父に、どうしても聞きたいことがあった。
「生まれてくるはずだった、ぼくの妹だけど、父さんと母さんはなんて名前をつけるつもりだったんだい?」
父は、
「麻衣」
とだけ短く答えた。
加藤麻衣、か。
なんだか14歳になったら誘拐されてしまいそうな名前だなとぼくは思った。
ぼくは語りかける。
もし生まれることができたなら、今日で15歳になるはずだった妹に。
ぼくはずっと君に会いたかった。君に話したいことがたくさんある。父さんのこと、母さんのこと、君のこと、それからぼくのこと。
叶わない夢だと知りながら、ぼくは毎年10月9日だけ、そんな夢を見る。