「お、鈴木。やっと来た……か?」
先輩は待ち合わせ場所に現れた俺を見て、一瞬驚きを示した。当然だろう、何故か待ち合わせをした後輩が、若い外国人女性と腕を組みながら登場すれば、誰だって戸惑いを見せるに違いない。
俺はため息を零したまま、仕方なく口を開いた。
「すみません、先輩。ひとり追加でもいいですか?」
「わからない……何でお前が」
先輩は頭を横に振って宙を仰ぐ。おそらくOKということだろう。
そして俺たち三人は揃って居酒屋の扉をくぐった。
店内の装飾も雰囲気も以前と変わっていなかった。というものの、大学一年生の頃何度か先輩と行った事があったからだ。ちなみに何を飲んでいたかは黙っておこう。
二階奥の窓側のテーブル。外を見ながら飲めるという、先輩イチオシの場所だ。先輩の対面に俺、俺の隣にリニアの順で座るが、彼女も少しは緊張しているのか、ぎこちない様子でチラチラと店内を見回していた。
「さてと。何飲む?」
先輩は席につくや否や、いつも通りの調子に戻ったのか慣れた手つきでメニューを俺たちの前に差し出した。
「いや、奢ってもらう立場なんで先輩が選んでください」
「そこは忘れてなかったか……まあ、でも食いたいもの頼んでいいぞ」
「俺としては話をしに来たようなものですけど」
「いいから、いいから。好きなもの頼め。後輩に奢ってやる金くらい俺だってあるさ」
「はあ。それじゃあ……」
俺は適当にメニューを選んで注文をしていく。そんな俺を、リニアは溢れんばかりの好奇心を込めた瞳で見つめていた。そして店員が去ると待っていたかのように口を開く。
「ねえねえ、聡太!!生ビールって普通のビールと何が違うの?」
「そういえばお前、居酒屋は初めてって言ってたな。生ビールっていうのは、あれだよ。あのポンプみたいなやつから一回一回出してくれるやつ。まあ、出来たてみたいなもんだから普通のビールよりは美味しいんだよ」
「へえー!!」
感嘆の声を上げるリニア。そんな彼女を先輩は訝しげな目で見ていた。
「ところで、鈴木」
「何ですか?」
「俺は彼女がどんな人か詳しく聞いていないんだが。一体何者……どういう人かきちんと紹介してくれないか?」
「えっと……」
そういえば彼女だなんだとは揉めていたが、肝心のリニア自身については何も話していなかった。しかし、何て言えば良いのだろう。協会はおろか魔法士なんて話も信じてはくれなさそうだし。
「た、只の友人ですよ」
「いや、そういうことじゃなくて。留学生とかか?」
「留学生ではないけど……これでも立派な社会人で、今は休職中というか」
「休職って日本で?こっちに家があるのか?」
「えっと、まあ……はい。怪しいやつじゃないですよ」
重要な所はぼかしたままだが、簡潔に言うならば今言った通りだろう。しかし案の定、先輩のリニアに対する疑いの目は晴れていなかった。
「……その返答なんだよ?怪しいとしか思えないんだけど。それとも俺、馬鹿にされてんのか?」
「そんなつもりはないです!!」
くそっ……一般人により分かりやすく説明するにはどうしたら……。
ちらりとリニアを横目に見るが、彼女は先輩の顔をきょとんとした表情で見つめていた。そして平然と口を開き、
「私の名前はリニア・イベリンです。出身はドイツ。大学は出てます。今は休職中で、日本に来ました」
何食わぬ顔で自己紹介を始めたリニアに面食らったのか、今のでだいぶ先輩の態度が和らいだ気がする。
「えっと……何で日本に来たんですか?ドイツにいても良かったんじゃ」
「恩師、お世話になった人が日本にいて遊びに来ているんです。その人の家、大きくてついつい長居しちゃってるというわけです。ちなみに聡太とは仲良しです」
「余計なことは言わんでいい」
先輩からの質問は更に続いた。
「……二人は付き合っているのか?」
「はい」
「いいえ」
ほぼ同じタイミングで俺とリニアは正反対の答えを述べた。
「……どっちが正しいんだ?」
「当然俺です」
「もちろん私です」
またしても同じタイミング。
先輩も諦めたのだろう。大きなため息をつき、やれやれと背中を椅子に預けた。微妙な空気が流れる。しかし、リニアは先輩の様子を気に留めることなく、ずいっと身を乗り出して、
「すみません、あなたの名前は?」
「俺?」
「はい、聡太が先輩先輩って言ってるけど、肝心の名前がわからなくて」
「ああ、そういえばそうだったね。俺は前田総一郎。よろしく」
そう言って二人は握手を交わした。
「前田さん、聡太って学校ではどんな感じなんですか?」
「うーん、最初は冷たい奴だと思った」
「冷たいやつ?」
先輩とリニアはすぐに親しげに会話を始める。二人とも改まった態度は好きではない方だ。案外、相性としては合う気がする。
「こいつ元々口数は少ない方だけど、最初の頃は張り詰めた空気がしてたっていうか話しかけにくい雰囲気だったんだ。それがある日から徐々に柔らかくなっていったかな」
先輩と会った最初の頃……おそらく三年前の事件を引きずっていた頃だろう。確かに気軽に話しかけてもらえる雰囲気ではなかったという自覚がある。
「へえ……それで何がきっかけで仲良くな」
「ビール三つです!!」
リニアの質問を遮るように店員がビールを持ってきた。俺たちは何も言わずに揃ってグラスを手に取る。まずは乾杯をしてからということだ。
「……」
「……頼んだ、鈴木」
「え、えっと……乾杯!!」
非常にぎこちない音戸だったが、潔い飲みっぷりだ。リニアに至っては一気にグラスの中身を全て飲み干してしまった。
「あー!!おいしい!!おかわり!!」
「お前、仮にも先輩の奢りなんだから少しは遠慮を……」
「鈴木。そういうお前も『奢り』って言葉を強調するのか」
***
「それで?さっきの続きお願いします。二人が仲良くなったきっかけは?」
二杯目のビールを片手にリニアは嬉々として先輩に話しかける。
「そんなに気になるのか」
「気になる!!」
「別に俺は普通に過ごしてただけなんだがな」
俺がそう呟くと、先輩は大きな声で笑い出した。
「確かにそうだったな!」
そしてビールを一口飲むと、先輩は去年の話を再開した。
「ある日鈴木が一人で学食を食べていたんだ。いつも人を寄せ付けない雰囲気の奴が、皆と同じものを食べているのがなんか面白くてな。一緒に食べようと思って、わざとこいつの前に座ったんだ」
「それで?」
「こいつ最初は俺がいるのに気づいてなくて、ふと顔を上げた瞬間、学部の先輩である俺の顔に気がついたんだ。そんで驚きのあまり盛大に飯を零した。あれは面白かったな」
先輩はくすくすと当時を思い出して笑う。俺も先輩との出会いは覚えていた。人前であれだけ恥を欠いたのも滅多にない。
「それでそのまま片づけていくのが普通なのに、鈴木のやつはな」
「……先輩、そこまでにしましょう」
「最初に出た言葉が『俺の400円が……』だった。こんなのネタにしかならないだろ!?」
先輩とリニアは腹を抱えて笑いだした。俺はひたすら先輩から視線を逸らすしかない。
「普段ぶっきらぼうで話しかけにくい奴だと思っていたのに、あんなに面白い奴だとは思わなかったな。こうしてあれ以来、俺は何かと鈴木に構ってやってるというわけだ」
「別に構ってもらってるつもりは……」
ふいと先輩から顔をそむけると、横でリニアが楽しそうに笑っていた。妙に気恥ずかしい。
「ちょっと先輩!!そんな昔の話もうやめましょう!!」
しかし先輩は俺の抗議に構うことなく、依然として去年の話を続けた。
「鈴木が言うには、皆とも話そうと思っていたらしいが、タイミングが掴めずに段々と面倒臭くなっていただけだったらしくてな。それで俺が暇な時相手をしてたら、いつのまにか仲良くなってたってわけさ」
先輩の説明は非常に簡潔且つ、嘘偽りのない事実だった。俺は一年の頃、サークルにも学部内にも僅かの知り合いしかいなかった。先輩と仲良くなり、色々な行事等に連れまわされたのだが、それでも俺はそんな生活が嫌ではなかった。
去年の初々しい頃を思い出し、俺はひとり、少しだけ情緒的な気分に浸っている中、リニアはずっと先輩から俺の学内生活について色々と訊ねていた。
そして俺の視線に気づくと、彼女はふわりと赤みを帯びた顔で笑う。
「私の知らない聡太がたくさんいて、すごい新鮮」
それは│、
「……まあ、お互いすごい離れた場所にいたからな」
急いで俺は正面へと顔を戻した。あんな近くでそんな風に言われたら、誰でも照れるに違いない。
「逆にお嬢さんが知ってる聡太はどんな感じ?勉強とバイトしか頭にないつまらない奴?」
先輩の問いかけに最初こそ笑っていたリニアだが、すぐに腕組みをして真剣な顔で考えだし、そして再び笑顔に戻ると、
「確かに聡太は勉強とバイトばっかりだけど、仕事ができたら嫌々言いながらも結局手伝ってくれるから……つまらない奴とは思ってないです」
「……確かにつまらない奴じゃないね」
その点に関しては先輩も同意らしい。
「だから本当に頼もしい友人です。私が大変な時も、辛い時も、いつも隣にいてくれて……まあちょっと鈍いところもありますけど」
「俺が鈍い?」
「鈍い!!」
アルコールのせいもあり、リニアの声はいつも以上に声が大きい。これは下手に話を広げたら面倒臭い奴だ。俺はリニアに言われるまま、云々と頷き返していたが、ふと、彼女は思い出したようにビールへと手を戻した。
「それにしても、私が聡太と初めて会った時は、もっと丸かったのにな」
「へえ、そうなんだ。じゃあ今度は高校の頃の鈴木を教えてくれよ」
先輩とリニアは俺という共通のおもちゃをネタに、随分と親しくなったようだ。
「聡太はね、本当に良い奴だったの」
「へえ」
「よくない事が起こると、真っ先に駆けつけてくれる。とても情熱的な人でした」
「それは意外だ、『俺の400円……』の高校時代がそんな感じだったとは」
「まあ、今でも根っこの部分は変わってないと思いますよ。ね?」
リニアは二コリと笑いかける。
「俺が知るか。俺は今も昔も変わらない、ただただ日々を過ごしてるだけだ」
「むう。面白くない反応」
彼女は唇を尖らせて、拗ねたようにそっぽを向く。やれやれ一先ず俺の話は終わったのだろうか。そろそろ違う話題に行きたいのだが。
そう思って、俺もビールへと手を伸ばす。もう中身も終わりそうだ。お代りを頼んだら、今度はもっと真面目な話をしよう。と、その瞬間。グラスを掴もうと思っていた俺の手の目の前に違う手が 、
「えいっ」
「あ!!」
リニアが俺のビールを手に取り、一気にグラスを傾ける。
「ぷはーっ」
「おい、リニア!!それは俺のだろ!!」
彼女はしたり顔で俺へと振り向く。先ほどの返事が悪かったせいか、いや、ただの酔っ払いだからか。仕方なく、俺は二杯目のビールが来るのを待つことにした。
「そういえば、先輩。学校の方は大丈夫ですか?」
互いにお代りが来たところで、俺は先輩へと問いかける。だが先輩は俺の質問を聞くなり、眉間にしわを寄せ、
「何故、酒を飲む場でそんな話をしなければいけない」
「……重要な話があるから俺を誘ったんじゃないんですか」
「俺はただ単にお前と飲みたかっただけだ!!」
「本当ですか?」
「俺がお前に悩みなんて話すと思ったのか?」
「え、まあ」
「俺は本当にただお前と酒が飲みたかっただけだ」
この人は……大丈夫なんだろうか。
俺が黙ってしまったせいだろう、今度は先輩が俺に問いかける。
「お前こそ悩みでもあるのか?」
「いや、そういうわけでは」
「そうだろ。大体、こんな所に悩みなんて持ってきても解決なんてすることない。本当に悩んでいるなら、もっと親身になってくれる人にちゃんとした場で打ち明けた方がいいに決まってる。親でも親友でも」
そこで先輩は、一度言葉を切った。そして、リニアをちらりと見つめ、
「女友達でも」
「はあ」
「……ここでは否定しないのか」
「あ、はい。友達なんで」
すると、突然リニアが俺たちの間に顔を出した。
「今は!!いずれ聡太は私と付き合うんだから!!」
「はいはい」
「ちょっと!!適当に流さないで!!」
彼女は俺の服の裾を摘んで揺する。ここで抵抗する気力も今の俺にはなかった。そんな俺たちの様子を先輩は軽く笑いながら眺めている。
「鈴木、案外お前にはこういう彼女が合うのかもしれないな。お嬢さんはコイツのどんな所が好きなんだ?」
顔は笑っているものの、先ほどからずっとおつまみの枝豆を飛ばしてきている。おそらく内心穏やかではないのだろう。
「全部……かな」
「ほう」
「歩く姿も食べる姿も好き。料理もしてくれるし、優しいし、顔もまあ合格点かな。たまに冷たくしてくれるのも魅力的」
「ははは!!本人目の前にしてここまで言う女も初めて見た!!面白い!!鈴木、お前本当に良い人を手に入れたな!!」
「いや、その……別にいらないというか」
「まあまあ、そう恥かしがるな。仲良くしろよ」
「いや、あの先輩」
「こんな良い人と知り合うのも簡単じゃないんだ」
そこで先輩は一息つくと、
「とにかく俺が言いたいのはな、悩みがあるなら悪戯にこんな所で話しても仕方ないってことだ。真面目な話は飲み屋ではするな。ちなみに、俺はお前に悩みを打ち明けるつもりはない!!お前は大事な弟分だからな!!」
そう言って先輩はグラスを傾ける。
誰がどんな悩みを持っていても、どんな気分でも、絶対に態度を変えない。前田先輩はこういう人だ。いつも通りの態度で接してくれる。いつも通りの先輩のやり方で話してくれる。これは本当にありがたいことだと俺は思う。
「そういえば先輩、資格勉強以外に何かしてるんですか?バイトとか」
「いや、ご存じの通り単位がアレだからね。一応冬期講習受けてるよ」
「へえ、有料のですか?」
「ああ、おかげで今月は結構ギリギリなんだがな。まあ仕方ない」
「しっかり単位取ればよかったんですよ……」
そうは言ったものの、今俺が口付けているお酒も先輩の貴重なお金だと思うと、一気に気が引けてきた。そんな俺の僅かな変化に気づいたのか、先輩は大丈夫だと言って肩を叩いてくれる。
「それはそうと、リニア・イベリン……だっけ?珍しい名前じゃないですか?ドイツからって言ってたけど、日本はどんな感じ?」
「うーん。ドイツから来たって言っても、ここ三年間はずっと色んな国を回ってたんで本当に来たばっかりって感じなんですよね。だからまだまだ知らない事だらけで」
「へえ」
「うん、それでも思う事はあります。実際に色んな世界回ってみたけど、結果的に人間が住むところはみんな同じなんだなって。特にこういう都市はどこも似たり寄ったりです。もちろん田舎は色々と違ってきますけど」
「そんなものなのか」
思わず俺も感嘆の声を上げてしまった。
「めったに私も他の国の話はしないもんね。初めて来た時は色々と話してあげようと思ってたけど、聡太がいいって言うから」
「そうだっけ」
「そうだよ」
しまった。またひとり先輩を置いてけぼりにしてしまった。恐る恐る先輩の顔色を伺うと彼は笑いながら、懐の煙草を取り出していた。
「つまり、日本に対するイメージはそこまで悪いものじゃないってことか」
「もちろんです!!大切な人たちがいる国、私にとっても大事な国です」
「だってよ、鈴木くん」
「……そうですね。何か?」
俺が言葉を返すと、先輩もリニアも不満げな顔を浮かべる。どういう反応を返せばよかったのか。
「もうこいつの話はいいですよ。話題変えましょう」
すると先輩は、妙に真剣な顔をしながら口を開いた。
「俺が今行ってる冬期講習の先生が面白い授業を教えててな、今まで安田先生って人が教えてたんだけど仕事ができて新しい人に代わったんだが、それが外国の人ですごいんだ」
「すごい……?」
「なんというか、典型的な学者タイプというか、政治家?」
「先輩、学者と政治家では大分違いますよ」
俺の突っ込みを受け流し、先輩はなおも神妙な顔で頷く。
「だからそれが不思議なんだ。学者の雰囲気なんだけど、態度とか思想が政治家っぽいって言えばいいのかな」
「うーん、教授って言っても色々いますけどね」
すると今度はリニアが口を挟み、
「私の大学にもそんな人いたよ。すごい奇発な感じの教授とか」
先輩は俺とリニアの反応を受け止めながら満足げに頷く。そして再び口を開いた。
「その教授が教える授業も面白いんだ。鈴木、お前明日一度受けてみたらどうだ?来年の専攻選ぶときに役立つかもしれないぞ」
確かに有料講座だし、将来的に役立つかもしれないな。俺が頷くと、先輩は隣のリニアにも顔を向けた。
「君も一緒にどう?」
「え、私も?」
「楽しいよ?外国人なのに日本語も上手だし、口コミが広まって冬期講座受けてない人も紛れてるとかって噂もある位だし」
俺とリニアが興味深げに聞き入ってると、更に先輩は語り出す。
「たしかアメリカ?カナダだったかな。北米の出身で有名な大学で教授をやってる人なんだと。どうだ、鈴木。明日行くか?」
「じゃあ、行きます」
「行くの!?」
すると今度はリニアが驚いた表情をする。
「少し興味あるし、専攻選ぶときの参考になるかもしれないし」
「べ、勉強しにいくってことだよ?」
「いや当たり前だろ」
こいつは何が言いたいのか。
俺が不思議そうにリニアを見ていると、彼女は突然ぶつぶつと何かを言い始めた。
「そ、それはつまり私も一緒に行くとしたら、一緒に登校して……一緒にお昼を食べて、一緒に図書館に行って、一緒に下校するってこと?」
「そうだろ」
俺の返事を聞くや否や、突然リニアは先輩に向かって身を乗り出した。
「そ、それって本当に私も行っていいの!?」
「大丈夫だよ」
先輩がにこやかに答えると、リニアはガッツポーズをして立ち上がった。相変わらず変な女だ。
「先輩、もしかしてこれを言うために今日俺を誘ったんですか?」
「まあ、それも少しある。お前の場合、少しくらい真面目な話がないと拗ねるだろ」
「別に拗ねたりしませんよ!!」
急いで否定するも先輩は笑う事をやめない。
「たまにはしょうもないこと考えてもいいんだよ。お前は目の前の事を全部受け入れる性格してるから、真面目な話は少しだけでいいんだ。それにお前の場合、意味もなく酒を飲むのも嫌だろ?先輩からのありがたい気遣いってこと」
そう言って先輩は誇らしげに胸を張った。
「そう言えば先輩。その教授の名前は?」
「何だっけな、たしか……ハイティントン。エドモン・ハイティントンって言ってたな」
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