……モートくん。一休みしている場合ではないですねえ。苦戦しているようですので、ここからは一緒に戦いましょう!」
「?!」
モートが驚いて振り向くと、いつの間にかアンデッドの集合体を両手を広げて強烈な光を発し消し飛ばしているオーゼムの姿があった。
モートは銀の大鎌を持ち直すと、アンデッドの集合体へと飛び込んだ。
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